アフターダーク | 活字中毒の解毒剤

アフターダーク

著者: 村上 春樹
タイトル: アフターダーク

彼の小説を読んだことのある人は大勢いるだろう。

あまり本を読まない人でも1冊くらいは読んでいたりする。

私は高校生の頃、初めて彼の作品を読んだ。

世間知らずで青っちょろいことばかり考えていた高校時代に、彼の作品は私を一歩大人へと導いてくれたのだった。

彼のすばらしい文章は想像力をかきたて、主人公やそれを取り巻く人々の言葉は知的な大人への憧れを抱かせる。

どうして彼の作品の主人公達は魅力的なのか。

それは、たくさんの音楽を知っていて、たくさんの本を読んでいて、たくさんの知識の持ち主で、

だが、それが見え透いたインテリでもなく嫌味でもなく、ごく自然に存在しているからだ。


この作品の主人公、マリも同じようなことが言える。

彼女は美人ではないが若くて、健康的で知識が豊富で、発する言葉はとても魅力的だ。

この物語は、彼女のある一晩の出来事。

一晩中デニーズで本を読む彼女の元に珍客が現れる。

ラブホテルのマネージャー元女子プロのPカオルや美人の姉に好意を抱いていたタカハシ、そして眠り続ける姉。

さまざまな夜が交差する。


いつもの彼の作品とは少し違う気がする。

SF的なロードノベルズ的な要素が加わっていないからなのかもしれない。

物足りないと感じてしまう人もいるかもしれない。

だが、私は物足りた。