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【嵐のような夜泣き】

出産から一月ほど経ち、授乳にも慣れてきた頃、次の嵐がやってくる。 おっぱいをあげてもオムツを替えても赤ちゃんは泣き止まずむずかる。 親の心子知らずで、お母さんは困るばかり。

出産からずっと慣れないコトばかり続き、そのうえ授乳による寝不足でクタクタになっている処へこんな嵐がやってくると、お母さんも「も~、いい加減にして!」と苛立ってしまうだろう。

もし、目の前で、夫がのほほーんとして居よーものなら、ただでは済まされない(汗)。

今回は、そんな嵐のような「夜泣き」「疳(かん)の虫」と呼ばれる時期について、ブリキなりに考察する。

【なぜ泣くの?】

この時期、どーして赤ちゃんは泣き続けるのか?

少し話が逸れるが、ブリキの子は、わけあって産声を上手く上げられなかった。そのとき赤ちゃんの体温が下がり少し危険な状態だったと、後で聞かされヒヤリとした。

要は、産声は、赤ちゃんにとって呼吸による全身運動で、体温を維持する(上げる)役目があると言える。

だから、産科の先生は、赤ちゃんが産声をあげないとわざと刺激を与え泣き出させるよう仕向ける。

(以前「出産に立ち合ってみた」で「出産は呼吸が大切」と話したが、この産声も含まれるわけだ。「息をするコトは生きるコト」と言われるのも頷ける。ただし、今回は「呼吸」ではなく「泣く」の方に注目してゆく。)

このように、赤ちゃんが泣く理由は、お腹が空いたりお尻が気持ち悪かったりするだけではないでしょ。

生まれた瞬間から、自力で呼吸し体温を維持しなければ生きていけない。だから懸命に泣く。

また、それまで温かい羊水に包まれ守られていた優しい世界から、肌寒く個として切り離された厳しい世界へ出て来たことに驚き戸惑っているのかもしれない。

そんな大変さを想うと、全力で泣くのも分かる気がしてこない?・・

【赤ちゃんが取組んでいるコト】

赤ちゃんは、1歳になる頃目覚ましく成長する。例えば、おしゃべりができるようになったり、立てるようになったり、歩けるようになってくる。

が、いきなりそーゆーコトができるようになるわけじゃない。(まず音や光に反応し、首や腰が据わり、足をバタバタし、寝返りできるようになり、手で物をつかみ、お座りし、ハイハイし・・と、ちょっとずつ、一つずつできるコトが増えてゆく。)

ここで、赤ちゃんになったつもりで、その内面で起きているコトを想像してみる。(子の心親知らずかもしれないので)

生まれて間もない頃は、まどろむような幸せの世界の中に居る。

そこへ音の感覚が芽生えてくる。ふとガヤガヤとした音が聞こえていることに気づく。最初はその音の聞こえてくる方向が変化するコトに気づく。やがて遠近感にも気づく。(もしお母さんの気配(音)が遠くになれば不安になったりもする。)

こんな風に芽生えた感覚は、一旦気になり出すとしばらく頭から離れず、とても不快になる。(大人でも不慣れなコトが起きれば、ひどく気を使いストレスになる。)

しばらく経つと、なんとなく、そしてちょっとずつ意味が分かるようになってくる。それにつれて新たな世界が広がっていく。

このとき、赤ちゃんの頭の中では、音や言葉の規則性(意味)をフル回転で学習していると思われる。

しかも、赤ちゃんが各機能を効率よく学習できるよう順序立てて発達してゆくという、とても巧妙な仕掛けになっている。生後間もない時期、赤ちゃんの中で次から次へと新しい感覚が芽生えていく。

その度に、難しい教科を教わるときのように、モヤモヤとしたイヤな感覚(違和感)が押し寄せてくると想像できる。

【頑張りを表すバロメーター】

今までできなかったことが、しばらく時が経つと、できるようになる。その間には、ちょっと大変なコト(=学習)に取り組む必要がある。単に時間をやり過ごしただけでは、この「できるようになる」という変化(=成長)は訪れない。

「夜泣き」や「疳の虫」は、赤ちゃんがまさにそれらに取り組んでいるコトを示すバロメーター(計器)になっている。

(まだ、話しのできない赤ちゃんが発するこの泣き声を言葉にするとしたら、「ボク今ものすごいコトに取り組んでいるよ。だから応援してね。ちゃんと見守っていてね。」と翻訳できるだろうか。)

すると嵐に思えていた「夜泣き」が始まったとき、親は、反対にドキドキ、ワクワクしてくる。

「おっ。また始まったな。今度は何に取り組んでいるのかな? これを乗り越えると、今度は何ができるようになるのかな?」と楽しみになる。

しかも、それが1、2日でおさまらず、1、2週間も長引くと、「お~っ。一体どんな凄いことに取り組んでいるんだろう? 何ができるようになるんだろう?」と期待も大きくなる。

そんなふうにこのバロメータを眺めつつ赤ちゃんを見守っていると・・・、いつのまにか嵐は過ぎ去り、そのあとで「お~っ!」と驚くことになる。と思う。

【そういう者に、私は成りたい?】

ここで紹介した内容は、次の本に気づかせてもらった。

ただし、この本に書かれている具体的な説明(赤ちゃんの発達項目など)には、個人差が考慮されていないため注意が必要だ。ブリキの子どもたちの発達時期や順番とはだいぶ異なっていた。その点を踏まえつつ参考にしてほしい。

クタクタになって子育てしているお母さんやお父さんにとって、この嵐のような時期が、ワクワク、ドキドキの時期になればいいなぁ~と思う。