世界の中心で、おっぱいを叫ぶ ①
【不思議の国の子育て】人と関わるのが苦手なブリキにとって、赤ちゃんと接する子育ては未知との遭遇で刺激的な体験になる。たとえば、生まれて間もない赤ちゃんを座布団の上に寝かすと、全身がすっぽり納まる。・・≪小ちゃ。座布団が布団?≫となる。また、万歳してる手先が耳の辺りまでしか届いてない。・・≪ん? この子は自分の頭のてっぺんを触れない?・・って構造的にオカシクね?・・コレは、フィクション?・・ドラえもん?≫となる。これまで常識だと思っていたコトが全然通用しない。そんな光景が目の前でスヤスヤと寝息を立てつつ転がっている。・・って、まるで不思議の国?・・今回は、その中でも格別で大切なコトだなぁ~と思える、「おっぱい(=母乳哺育)」について紹介してゆく。【おっぱいの凄さ!】母乳で育てたいけどおっぱいが出ないという方、あるいは自分にできるか心配という方には、「助産師・桶谷そとみ先生の教」がとても参考になる。先生は「母乳は必ず出るもの・出せるもの」と仰っている。なぜそんなコト言い切れるのかというと、われわれが「哺乳動物」に他ならないから。だろう。(←出ない方がオカシイでしょ。)まずは「母乳の凄さ」から探る。・・母乳は、既製の粉ミルクと違い、赤ちゃん一人一人にあつらえたスペシャルドリンクと言える。大雑把に見ても母乳の成分は、動物の種類毎に大きく異なる。例えば、アザラシやクジラなど、寒冷地に住む動物の場合、寒さに耐えられるよう脂肪分が多く含まれていると言う。では人間の場合は?・・「赤ちゃんの脳と神経の発達やエネルギー源としてたいせつなもの」が多く含まれている。・・≪って、広告に踊らされ、牛乳を過信してる場合じゃなくね?≫また細かく見ても脂肪成分は、母子のペア毎に異なり、さらに同じ母子でも赤ちゃんが成長するにつれて徐々に薄くなる。そればかりか一日の中では朝から夜になるにつれて薄くなり、一回の授乳の中では飲み始めから終わりにかけて濃くなる。・・≪って、三成の三献茶どころじゃないでしょ。≫さらに、赤ちゃんが風邪をひくと、母体で抗体(=処方薬)を作り母乳に混ぜて与える。・・おまけに、産後の子宮の回復・授乳中のリラックス・ダイエットや美肌の効果・さらに将来の女性特有のがんのリスクを低減するなど母体まで守ってくれる。・・≪って、凄くね?≫先生はこれを『母子一体性の理念』と呼び、ブリキはこれを≪おっぱいスゲーー!≫と呼ぶ。【おっぱいセンサー】母乳には「薬の役割」まであると言ったが、どーしてそんなコトができるのか?おっぱいには、赤ちゃんの健康状態を監視するセンサーが備わっている。ブリキはこれを『おっぱいセンサー』と呼ぶ。・・≪たぶん、母体自身のために備えた免疫の仕組みが、乳首の周りに配され、赤ちゃんのだ液を監視しているのだろう。≫赤ちゃんは、おっぱいを飲むとき、ヨダレやハナを垂らしながら乳首に吸いつく。もし赤ちゃんが病気に掛かっていれば、おっぱいセンサーがそれを検知し、直ぐに抗体を生成し、母乳に含ませ、赤ちゃんに与えられる仕組みになってる。・・≪授乳間隔が短く頻回なのはこのためでもあるのだろう。≫つまり、お母さんが気づかないうちに、おっぱいはフル回転して働いてる。まるで「小人の靴屋」の小人のように。おっぱいが「第二の胎盤」と言われるのも頷ける?・・誤解を恐れずに言うと、≪この時点で赤ちゃんを育てているのは「お母さん」ではなく、「胎盤」や「おっぱい」という小人たちだ≫と思う。また、人間のおっぱいが(腹ではなく)胸にあるのにも理由がある。抱っこして授乳するとき、お母さんと赤ちゃんの顔が向かい合い、ちょうど見つめ合える。・・この辺りから≪(小人たちではなく)お母さんの出番になる≫と思う。そして、赤ちゃんにとっては、口の方が指先よりも敏感なセンサーになっている。だから何でも口に入れて、身の回りのモノを探ろうとする。その最も敏感なセンサー同士が向き合い、想像以上に濃密なコミュニケーションしていると言える。【小人たちに任せる】先生は、おっぱいが出なくなる理由についても明らかにしている。まず、お母さんが「母乳の出の悪さ」を心配してミルクで補う。すると、おっぱいセンサーは赤ちゃんと触れ合えず、「赤ちゃんはもう母乳を必要としてない!」と勘違いし、母乳の生成にストップをかける。後はこの繰り返しで、ミルクで補えば補うほど、母乳は出なくなってしまう。これを避けるには、ただおっぱい(の小人)を信じて任せるだけでイイ。つまり、母乳哺育で重要なのは、おっぱいセンサーと赤ちゃんの口を触れ合わせ、大切なコミュニケーションを邪魔してはいけないというわけだ。ちなみに、妊娠中も第一の胎盤という小人に任せていた。靴屋の小人は、職人よりも靴造りが上手い。それでは職人の立場がないと思うかもしれないが、実は、小人は職人よりずっと長生きで経験豊かなんだと思う。そして、「胎盤」や「おっぱい」も同じレベルの妖精たちで、お母さん一人の知識や経験をはるかに超えた存在なんだと思う。だから、お母さんがするべきことは、赤ちゃんが求めたときに抱っこしてあげること。そして、おっぱいを口にくわえさせてあげることだと思う。(あと、妊娠中と同様、食事に気を付けること。)【不思議な子育てを楽しむために・・】ここで紹介した内容は、先生方の教えのほんの一部に過ぎない。興味を持った方は、ぜひ次の本を読んでみて欲しい。桶谷式 母乳ですくすく育てる本Amazon(アマゾン)1,650円この本は、まるでテーマパークのガイドブックのようだ。「子育て」を何倍も楽しむガイドブックだ。特に月齢が低いときほど赤ちゃんの変化が速く、見逃せない場面が続く。こうしたガイドで下調べしておかないと、その場面を見逃してしまうかもしれない。(残念ながら、その瞬間には二度と出会えない。)この本の「退院から1カ月の過ごし方」や「月齢別 赤ちゃんの成長」の項にはそんな時期の様子が詳細に載っている。読むだけでも楽しく、幸せな気持ちになれる。 (②へつづく)