密室法典 | あだちたろうのパラノイアな本棚

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読書感想文、映画感想、日々のつぶやきなどなど。ジャンルにこだわりはありませんが、何故かスリルショックサスペンスが多め。

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前作『六法推理』に引き続き、新刊。

 

 

大学の法学部生で探偵役の古城は、同大学のロースクールに進学し、引き続き細々と学内サークル「無料法律相談所」をやっています。

そこの押しかけ助手になった経済学部の戸賀も、相変わらずファンキーで自由な発想にて古城の良きパートナーです。

 

この巻でも1話完結の短編にて持ち込まれる事件の謎解きをしていきます。

 

ノリは変わらずだけど、正直、面白かったのは前作の方かな。

 

と言うのは、まるで大変な難題のように持ち込まれる事件が、推理を進めていくにつれ「ちっさ・・・」となっていくからあせる

あと、ちょっと内容がくどくなってしまったかも。解説が細かくて、読み解くのが面倒になってきてしまった。

 

でも興味深いテーマはありましたね。

 

まず、NIPT。

新型出生前診断。

 

まだ胎児が妊婦のお腹にいる時に、先天性の疾患を持っていないか調べるというもの。

なぜ「新型」かというと、従来は妊婦の腹部に針を刺して羊水を直接採取するので、流産を引き起こす危険性がありました。これを採血だけの検査にし、危険性と妊婦の負担を軽くしたのが新型です。

 

ただし、結果が陽性だった場合の信頼性は高くないそうで、本来は陽性結果が出たら確定診断をもう一度受けるべきなのだが、それを受けることなく中絶を選択するケースが一定数あるとのこと。偽陽性で、本来は何も異常がなかったにも関わらず取り除かれてしまう胎児がいるのは、やはり問題です。

 

この短編を読んで思った。医者と言っても、善人ばかりじゃないんだなと。医師国家免許を取得して「先生」と呼ばれ、社会的地位が高く高級取りの人でも、人格優れているとは限らないんです。当たり前のことだけど。

 

この事件、古城が推理を披露しているけれど地味だな。結局、人から聞いただけの話で会話で話が進むからかな。

 

 

あとは、バックカントリースキーの話。

個人的に、これってすごい迷惑なので、こういう趣味はやめて欲しいと思っている・・・

バックカントリースキーは、整備されたスキー場ではなく、コースを外れた自然の雪原でスキーをする娯楽です。これさあ、危険だって。それでも遭難した時とか、絶対に捜索隊が出るじゃない。これを趣味でやる人って、やめてほしいよなあ。

 

 

最後の短編『毒入生誕祭』は、心が痛くなるお話だった。

魔女の衣装を着てお客様を接待するコンセプトカフェで働く若い女の子たちが遭遇する傷害事件。

ここでキャストとして働くルナは、推しのホストに大金をつぎ込んでいる。その資金を稼ぐためにコンカフェで働いており、ふと死にたくなったりしてリストカットを繰り返す。

 

同僚のかりんも、何か事情があるらしい。

 

同じく同僚のノエルは、常連の太客がいてプレゼントをもらったり売上に貢献してもらっているけど、他に彼氏がいる。この常連客が店でなんらかの毒物を飲まされて倒れ、大騒ぎになります。

犯人は誰か、動機は嫉妬か、邪魔者の排除か。

 

若い女の子たちが荒んだ生活をしているのは、読んでいていたたまれないですね・・・昔でいう遊郭みたいなもんなのかもしれませんが(コンカフェは売春はないと思うけど)どうしてこう、生きづらい世界から逃れてきて水商売に入るんだろう。

 

あれ?この話、古城は出てきたっけ?

あ、ほんのちょっとだけ登場した。

 

探偵役の影が徐々に薄くなっていく〜

 

 

シリーズとして続く物語と思っていましたが、薄々感じるネタ切れ感・・・むしろ、別のシリーズが始まる予感?!

残念だけどしょうがないか。

 

 

 

 

いい感じの農村風景が撮れました。