※※※本編の内容・ネタバレを含んでいます。ご注意ください。※※※

⚠各章終えるごとに感想を書いているので、見当違いな推測をしている部分もありますがご了承ください。






みなさまこんにちはあしあと
満です羊

3日連続ファタモル感想をお届けしておりますトランプスペード
本当に細やかなところまで物語が素晴らしくて、プレイ当時は夢中で感想を書き連ねていましたピンク薔薇
もうすっかりファタモルの館に(喜んで)捕らわれてます赤薔薇



































The third door -1869-
次に館の女中が導いてくれたのは、人々の笑い声が漏れるビリヤード室の扉。
今度の歴史の主役は、野心を抱く投資家の男・ヤコポ。
金と権力を追い求めるという設定の時点で、ファタモルでは死亡フラグ立ちまくりで私はここらへんで既に覚悟を決めました。
腹の探り合いはあるかもしれないけど、ヤコポと同じような投資家たちがビリヤード室に集い、館には大勢の使用人が立ち働いていて、前回の話に比べるとまだ明るい印象を受けた。

ヤコポは新しく、大陸を横断する鉄道事業に投資をしていて、それが成功するかどうかを気にかけている。
ビリヤード室でもその話題が上がっていたけれど、そこへやって来たのは、例の白い髪の娘。
やっぱり彼女は今回も登場しましたが、今度はヤコポの妻で館の夫人。
名家の出身だけど家が没落して両親は体調を崩し、家の命令で家柄を持たないがお金は持っているヤコポと利害一致で結婚をすることになったのだそうです。
家を助けたくてお嫁に行った白い髪の娘は最初は顔も見たことのないヤコポに不安を感じていたけれど、結婚式で向かい合ったときには微笑みを返してくれて、ぶっきらぼうな口調ながらも新婚旅行と称した街案内で活動絵のフェキナストスコープをプレゼントしてくれる彼の真心を感じ、すっかり恋に落ちたのでした。
白い髪の娘は、お金や地位のことばかり追い求めるヤコポのことを、未来の技術を上げることに投資していることから"あなたは夢の後押しをしたいのですね"と彼の隠れた純粋さを悟り応援するようになる。
個人的には、フェキナストスコープを喜んで眺める白い髪の娘とヤコポのスチルがお似合いすぎて素敵すぎて、もうここでハッピーエンドでいいですふたりとも結婚おめでとう幸せをありがとうって気持ちになった。

でもここでエンドにならないのがファタモルさんです。
実はこの結婚から約1年経ち、ヤコポは白い髪の娘に辛辣に当たるようになっていました。
しかも館の主人であるヤコポがそんな態度だから、使用人たちは夫人である白い髪の娘を見下しいじめるようになっていった。
白い髪の娘にはここらで幸せになってほしかったけれど、また不幸な境遇へと進んでいってしまっていて、ぐぬぬ…となったけど、たったひとり白い髪の娘の元へ駆けつけた人がいた。
それは、マリーアというやはりメイドで、南国の太陽のように明るく砕けた口調の人で、プレイヤーの心も白い髪の娘の心もパッと明るくしてくれました。
マリーアは実はヤコポと幼なじみの同郷で、ヤコポとの仲が良かった。
ただ、これってもしかして三角関係になっちゃったりしない?と不安が頭をよぎりましたが、"その心配は"なかった。
そう、マリーアはふたりそれぞれの唯一の味方を装いながら、ふたりの仲を引き裂こうと少女漫画にありそうな遠回しかつ狡猾な手段を使ってくるヒールの立場だったんです。
マリーアのやったことはいわゆる告げ口がメインで、"奥様は他の男と浮気していますよ""旦那様はあなたの手紙を暖炉へ捨てていましたよ"とそれぞれが疑心暗鬼になったり不安になることをささやく。
時には、ふだん活動的ではない白白い髪の娘に気分転換と言って香水を付けて踊らせて頬を赤く上気させて、そこへタイミング悪くヤコポをやって来させて白い髪の娘の浮気疑惑をますます強くさせる。
ヤコポを上手いこと乗せて、白い髪の娘がせっかく持って行った紅茶を冷たく下げさせたり、大切にしていた薔薇園を全部壊したりさせてしまう。

マリーアは変化球の攻撃として、ヤコポの親族の男に"奥さんがお前の態度が手厳しいと相談をして来たぞ〜"と事実ではないことをヤコポに告げさせる。
それに対してヤコポは、"妻はそんなに自分のことで悩んでいたのか…"という考えにはならず、"ろくに知らない男に相談を持ちかけていたのか、関わっていたのか!"と激しく嫉妬。

ヤコポのヤンデレが爆発しました。
ここはスチルつきだったけど、すごい迫力だった。
ヤコポガチギレじゃん、あとヤンデレだった。
頭に血が上ったヤコポは白い髪の娘を歪んだ愛の言葉をぶつけ、彼女の髪を掴み挙げて監禁宣言。
そして実行。
って、ちょっとちょっと…と誰も止める間もなく白い髪の娘は閉じ込められてしまった
しかもね、使用人たちが意地悪で食事を運ぶ際に、"これじゃまるで家畜みたいですよぅ"だなんて追い打ちをかけてきて、可哀想すぎる。
いくら労働者として奉公するのが大変とはいっても、ここまで言ってしまうなんて、こんなに綺麗で優しく儚いひとなのに、助けはないの?というかヤコポはちゃんと白い髪の娘の話を聞いたげて、と居ても立っても居られない気持ちになった。

こんな仕打ちをされても、白い髪の娘はヤコポのことを信じ続ける。
ヤコポもまた、歪んではいるけどそれと相反した純粋な愛を白い髪の娘に抱いていて、どんなに浮気されたとしても(してないけど)離婚はできない、手放したくないって強く想っていて、何もなければこのふたりは相思相愛で良い夫婦になれたんだろうなと感じた。

ヤコポをここまでの行動に駆り立てたのは、マリーアの画策もあったけどヤコポ自身が抱える闇にも起因していたと思う。
資産家として社会で成功しているヤコポにはコンプレックスがあって、それは単に庶民の出だからではなく、(恐らくギャングの)ファミリー出身だということ。
ヤコポの家のファミリーとマリーアの家のファミリーは敵対関係だったけど、子供時代のヤコポとマリーアは真っ直ぐな友情を結んでいて、それはヤコポの中では今も変わらないことだった。
一方マリーアは親同士の抗争に巻き込まれる直前に母親と街を脱出し、その後、ヤコポのファミリーが父親と祖父が殺されたことを知り、復習のためにヤコポのところへ現れたという経緯があり、それがふたりの恋仲を引き裂こうとする動機でした。
マリーアは何もかも失った自分よりもヤコポが人並みに、いやそれ以上に幸せになるのが許せないようだった。
マリーアのやったことは許されないんだけど、マリーアに身に起こったことはやっぱり気の毒に思います。
マリーアの祖父は世渡り上手だったようだけど、マリーアもきっと同じだと思う。
その世渡り上手を悪い方向に使ってしまったけど、本来は別の良い方に使ってほしかった。
マリーアだって美人だし底抜けに明るいし頭も良いと思うし勿体なかった。
ちょっと話が脱線したけど、ヤコポは自分のファミリーがマリーアの大切な人たちを殺していったことにも罪悪感を抱え、名家の出身という自分とは違う清らかな生まれの白い髪の娘に引け目を感じていたみたい。
そもそもヤコポは両親の家庭不和もあってか自分に自信のない繊細な子どもで、その自身のなさは堂々と振る舞うようになった大人になっても心に持っていた。
それが白い髪の娘と腹を割って話して、彼女の口からあなたが愛していないと告げられることを極端に恐れさせ、直接会いに行くことができず、ただただ彼女を閉じ込める行動に走らせてしまったようです。
でもヤコポは、マリーアのことをなんとか助けてあげたいと思っていたし、好きでもない男と結婚させられた白い髪の娘の立場も分かっていて幸せにしてあげたいと思う優しさを持った人だった。
彼がお金と名声を求めていたのも、衰退していくファミリーを助けるため。
でも、そんな彼の優しさの断片を感じ取っていたのは白い髪の娘だけで、本音の大部分は誰も知らないままという切なさがあった。
ツンツン振る舞っているけど実は情に厚いだなんて、ヤコポの素をみんなが知ったら絶対好かれたのにと思う。

というかさ、他にせっつく人いなかったん!?
ヤコポは人に壁を作ってるのがデフォルトだからいなかったんだろうけど、私がいたら絶対ヤコポを白い髪の娘のところへすぐさま向かわせてた。
向かわせたかった。
画面のこちら側で何もできないもどかしさを軽く感じながら、白い髪の娘があまりかわいそうな終わり方をしないように祈るばかりだった。

白い髪の娘の換金生活は何ヶ月も続いた。
その間、白い髪の娘はまた結婚当初のような幸せが舞い戻ることを信じ、ヤコポを信じ続けて手紙を書くけど、その手紙はすべてマリーアによって改ざんされて架空の浮気相手へ宛てた手紙としてヤコポに届けられてしまう。
マリーア過去は同情するけど、何世紀にも渡っての白い髪の娘の不幸を見続けて来たプレイヤー側としてはもうそっとしといたげて…と思った。
それを見たヤコポはご乱心で、ますます嫉妬心を滾らせていくけど、白い髪の娘に止めようのない憤りを暴力としてぶつけてしまうことを恐れて面と向かって問いただすことはできず。
出自のコンプレックスと他者への罪悪感と彼女への愛が強すぎるあまり、一歩も身動き取れなくなっていたヤコポ。
ヤコポは神経を擦り減らし疲れ果てて行くけど、彼女とどうしても別れたくないと改めて考えてとうとう白い髪の娘と会うことを決意してくれたとき、私は思わず心の中で拳を握りしめてて完全にヤコポと白い髪の娘に肩入れしてた。笑
ファタモルさんの話は登場人物の心情がこれでもかと深く描かれるので、つい感情移入してしまう。

ヤコポが物語開始序盤から投資していた鉄道開通の日に、白い髪の娘の元へ行き、これまでずっと言えずにいたことを洗いざらい言いました。
本当にすべて、言い切ったと思います。
けれど、その言葉はすべて、白い髪の娘に届くことはなかった。
白い髪の娘は、ヤコポが大事にしていた鉄道開通のことを覚えていて、鉄道開通の日までは彼を待つことにしていた。
ただ、ヤコポと白い髪の娘が和解しようとしていることに何もしないマリーアではなく、開通日が2日延期になったことを白い髪の娘には伝えなかった。
だから、ヤコポが換金場所へと向かったときには、白い髪の娘は立ち去った後だった。
悲しすぎる、まだ死ななかったから良い…と言っていいのかも分からなくなってきた。
だってヤコポが彼女の手紙を読まず燃やしていると聞かされ続けた彼女は精神的に追い込まれ、お前は魔女だという幻聴が聴こえるまでに心を壊して消えてしまったから。
ようやく手紙がきちんと伝わり、使い古されて擦り切れたフェキナストスコープが残されていたことで、白い髪の娘がヤコポを最初から最後まで愛していたことは伝わった
それが唯一の救いかもしれない。

マリーアが自分たちの仲を混乱させた者だと気づいたヤコポは、恨みを語るマリーアに撃たれそうになるも先にマリーアを撃ち殺し仇を打つことはできたしこの形勢逆転シーンのヤコポはかっこよかったです。
ハードボイルドアクション映画のラストみたいになってたし、館の主の椅子に美脚を組んで座る女王様なマリーアも迫力あった。

ヤコポはその後も死ぬまで白い髪の娘を捜し続けたそうです。
待たせる側から永遠に待たされる側になってしまったヤコポに憐憫を覚えるとともに、一生変わらなかった彼女への愛に切なくもなったお話でした。




↓ファタモルガーナの館、次回の感想