華は天命に惑う 莉国後宮女医伝 二 | あだちたろうのパラノイアな本棚

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読書感想文、映画感想、日々のつぶやきなどなど。ジャンルにこだわりはありませんが、何故かスリルショックサスペンスが多め。

 

 

架空の中国後宮を舞台にした新米女医のお仕事小説、第二巻。

 

 

女性特有の疾患とか不調に関する悩みを扱っているので、現代女性にも身近な話と思います。

 

これまた考えさせられるお話でした。

 

テーマは、ワクチン。

 

現代でも(ほんのつい最近でも)ワクチンというと何故か強烈な反対勢力があるのなんでだろう・・・受けるか受けないかの判断や、そもそも受けられない事情は人それぞれだと思うけど、自分はともかく、赤の他人にまで脅迫じみた反ワクチン運動を展開するの何でなんだろう。

 

そうか、こういう心情なのかもしれないな、という描写が含まれるお話でした。

 

主人公の新人女医・李翠珠は、後宮で年若い礼侍妾を新たに担当することになり、忙しい日々をおくっています。

礼侍妾は、「早く皇帝の子を産め」というプレッシャーに怯えつつも、月経痛が酷くて辛い思いをしています。

礼侍妾を診察して、薬を勧めた翠珠ですが、何故か薬を飲みたがらない・・・?

 

同じ頃、郊外で疱瘡の疫病が発生したとの報が入ります。都に到達して蔓延する前に、急ぎ種痘を施そうと医官たちが準備していたのに、途中で「枯花教」という反医術の団体が妨害し、種痘が盗まれてしまいます。

 

枯花教は何を企んでいるのか?

あらゆる医術を否定し、人間は自然に生きるべきと説く枯花教の布教は、どうやら宮廷にも入り込んでいるらしい。

 

そして翠珠は、疱瘡に罹患して命は取り留めたものの醜い容貌になり、宮殿の奥深くにひっそりと住む皇帝の妹・長公主のことを知ります。彼女が心に秘めた想いは・・・

 

 

疱瘡、怖いです。物語の中では「天花」という名で呼ばれていました。全身に生じた発疹がカサブタになり、やがてはげ落ちるのが花が咲いて散るようなので、この俗称になったそうです。そんな綺麗なものじゃないんですけど・・・

 

強毒性のものに罹患すると、二人に一人は死ぬという疱瘡。でも種痘をしていれば一生かからない。ただしその種痘も100%安全ではなく、一千人に一人は、種痘が原因で疱瘡を発症してしまうリスクがある。

一千人に一人のリスクをとっても、種痘をするべきか。

それとも運悪く犠牲になってしまう者が出る以上、種痘などやめるべきか。

 

現在のワクチン接種は前者の考え方に沿って行われていると認識しています。

安心して接種を受けるのは、自分はその数%の犠牲者に入らないと(なんとなく)確信しているから。それで将来に渡って恐ろしい病気に怯えることが無くなるのなら、そっちの方がいいですもんね。

でももしも、大丈夫と思って受けたワクチンのせいで、深刻な後遺症が残ってしまったら?ワクチンさえ受けなければ、健康でいられたのに。

 

翠珠と長公主、先輩女医や周りの官吏たちとの会話で、このへんの問題点が浮き彫りになってきます。

 

疱瘡のせいで人生を台無しにされてしまった長公主の悲痛な叫びが痛々しい。

想いを充分理解しながら、どうにもできない無力感に打ちひしがれる翠珠も可哀想。

 

翠珠を優しく包み込むイケメン官吏・夕宵。

またLOVEなしうずまき

でも最近のイケメンは「俺がオマエを守るー!」とかじゃなくて、頑張って自分の道を進むヒロインを陰で支えるくらいがイイんだよね!

ハート

 

 

〜おまけ〜

 

 

河井継之助記念館の特別展に来ました。

 

 

わたしは旅の日記を小さなメモ用紙にチマチマ書いてる史料が好きです。「塵壺」だっけ?

 

 

河井継之助ファンクラブ「友の会」に入りました。

徽章、かっこいい。