ジュネーブ半径500Mな毎日 -42ページ目

物書きの机








ジュネーブ半径500Mな毎日



ひょんなことから、元ジャーナリストのレス氏のお宅に家族でお邪魔する事になった。

本当はひょんな事ではなくて、犬散歩の途中で、レス氏の具合が悪くなり、それなの にイースターで病院はやっていないから、別の人が往診を頼むと言って、SOS Medecinに電話をかけた。レス氏はいつも夕食はレストランなのですが、体調が悪かったらきっと外出は出来ないだろうと思って、夕食を持って行こう か、と提案したところ、お願いします、ということだったので、イースターの夕食をレス氏の家に運ぶ事になったのだった。

レス氏は医師が往診に来るという事で自宅に戻る途中で「カレンも連れて来て、もし良かったら家族も」、と具合が悪くても紳士である事を忘れない。

そんな訳で、私たち家族4人と犬(カレン)はイースターの夕食時に、豚肉のフィレ・ミニョンのソテー・キノコクリームソース、野菜サラダ、蒸し野菜、焼きたてのフランスパンを持って、レス氏宅のインターホンを押したのでした。

「すぐに帰ります。おやすみの邪魔はしたくありません。」と準備した言葉を話す私たちを、レス氏は私たちを歓迎してくださり、家を全部案内してくださいま した。レス氏は「君たちは夕食はすませた?まだすませていないの?持ってくれば良かったのに。ごめんね。」と言いながら、各部屋を見せてくれました。レス 氏の犬、アビーちゃんも、大きなシッポを振りながら、私たちに部屋を案内している。アビーは嫌いな人が家に入ると吠えるらしいから、私たちは合格なのか。

レス氏の仕事道具である机は、モンサレーブとレマン湖が正面に広がる窓に面している。湖も山も、空の青と境界を滲ませているような青いグラデーションの中に大きく広がっていて、とても気持ちが良さそうだ。
横に、古いパソコンが乗った小さなパソコンデスクがあって、あまりインターネットに頼った生活ではない事が伺える。
よかった、ってなぜか思う。私はデジタル中毒みたいな人間だけど、いつもアナログ的生活に引力を感じていて、出来ればアナログ生活にしたいと思っているくらいだから。アナログ生活で幸せを感じられる人が人生の勝ち組だと思ってる。

さて、廊下や壁にかかった子供、孫、友達の写真、歴代の犬の絵などを見せて頂く。レス氏のお子さんは水泳のオリンピック選手で、お孫さんもロンドン5輪で 泳ぐらしい。父親は弁護士で、マーク・トウェインが大好きで、ファンレターを送ったところ返事が来たけど、その手紙はなくしちゃったとか、面白い話がたく さん出てくる。私たちよりもっと適切な人に話して差し上げたら良いと思うんだけど。

レス氏の仕事机は、緩やかに傾斜しているライティングデスクで、今でも「手書き」にこだわっている事が良く分かる。それでも、机は下敷きがなければ文字が書けないのではないかと思う程、でこぼこしている。言葉を扱う職人の、一心同体となった道具だ。

青銅の亀の文鎮と、内側にレーザーで彫刻がしてあるガラスの文鎮が脇で書類を抑えている。亀は古ぼけているけれど、ガラスはまだ新しい。統一性のない身の回りの品々に、かえってレス氏の歴史とか、それを贈った家族のレス氏への思い入れが感じられる。

レス氏の電話がなった。「ああ、きっとニューヨークの息子からだ」レス氏はそういって、受話器を取る。やはり息子さんだったようで「ごめんね。今友達が来ているから。あとでまたかけ直して」と言っているのが聞こえた。

レス氏が電話を切ったところで、「そろそろ失礼します。料理は冷める前に召し上がってください。お大事に」と言って、レス氏のアパートを後にする事にし た。「どうしてそんなに悲しそうな顔をするんだい?」とレス氏が飼い犬のアビーに語りかけている。アビーも私たちが来てちょっとはしゃいでいたのだ。

「原稿は手書きですか?ワープロですか?」私が玄関で尋ねると「手書きだよ」とレス氏は言う。「万年筆ですか?」と再び聞きかけて、これは別の機会に尋ねようと思って止めた。肉筆原稿にこだわる人は、きっと筆記用具にも思い入れがあるだろうから。別の機会に話してもらおう。

手書き原稿にこだわる書き手は、真摯な文章を書くから好きだ。手書きで書く文章には嘘が入り込みにくいからだ。もちろんこれは個人的な思い込みだけど。レ ス氏のジャーナリストとしての基本的な態度は「正直である事」なので、手書き原稿にこだわる事も良く分かるような気がする。

アビーはそんなご主人の足元で、氏の仕事中はお散歩を待ちながらいつも何を感じているんだろう。

物書きと犬の、一人と一匹の生活。
ゆっくりゆったりした時間が流れているのだろう。とても濃い時間なんじゃないかと想像する。やはりアナログ生活への憧れは強いようだ。












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ミラノ大聖堂 



ミラノを訪れた理由は、ミラノ大聖堂を見たかったからだ。

建築物は、大抵はその土地から出る石を使っている。

ケルンの黒っぽいケルン大聖堂とか
コッツウオルズ地方の蜂蜜色のレンガとか

だから他の建物や自然の色と調和していてとてもきれいだと思う。

ミラノ大聖堂は、白っぽく、時折ベージュかローズっぽい石が混ざっていてきれいだ。

よく見ると、ミラノを歩いているお金持ちそうなマダムは

大聖堂の石に混ざっているようなブロンズ色に日焼けした肌に、大聖堂の壁のような白い仕立ての良いスーツを着て、大聖堂の尖塔みたいなヒールの靴を履いて歩いている。ファッションの街、ミラノの美意識はこの聖堂も一役かっているのかもしれない。



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復活祭直前に、カトリック総本山バチカンのあるローマ方面に向かうのは、無謀かと思われた。
スイスーフランスーイタリアへの車での移動。
ある意味無謀だった。
広場の前もものすごい人だらけ。
観光客というよりは、10代のミラノッ子なのかな。マクドナルドのソフトドリンクを片手に、大聖堂前で寝転がっておしゃべりに興じている。



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ミラノ公国ヴィスコンティ公の命で、ミラノをキリスト教の中心に据える、という目的で1386年に着工、1813年にようやく完成を迎える。

ミラノ大聖堂の第一印象は、ゴシック建築でありながらポテッとした感じであることか。
ゴシック建築としては、縦横の比率としては天上が低いからか、なんとなく横に広がった教会に思える。
ゴシック建築が目指した「森を作る」ような感じとは少し遠い気がするけれど、中に入れば高さは45メートルもあるのでさすがに高い木々に囲まれているような安心感を覚えた。




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ミラノ大聖堂はフランスやドイツから建築士が呼ばれ、時の流行や、ゴシック建築にまつわるさまざまな意見が交錯しつつ、近隣諸国の人達を雇い、船頭多くして船山に登ると 言ったら言いすぎかもしれないけれど、とにかく完成したという感じだろうか。現在ではミラノ大聖堂はゴシック建築教会としては世界で一番大きい(というか広い?)ということらしいのですが、天上の低さ、完成したのが19世紀ですでに中世ではない、ということから、果たしてこれはゴシック建築なのか、という疑問を常に浴び続けないといけない運命のようです。まあ、でもそれを言ったら、正統的なゴシック建築は、世界にはそんなにないと思うけど。ある意味イタリアの自由さが現れていて、気持ちが軽くなる。




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この日は、聖金曜日だったからか、聖堂内には信者さんが多く集まっていました。ですので、聖堂内の撮影は控えました。


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そんなこともあって、今回は屋根まで登る事もせず。

ジュネーブから3時間半のミラノなので、また訪れる機会もあるでしょう。

今回はレストランもハズレ、美味しかったのはジェラートだけ。レストランがハズレってこんなに悲しい事なのかと、こんなにも一刻も早く帰りたくなる物なのかと、ほんと、びっくりしました。次回はちゃんとガイドブックお薦めを見て行こうと思います。



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イースターのモンブラン・トンネル経由アオスタ渓谷


イースター休暇の初日、ジュネーブを9時頃に出発して、どんどんと真っ白いモンブランに向かって走って行く。

スイスからフランスを通って、モンブラントンネルを通過する予定なのだ。

フランスの高速道路は130キロ制限なので、どんどん進む。早いねーなんて言っていたら、突然の渋滞にはまった。

事故かと思ったけれど、交通整理の警察に聞くと「ただの渋滞」らしい。

モンブラン・トンネル前の、自然渋滞なのだ。

モンブラン・トンネルは、全長11キロ以上ある、2車線対面通行のトンネルである。

片側通行のトンネルが多い中、このトンネルだけは対面通行で、以前にトンネル内での火災事故事故(1999年)があったことから、今では規制が厳しく見直された。トンネル内での火災は、

1、煙で視界が遮られる、
2、有毒ガスが充満し、高温火災になりやすい、
3、酸素濃度が急激に低下する、

という危険が伴うという点から、モンブラントンネルにはいろいろな規制がかけられている。
トンネルは一度火災事故を起こすと、修復のため一年以上閉鎖される事もめずらしくないので、事故を防ぐ事は100パーセント無理だとしても、全力を尽くしている様子が良く分かる。


1、トラックなどは事前に倉庫の温度を測り、積み荷がトンネル内で燃えないようにチェック
2、トンネル内は時速50キロ以上70キロ以下で走行
3、車間距離は150メートル以上
4、トンネル内に400メートル毎にビデオカメラ設置
5、トンネル内では交通情報のラジオを聞く事
5、火災事故に見舞われた3月24日の事故の時間帯1時間は犠牲になった方々へ黙祷のため通行禁止

となっている。


トンネル内での事故や火災時の理想的な状況は

1、巻き込まれた人達が自分たちをレスキューする事が出来る(そのように注意書きが書かれた看板が立っています)
2、レスキュー隊が素早く入って活動できる(トンネルの入り口にレスキューが待機しているようです)
ちなみに、トンネル火災は10分を過ぎると完全燃焼に発展すると言われているので、避難・救助・消火活動・二次災害防止を適切に行う事となっています。これを一人一人が実行するって、すごい怖い話ですが、でも知っておかないと。


その他

1、物的破損を最小限にする事
2、環境保護を怠らない事

とする、自然と人工の相反する条件のバランスを取らないといけないのだから、
アルプスにトンネルは本当に様々な人達の努力の結晶なのだと思う。



環境保護の観点から、トンネルを拡張できないモンブラン・トンネルを通過するのは、なんとなく身が引き締まるような気持ちになる。荷物を積んだ巨大トラックが本当に多く、一日に数千台のトラックが行き交うそうだ。流通業の方には頭が下がるような思いだ。

というわけで、トンネル内での渋滞はないのですが、トンネルに入るまでが大変なのだ。

この日も、トンネル入り口から5キロぐらい手前から渋滞で、時々エンジンを切りながら、2時間以上待つ事になった。美しい霊峰のようなモンブランの胎内を通るというのも、申し訳ないような、トンネルをつくらせてくれてありがとうと思いながら。富士山にトンネルを掘る事になったら、多分日本人はみな反対するだろう。

ちなみにスイスは1999年4月に特別対策グループが作られて、600メートルを越えるトンネル全てを調査し、安全対策の見直しを行っている。
フランスは2000年8月、1km以上のトンネルの安全対策についての新しい規制が承認されている。
ドイツでは1999年11月に安全対策に関するワークショップが開かれている。



さて、また話しはもどって、トンネル街の大渋滞。待ちくたびれた人達が、運転手だけを残して、ハイキングの気分なのか徒歩でトンネルに向かっている。そんな人達をゆっくり抜いたり、再び抜かされたりしながら、やっとトンネル入り口に到着。日本のゴールデンウィークの東名高速渋滞よりも厳しい渋滞かも。

そして、10分少々の間トンネル内を走行して

フランス・シャモニーからイタリア・アオスタに入った。



トンネルを抜けて少し走るとアオスタ渓谷が広がっている。

モンブランやマッターホルンやモンテ・ローザといった山々に囲まれて、自然豊かな風景に目を奪われる。

と同時に、冬は相当厳しいところなのだろう、とも。

風も強く、「風の谷のナウシカ」が住んでいそうなところ。





ジュネーブ半径500Mな毎日


もう少し緑が増えたら、アオスタにも遊びに来たい。

モンブラントンネルも、ヨーロッパに暮らす人達には悲願のトンネルだったと思う。

しかし、アオスタ渓谷に暮らす人達の生活ってどのような生活なんだろう。

四方を至近距離から山に囲まれ、風が強い。空気も水もきれいだけれど、その分地理的に孤立しがちな感もあるような。しかし、そんな事よりも絶景に囲まれて、「今が良ければ全て良し!」っていう思いで一杯で暮らせそうなところ。





ジュネーブ半径500Mな毎日



こんなところをお散歩したら、カレンも楽しいだろうな~。

後ろ髪を引かれるように、アオスタを通り過ぎて、トリノ方面へ。

最終目的地はミラノ。

進むに従って、ドライバーのせっかち度が伝わってくる。イタリア人は時間にルーズだとおもうけれど、自分が待たされるのは嫌なのか。

スイスやフランスに比べて、クラクションを鳴らす人が多いし、制限速度を軽く20キロぐらいオーバーしている車も多く、表示通りに走行していると他のドライバーからイライラされたりして、道路状態についてはスイスが恋しいかも。


ミラノへは、車で中心地まで行くのは躊躇したので、ミラノ大聖堂から地下鉄で10分ぐらいの、ちょっと郊外(だけど地下鉄駅からは徒歩3分)ににホテルを取った。私たちにはこれで正解だった。