※※※本編の内容・ネタバレを含んでいます。ご注意ください。※※※

⚠各章終えるごとに感想を書いているので、見当違いな推測をしている部分もありますがご了承ください。




みなさまこんばんは星空
満ですコイン

ファタモルガーナの館が個人的大ヒットすぎて、家族にもすすめたらやり始めてくれました🙌
「面白い作品は導入から引き込まれるね」と言ってくれたんですが、ほんとその通りすぎる赤薔薇

































The second door -1707-
次に館の女中が導いてくれたのは貯蔵庫の扉。
ローズ家の悲劇から約100年後。
あれから誰も子孫を残すことなく消え去り、屋敷は50年以上も無人で荒れ放題だった。
そんな中でも館の女中はたった一人、主人の帰りを待ちわびていた。
ある日、謎の獣が屋敷の貯蔵庫に迷い込んだ。
べステアと名乗る彼は、獣なのか人なのか…?
最初はよく分からない言葉(昔のポ○モンみたいな鳴き声SE)を話していたものの、館の女中の教えのおかげで会話できるようになったことと、元々相手が何を言っているのか理解もできることを考えると、何らかの生まれつきの病気を持つ人間なんじゃないかと最初は考えた。
それに、獣は戦うときに剣を使うけど、本物の獣なら牙や爪で戦うんじゃ?って思ったり。
獣を恐れる気持ちはあったという館の女中(全然そうは見えない。笑)は、戸惑いはありつつも屋敷の主人になってくれるかもしれないべステアと交流を深めていき、平穏な時間が過ぎていた頃、訪問者が現れる。
道に迷ったという貿易商の男に、すっかり屋敷の主人が板についていたべステアは親切に寝床や食事を提供する。
ちなみにべステアは、平穏な日々を過ごしたいという希望があるみたいなんだけど、第一章のメルもただ平穏に暮らしたいだけだったみたいなこと言っていたし、もしかして、メルの生まれ変わりがべステアだったりして。
というか、記憶を失っている館の主人の生まれ変わりがメルで、その次の生まれ変わりがべステア?

べステアにはトラウマがあって、それはこの館に来る前、人間たちに獣と罵られ暴力を振るわれ、殺されそうになったこと、そして人間たちを殺してしまったことだった。
"殺られる前に、殺るしかない"と追い詰められているべステアは、館の女中から人らしい振る舞いを教えてもらう中で落ち着き始めていたものの、貿易商の男が村人たちに獣の用心のためにナイフを持たされたことを話した途端豹変し、貿易商の男を無惨に殺してしまった。
そのままタガが外れたべステアは、以前にも増して狂気じみていき、館に迷い込んだ村人たちを次々と惨殺し、またそれを愉しむようになった。
普通に怖い。
一応、死人の出なかったローズ家の話と違って、序盤にしてもうかなりの死者数…。

ところが、白髪の娘が現れてからべステアの心情は良い方へと揺らいでいくんです。
白髪の娘は前話から100年以上経っているわけだからもう亡くなっているはずですが、生まれ変わりなのか本当に魔女なのか、ショートヘアに変わっただけで相変わらず赤い瞳に白い髪の綺麗な姿をしていました。
人を殺すことが愉しみになっていたべステアは、白髪の娘の可憐さに目を奪われたものの、殺す標的とすることは変えず、彼女の寝室へと向かう。
けれど、白髪の娘は自分が殺されそうになってもちっとも動揺せず、あなたのことは怖くない、何か事情があるのでしょうと、まるであの時のメルのようにべステアに語りかけるんです。
やっぱりこの白髪の娘は、記憶はないようだけどメルとのことも心の奥底では覚えているんじゃないか、今度は逃げてはいけないとも言っていたし。

そして、自分は醜い汚らわしいケモノだ、自分がケモノだから殺されなきゃいけなかったのか、と苦しむべステアに、白髪の娘は"あなたは人間に思えます""優しい人"と無垢な言葉を届けてくれる。
やがてべステアは白髪の娘の笑顔が見たいと、望むようになってまるで美女と野獣(がもっと血塗れダークになったver.)みたい、今度こそ両想いになれる!?物語のジャンル的に無理だろうけど、いやでももしかしたらさぁと私はすごい入れ込みながらシナリオを進めていきました。

そしてこのあたりから、視点が順番に変わっていきます。
時に不安定に、時に穏やかに館で暮らすべステアと白髪の娘。
恋人だった貿易商の男の訃報を受けて、遠方から遥々捜しに来たポーリーンという少女と、彼女になんだかんだで協力する村の少年・ハビ。

ポーリーンはべステアに親兄弟や友達を殺されたハビと交流を深めるうちに、獣の存在を知り、獣に貿易商の男が殺されたのではないかと考え、ついにべステアの住処の情報を得る。

一方平穏な日々を送っていたべステアですが、ある日突然、自分と似た姿をした獣が現れ、その獣にまるで人間のように怯えながらも白髪の娘を守ることを決めて退治。
好きな女の子を守ったはずなのに、心は晴れず、むしろ不安定さは増していくばかりで怯え続けるべステアには、白髪の娘の励ましも一時の効果しかなかった。

場面は切り替わり、ポーリーンはついに獣の住む館まで辿り着く。
しかし、そこで見た人影は獣ではなく、死んだはずの恋人で貿易商の男・"ユキマサ"だった。
って、えぇ!?
べステアやっぱり人間だったのか。
しかも東洋人というか、思い切り鎖国時代の日本人。
序盤に死んだ貿易商の男と、ポーリーン恋人の貿易商の男・ユキマサは別人だったというミスリードでした。
完全に騙されたぁーと思いながらすごく面白かった。

村人たちに殺されかけてから自分の姿が恐ろしい獣《べステア》にしか見えなかったべステアことユキマサは、かつての恋人ポーリーンの姿も獣のようにしか見えず、白髪の娘を守るためと殺したのがポーリーンだったという種明かしでした。
これが小説なら叙述トリックになっていそうですね。
館の女中の言うとおり、ユキマサが本物の獣なら、ダーク版美女と野獣で、獣が人の心を知って人知れず密やかに幸せに暮らすエンドになったかもしれなかったのに。

祖父母は武家の出身だが日本が鎖国したために帰れなくなったユキマサの一族は、ユキマサに代々伝わる"刀"を受け渡していた。
血に濡れても錆びない強い剣は、日本刀のことだった。
貿易商として世界各国を巡り、上司の娘であるポーリーンと恋人になったユキマサは海難事故に遭い漂着し、珍しい東洋の見た目と憔悴しきった姿から村人たちからケモノと呼ばれ迫害されてしまったのでした。
個人的には、いくら憔悴してたとか異国人の顔だったといっても、ユキマサめっちゃイケメンの切れ長セクシー黒髪兄ちゃんにしか見えなかったです。笑

しかも、ユキマサの秘密はそれだけじゃなかった。
これまでの話だと、瀕死の極限状態のときに村人たちに殺されかけたから獣になってしまったような印象のユキマサでしたが、簡単にいうと、

獣の心を持っていたのは元からでした!

というオチ。
密輸の疑惑があるが無実の可能性のある船員を問答無用で処刑したり、さらに完全に無実の他の船員に罪を着せて拷問の挙げ句に絞殺、しかもそれを笑顔で愉しんでしまうユキマサの一面が明かされていって、ローズ家の悲劇と比べ物にならないほどのホラーで本当に怖かった
ファタモルさんが本気出してきた。
恐ろしい獣のビジュアルをしていた時よりも、人間のユキマサの狂気的な姿の方が怖いという…。
とりあえずこの作品中で彼より一番怖いものってないんじゃないかな…。

そんなどんでん返しが次々と起こる中、白髪の娘が体調を崩したことで彼は貴族のような立派な身なりでトラウマの村に降りていく。
思いがけず暖かく接してくれた村人たちだったが、ポーリーンを殺されて奮起したハビが男達を引き連れて獣の討伐に向かったことが発覚。
慌てて館に戻るユキマサだが手遅れで、彼に平穏をもたらしてくれた白髪の娘は男たちの手によって亡くなっていました。
白髪の娘、毎回不憫すぎる…。
救いはないんですか!?

完全に殺人鬼の心を蘇らせ精神的なケモノを解放したユキマサは、愉しそうに笑いながらハビや村人たちを愛刀で殺していくところで第二章は幕を閉じました。
ユキマサにとっては、サイコな殺人鬼の精神的な獣であるよりも、迫害された過去に苦しむ哀れな獣・べステアである方がまだ楽だったのかな…。





↓ファタモルガーナの館、次回の感想