ニットを立体的に、しかも縫い目なく編む機械(ホールガーメント)の製造販売をしている島精機製作所が、島精機の顧客向けに『マスクを作るためのプログラム』の提供を開始したそうです(→記事はこちら)。
実際、上記記事では奈良県にある靴下メーカーがホールガーメントを用いてマスクの製造に乗り出すことにしたとのこと。
このマスクにはフィルターを入れるためのポケットがついているので、ここに別途、ウイルス等に効果のあるフィルター(例えば、『技術オリエンテッドとデザインオリエンテッドとの双方を活用する?』で取り上げた銅繊維シートを用いてフィルターを作れば効果があるかもしれません)を入れれば、新型コロナウイルスにも有効かもしれません(少なくとも、飛沫は十分に防ぐことができますね)
。
◆有体物ではない「データ」「プログラム」の重要性がどんどん増していく
少し気になって検索したところ、島精機製作所は、『ホールガーメント技術を生かし』、『顧客の全身(正面と右側面)の撮影に加え、身長や体重などを登録すると60カ所を計測したデータを基に、自動プログラミング処理されてホールガーメント編み機へ転送し編成される』システムを有しており、しかも、このシステムは『サイズだけではなく、ホールガーメント特有の立体感のあるカスタマイズが可能で、着丈や袖丈は顧客の好みに応じてオーダーメードレベルで調整できる』システムであり、『受注生産型のマスカスタマイゼーション(顧客の要望に応じて消費者が求めるものを提供する)』も実現できるそうです(→記事はこちら)。
島精機のシステムを使えば、既製品ではなかなか実現ができない体にフィットする衣服
や、自分好みのデザインの衣服
を比較的容易で安価に製造できそうです。
そして、上記マスクの例のように、このホールガーメント技術ではプログラムを変更さえすれば衣服だけでなく、他の形状のものも作ることができるということが優れた点なのだと思います(専門ではないため、詳細は不明ですが)。そのため、製造対象となる商品のプログラムやデータさえあれば、これまで靴下を作っていた装置でマスクを製造するということも簡単にできることになるのですね。
通常、新型コロナウイルス危機のために「何かしたい!」と思っても、そうすぐにできることはあまりありません。しかも、これまで自分たちが作ったことがないものをすぐに製造できるということは、技術ノウハウ等がなければ簡単ではありません
(外部から技術ノウハウを持ってくれば話は別です→例えば、シャープが衛生マスクを製造していますが、『ノウハウの取扱をマネジメントが意思決定することが重要』で推測したように、おそらくシャープはホンハイ経由で「衛生マスク」の製造ノウハウを取得したと思います。)。
しかし、これまで作ったこともなかった(であろう)マスクを、これまで靴下の製造に用いていた装置にマスク用のプログラムをダウンロードするだけで製造できるというのであれば、上記靴下メーカーのように「これなら自分たちでもできる!」となります。
ポイントは、装置ではなく製造する物のデータや製造工程が詰まったプログラムということになります。装置自体ももちろん重要ですが、データやプログラムの扱いに関し、その重要性がますます増していきそうです。
◆「衣食住」がどんどん近接化する?
テレワークの要請や外出自粛により、少なくとも自粛要請に応じている人々にとっては、外出して気軽に買い物をすることが難しい状況になっています。そのため、通販等の需要が高まっていますが、それではやはり限界があります。
そうなると、『社会の在り方が変わっても、知財マネジメントの重要性は変わらない⁈』でも取り上げた、店内に植物工場を設置し、水耕栽培したグリーンリーフを販売するスーパーのように、人々の身近で生産・製造するのもいいよね、という認識が広まるかもしれません。
例えば、島精機のホールガーメントも様々なニット製品を作れますが、更にいまでは3Dプリンターがかなり安く手に入ります。3Dプリンターであれば、作る物のデータさえあれば、かなりの物を手軽に製造できます。
そうすると、将来的には、3Dプリンタやホールガーメント等、プログラムやデータを変えるだけで異なるものを作ることができる各種装置を置いたコンビニのような店を様々な場所に配置し、顧客には自宅で欲しい物のデータを購入してもらい、必要ならそのデータをカスタマイズして、自分がすぐにとりに行ける近所の店にそのデータを送信し、欲しい物ができた頃に取りに行く、というビジネスも出てくるかもしれません
。
知財的には、プリンタビジネスと似たイメージですが、プリンタはインクが消耗品であるところ、上記ではプログラムやデータが消耗品になっては意味がありません。そこで、プログラムやデータについては、例えば、ブロックチェーン技術を用いてトレースし、無断コピーや無断転売等を防止するという技術を組み合わせることが有効になるかもしれません。
どのようなビジネスが出てくるか?そのビジネスを支える技術はどんなものか?は想像は尽きませんが、島精機のマスクへの取り組みを見て、今回の新型コロナウイルス危機により、いままで考えもしなかった業態のビジネスが生まれてくる予兆がそこかしこに現れているな、と思います。
どんな新しいビジネスが出てくるか?(危機が去ることが前提ですが)チョット期待感を持っています
。そういった先のことを考え、グランドデザインを描いている人は民間には結構いるのではないかと思います。願わくは国のトップもグランドデザインを描いて行動していればと思うのですが、無理な相談でしょうか
。。。
by KOIP
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