群馬大学発のベンチャー企業である株式会社グッドアイ株式会社明清産業が、群馬大学の特許出願に係る技術を用いた銅繊維シートを開発したそうです(→ニュース記事。群馬大学のプレスリリース。)。

 この銅繊維シート、ポリマー繊維を銅箔でコーティングし、銅箔に可視光晴れで応答する光触媒を担持させており、大腸菌で実験したところ、大腸菌が1万分の1になったとのことびっくり。今後はウイルスにも同様の効果があるか検証するそうです。ウイルスにも効果があれば、新型コロナウイルスの感染拡大に大きく貢献しそうですね。

◆どのような背景があったのか推測する
 群馬大学大学院の板橋教授の研究室のホームページに記載されている研究課題には、「光触媒環境材料を用いる水質浄化試験法ならび装置開発」というものがあります。今回の銅繊維シートに必要な光触媒に関する研究をされており、当然、光触媒技術が研究室に蓄積されていると考えられます。

 また、板橋教授の研究者情報を見ると『環境(水・土壌)中の重金属元素(銅,カドミウム,鉛など)を取り除く方法を開発している。』そうで、有害物質をいかにして取り除くか?という技術に広く深い知見があるといえます。
 

 そして、上記ニュース記事では、『銅に付いた新型コロナウイルスの生存時間が他の素材に比べて短いとする研究結果を3月に米国の大学などが示した』ことに着想キラキラを得て『銅繊維の技術を持つ同社と協力した』とあります。

 おそらく、どうにかして新型コロナウイルス対策をしたい(ウイルスを取り除きたい)と考え、銅でウイルスの生存時間が短いのであれば、更に、ここに光触媒で相乗効果を狙えばより効果が出るだろう、と思い至ったのだと思います。

 そして、完全に推測ですが、群馬大学ではコーディネーターみたいな人がいて、大学の知を活用できそうな群馬県内の様々な中小企業等の情報を普段から集め、大学教員と共有していたのではないでしょうか(たぶん、産学連携・知的財産活用センター辺りがその役割をはたしていそうです)。その情報の中から銅製品を扱う企業を検討し、銅細線を製造している株式会社明清産業が浮上したのではないでしょうか?

 株式会社明清産業のホームページを参照すると、電気部品製造の会社ですが、電気用銅線やスピーカーや電子機器用のリード線製造等に携わっていることが分かります。たしかに、導電性を考えればまずは銅線ですし、しかも極細導体も製造しているのであれば、銅繊維を製造でき、それを用いてシートもできることにまでアイデアが膨らんだのだと思います。

 重要なのは、大学と企業とをつなぐ役割を果たす人がいるか否か?ということですね。

◆技術オリエンテッドとデザインオリエンテッドとの双方を活用する
 さて、板橋教授の研究内容と株式会社明清産業の事業内容とを見てみると、それぞれウイルス対策用マスクとは直接の接点はなさそうにも見えますが、それでも、今回の銅繊維シートの発明へと、両者の努力が実りました。

 どうしてなのでしょう?

 様々なことにアンテナを張り、自分たちの技術ができることを上位概念化して捉え、あれに適用できないか?これに適用できないか?と考えていくと、当初想定していなかった応用分野が見つかることがあります。

 今回の例でいうと板橋教授の研究テーマを「有害なもの取り除く」という上位概念でとらえれば、ウイルスを取り除くという点は共通します。しかも、ウイルス対策に光触媒を用いるアイデア自体は結構多くありますが、より短時間でより効率よくするためにはどうしたらよいか?という課題があります。この課題を板橋教授は明確に定めたのではないかと推測しますキョロキョロ

 そして、課題を明確にしたならば、その課題解決のためにどうしたらよいかを一生懸命考えていくことになりますが、この過程は、まさに、ヴィクター・パパネックの「生きのびるためのデザイン」阿部公正訳(晶文社)での「デザイン」の定義である「意味ある秩序状態を作り出すために意識的に努力すること」そのものと言えます。つまり、技術を基に開発を進める(技術オリエンテッド)に際し、デザイン思考(デザインオリエンテッド)は相性が良いのだと思います。技術だけあってもそれをどう使えばよいのかを考えなければ、世の中には出ることはないからですショボーン。両者をうまく使い、相乗効果を発揮させることができればよい結果に結びつきやすくなるのかもしれません。

 もちろん、原理原則や真理を追求する要素が強い基礎研究であれば、あまり「出口」を考える必要はないかもしれません。しかし、「出口」を考えるのであれば「どのような世の中にしたいのか」を考え、それに向けてコツコツ努力する必要がありますダンベル

 したがって、技術を出発点にした技術オリエンテッドであっても、「出口」を考えた場合は、デザインオリエンテッドも活用するという意識を持っているといいのではないかと思いますキョロキョロ

by KOIP

 

 

 

 

 

  (^u^)コーヒー ====================================

知的財産-技術、デザイン、ブランド-の“複合戦略”なら、

ビーエルエム弁理士事務所の弁理士BLM

今知的財産事務所の弁理士KOIP

========================================コーヒー (^u^)