初読み作家さんです。
いつもは刑事ものを書いてらっしゃる作家さんなんですかね?
この本、舞台となるのは明治時代。
明治38年7月という、日露戦争真っ只中の日本です。
この時代の警視庁の面々が、東京のど真ん中で起こる謎の連続殺人事件を捜査するというお話。
明治38年あたりだと、幕末の英雄たちは年寄りになって第一線を退いているけれど、ひっそりと生き残っています。今、現役で活躍している若者たちは皆、武士なんてそんなのいたんだぁ的な世代で、全く新しい価値観を生きている人々です。
旧世代と新世代が混じって、不可解な殺人事件の謎を解く。
貴族院議員を父に持つ若き探偵や、女子高等師範学校に通う勇敢な子爵令嬢も加わり、大捜査本部結成。
なんかわちゃわちゃ登場人物が多くて覚えるの大変だったんですけど、べらんめえ口調のボス・鳥居部長が良いですね。この人は元南町奉行の鳥居耀蔵の縁者という噂がありますが、真相は明らかではなかったです。
米沢出身、会津出身、仙台額兵隊の生き残りなどが鳥居の忠実な部下として集います。こんなメンツが揃えば、薩長の藩閥政治が続く政府に叛骨精神ありありです。
どうやら連続殺人事件は、長州閥がからんでいるらしい。
しかも内務省が出てきたので、内務省の下にある警視庁は身動きが取れなくなったりして。泣く子も黙る内務省、コワイ。
個性的なメンバー揃いですが、なんといってもこの中のメインは、藤田五郎翁でしょう!あの元新選組・斎藤一さんです。
藤田さんはすっかり現役引退した老人で、今は女子高等師範学校の用務員さんみたいな仕事をしています。子爵令嬢・喜子には「庶務のおじいさん」などと呼ばれていました。
いやはや、藤田五郎翁、目力がすごい。
ていうか江戸時代の本物の武士は、年をとっても新しい時代になっても、そこにいるだけで気迫が違うらしい。背筋がピンと伸びていて、歩いていて上半身が全くブレないそうです。
ストーリーは殺しの犯人捜査として進みますが、あっちこっちに捜査員が聞き込みに回るだけで、正直あまり大したことは起こらないです。だいぶ読み進めてちょっとダレてきたところ、ラスト近くになってからアクションシーンの連続でした。
藤田さんの剣、かっこよー
・・・つまり、これが書きたかったんだろな?
そして、黒幕はやっぱりオマエか!!
山縣有朋!!
黒幕っていうか、日本の国を一手に握る大ボスみたいな感じだったな。彼はいつの間にこんなに大物になったのか。
そういえば椿山荘って、山縣有朋の屋敷でしたね。いいとこ住んでたのな〜
小説のおすすめ度合いとすると、実はあんまり
藤田さん(斎藤一さん)ファンにはいいかもしれないが。
あと捜査に協力するために登場した、東京帝国大学で英文学を教える通称「黒猫先生」は、名前は明記されてなかったけど有名なあの人ですね。ホトトギスに小説を発表する文士でもあり、イギリスへの留学経験があるが、そのくせ外国嫌いな先生。
そういうのをクイズみたいに、これは誰だ?って当てるのは面白かったです。
カップルでしょうか。お散歩中に遭遇。