華は天命を診る 莉国後宮女医伝 | あだちたろうのパラノイアな本棚

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読書感想文、映画感想、日々のつぶやきなどなど。ジャンルにこだわりはありませんが、何故かスリルショックサスペンスが多め。

 

 

好んで読んでいる小田菜摘さんの中華時代小説です。

 

中華宮廷ものはジャンルのファンが多いのか、本屋さんにたくさん並んでいますね。正直、どれが何やら・・・

小田菜摘さんのお仕事小説っぽいところが気に入っています。やはりこれもか。

 

この本は、女子の医学校を卒業して女医になり、師匠や上司のもとで日々研鑽を積みながら一人前の医師となるべく励んでいる少女の物語。

 

主人公・李翠珠はある事件をきっかけに後宮の医官として赴任することになります。

後宮には現在、皇后はいなくて、複数の妃嬪たちが各殿舎に居を構えています。最古参であるのが呂貴妃、その下に若い栄嬪と河嬪。

栄嬪は現在妊娠中でおろそかにはできないが、性格がキツく傲慢で家臣たちからの評判はすこぶる悪い。

河嬪は皇帝の寵が厚いが、最近流産してしまってからは心を病み、人目を避けて引きこもっている。

 

何やらピリピリ感がすごいこの人間関係の中に放り込まれて、妃嬪たちの体調を診る下級医官となってしまった李翠珠でした。

 

次々と体の不調を訴える妃嬪たちの中には疑惑が生まれ、誰かが毒を盛っているだの、いや自作自演だの、黒い感情が渦巻いています。

果たして彼女たちの体調不良は、誰かが目論んだ犯罪なのか?それとも別に理由があるのか?

李翠珠と、クールビューティーな上司が医学的知識を動員して謎に挑む!という内容。

 

 

ミステリーとしての謎の隠し方が上手いというのもあるし、女性たちの感情の動きが細やかに描写されているので共感を呼びます。

 

李翠珠なんかは仕事に命をかけるキャリアウーマンなんだけど、妃嬪たちは皇帝の寵を競い、子供を産み育てることがミッションです。立場の違いはあれど、自分の生きがいを見つけることには変わりなく、どれをとっても大変。大変だけどそれが自分で選んだ道なら、誇りを持って生きていけるよね、という励ましになっていて、とってもストンと心に落ちます。

 

「余計なことしないで、こうしておけば安泰でしょ」

と他人に価値観を押し付けられると不満や不幸につながるのです。

 

まあ小田さん作品のいつものことながら、ラブ要素が薄い(皆無ではない)のがあっさり風味ですかね。

イケメンの宮廷監察官がカッコ良いんだけどなあ・・・イケメンの無駄遣いだなあ・・・うずまき