笑う山崎 | 活字中毒の解毒剤

笑う山崎

『笑う山崎』 花村萬月著 祥伝社


さて、第一日目ということで、私が花村萬月にハマるきっかけになった『笑う山崎』です。

もう5.6年前になりますが萬月を初めて読んだとき、私はなんとも言えない羞恥心を感じたことを鮮烈に思い出します。

その羞恥心とは、例えると満員電車の中で乗り合わせた全ての男性に自分の昨晩のセックスを想像されているかのような感覚に近いものでした。

自分の決して公にしない部分それも、自ら気づかない振りをしている部分を隅から隅まで露呈された気分に陥ってしまう。そんな小説が萬月文学ではないでしょうか。

私がキャバ嬢をやっていたころ、文学好きのお客さんと好きな作家の話になり、私が花村萬月の名を上げると、「女の子で萬月にハマるなんて珍しいねぇ」とよく言われたものです。。

確かに、暴力描写や性的描写は激しいかもしれないけど、女子ファンは少ないのでしょうかね???


さて、本題の『笑う山崎』ですが、主人公の山崎は中年下戸の極道で決して格好のイイ男とは言えない男。

フィリピン人の妻、マリー(元ホステス)と娘パトリシア(マリーの連れ子)と結婚し、彼の中ではおそらくまっとうな家庭を築こうとする。

だが、一方仕事では冷酷で極悪非道なヤクザ業。

やってることはむちゃくちゃで全てにおいて荒唐無稽。何を考えているのかさっぱりわからないこの中年親父だが、この本を読んでいるうちに、その不器用さと切実さに惹かれている自分がいたりする。

そして、この男に抱かれてみたいと思ってしまったりもする。

そんな感じでどっぷり入り込み一気に読み干してしまった。

また、萬月独特の間やリズムも萬月にハマるひとつの要因になるのではないだろうか。