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【立会い出産の面白さとは?】

前回は出産中の『妻(母親)の想い』に注目したが、今回は『もう一つの隠れた想い』をサルベージしてゆく。

もう一度、陣痛の場面を振り返る。・・

  • 妻)・・「痛いっ、痛いっ、痛いっ~~~・・・んっ・・・。」
  • 心音)・「ドグドグドグドグドグドグッ」
  • ブリキ)「赤ちゃんに酸素をあげよう。深呼吸しよう。」
  • 妻)・・「ス~~ッ、ハ~~ッ」
  • 心音)・「トクン、トクン、トクン」
  • ブリキ)≪お~、面白っ!≫

と、ブリキの中で好奇心の玉が未知のゾーンへと転がっていく・・のだが。たぶん、何がど~面白いのか、さっぱり伝わっていないと思うので、少しずつひも解いていく。

【アンビリカルケーブル】

『未来少年コナン』(宮崎駿監督)に、『送気式潜水』が登場する。

それは、潜水服と地上とを、空気供給用のチューブ(←命綱でもある?)で結び、地上のポンプを漕ぐと潜水士へ酸素が送られる仕組みのコト。このチューブは、臍の緒に由来するアンビリカルケーブルとも呼ばれる。

(↑『新世紀エヴァンゲリオン』(庵野秀明監督)に登場する外部電源ケーブルは、このオマージュだろう。)

名前の由来のとおり、妊娠中の母子の関係と、この潜水の仕組みはよく似ている。

地上のポンプを止めれば、無論酸素供給が断たれ、潜水士は息が苦しくなり危険な状態に陥る。

目の前の妻の姿と赤ちゃんの心音から、赤ちゃんの置かれている状態が、アタマの中でモデル化される。

【転がる玉の行方?!】

ここで、「陣痛」と「母親のイキみ」と「赤ちゃんの心音の変化」とが、『同時』に起きていることに気づく。

てっきり臍の緒の中身は、(酸素を含め)栄養補給ゼリーのようなモノが行き来しているのだと思っていた。まさか母親が息を止めた瞬間に胎児への酸素供給が断たれるほどレスポンスが高いとは思っていなかった。

この気づき端を発して、アタマの中のピタゴラ装置でコロコロと玉が転がっていく。こんな感じで、≪

  • 1)へ~、胎児と母親(母体)の呼吸は、完全にシンクロしているんだ。すげ~。
  • 2)んっ、ひょっとして陣痛のトリガーは母親じゃなく、赤ちゃんが引いているのか?
  • 3)だとしたら、母親は、赤ちゃんの活動を助けるために、陣痛(収縮活動)を起こしているわけだ。
  • 4)つまり、出産は、母親が子を産んでいると言うよりも、赤ちゃんが自ら生まれ出ようとしている行為なんだ。(・・お~、「この世界に出たい!」という、あの母親よりも強い想いを見つけた!・・これが、この渦の中心なんだ。すげ~!)
  • 5)んっ?・・ってことは、赤ちゃんが一番酸素が欲しいのは、懸命に生まれ出ようとするタイミング、・・つまり陣痛のときだろう。
  • 6)このとき、母親がどう応えるか?・・もし母体から酸素を貰えれば支援(勇気づけ)になるけど、酸素を止められれば妨害(勇気くずし)になるだろう。
  • 7)あ~、だから、本の中であんなに分娩時の母親の呼吸(=イキんで止めないコト)が強調されていたんだ。
  • 8)そして、もし出産の途中で胎児が疲れて眠ってしまったら、出産も休止せざるを得ないんだ。なるほど・・。
  • 9)主役は「赤ちゃん」で、「妻(=母親)」にはその第1の支援者であるコトが、「夫(=オレ?)」にはさらに彼らの支援者になるコトが求められているんだ。・・≪コレが親になるというコトか?≫・・

≫と一気にいろんなコトが腑に落ちて理解が深まり、≪ちょ~面白っ!≫となったわけだ。・・

(↑発達凸凹の内面で起きているコトを説明するのはシンドイ(汗)。)

【そうと分かれば・・・】

このときのルーティーンをまとめると・・

  • 1)赤ちゃんが生まれ出ようとアクションを起こす。
  • 2)それを支援するために陣痛(子宮の収縮)が起きる。
  • 3)母親が痛みに伴いイキむ(息を止める)。
  • 4)赤ちゃんに酸素が供給されなくなり、心音が苦しそうに鳴る。
  • 5)すかさず「赤ちゃんに酸素をあげよう!」と声をかける。
  • 6)母親(母体)に酸素が供給されて楽になる。
  • 7)赤ちゃんにも酸素が供給されて楽になる。
  • 8)二人が楽になったのを見て嬉しくなる。

これを陣痛の度に繰り返す。

たぶん、周囲のヒトには分からないと思うけど、ブリキが声をかけている相手は1人から2人に変化している。・・子が生まれる前から既に家族が一緒に共同作業をしている。

≪ん?! コレって共感?・・≫

途中陣痛室から分娩室へ移る。母子の状態をモニタリングする装置は外される(機械さん、ありがとう)。でも、ルーティーンは変わらない。さらに陣痛の間隔が短くなり、ほどなく無事に出産/誕生が終わった。

【夫が立合い出産でできること】

立合い出産で、夫にしかできないことがあると思う。 陣痛のとき、妊婦さんが独りで息をコントロールすのは難しいだろう。また、夫とお医者さんの立場・役割は全然違う。

一方、夫にとっても立合い出産は貴重な機会だと思う。 産科医でなければ、夫が出産に立ち合えるチャンスは一生に1、2回あるかないかだし、仮に希望していてもタイミングが合わなきゃ実現しない。

これらの体験は、その後の子育てや生き方にも大きく影響したと思える。

多くの方々が、立ち合い出産で素晴らしい体験ができたらいいなと思う。そしてみんなが安全に、そして幸せな誕生・出産を迎えられたらいいなと願う。