この作家さんの小説、初めて読んでみましたが面白いですね!そうか、『法定遊戯』の人か。(読んだことないが)
表紙だけ見るとPOPというか少々チャラいのかとの印象を与えますけど、全然そんなことはない。むしろ事件は複雑だし、身近ながらも意外と深刻だし、結論に辿り着く論点も専門的なので、よくよく思考しながら読みました。満足です。
これは法学部4年の古城が一人で開いている学内ゼミ「無法律」に持ち込まれる法律相談と、その解決を短編として書いた小説です。古城は優秀な相談員なんだけど、人と距離を置いた物言いや過去に大学側と対立した経緯があってゼミ生が次々と辞め、今や無法律は閑古鳥が鳴いた状態。
そこにやって来た、経済学部3年の戸賀という女子学生。
戸賀が持ち込んだ事故物件に関する相談をきっかけに、勝手に助手を名乗って戸賀がいつくようになり、古城と戸賀というデコボコなコンビが学内の法律相談を請け負う・・・
という内容でした。
はっちゃけた性格の戸賀は法律のことはわからないけれど、どうかすると専門知識に捉われて常識的な思考を失ってしまう古城に代わり、大胆な発想の転換から戸賀の方がヒントを与えることも多くて、ああ、やっぱり一般人の感覚って大事よねー、と思いました。
推理の結末は、決してスッキリと胸のすくものばかりじゃないです。双方手打ちみたいな、どうにもならない大人の解決ってのも含まれます。わりと現実的に書かれているな、と思いました。
リベンジポルノ・・・学内で結成した仲間とチャンネルを運営するYouTuberが出てくるんですけど、犯人に鉄槌を下すのが目的だからってそんな過激な行動するかなぁ〜と思った。YouYuberやってると感覚がマヒしてくるのかな。
でも、デジタルタトゥー怖い。
毒親・・・「親族相盗例」について初めて知りました。親が子の、もしくは子が親のカネを勝手に盗んでも窃盗の罪には問えないのね。明治時代の古い考え方を踏襲しているのならば、これは古い法律を改正すべきでないの?
セクハラ・・・許せーん!ムカムカムカ。こいつ痛い目に合わせてやれ、社会的地位を奪って二度とそのツラ見せられないようにしてやれー!(口が悪い)・・・と、わたしが一番ムカつく事件でした。これは二転三転しながらもいい感じな結末になって良かった。
古城の父が裁判官、母が弁護士、兄が検察官だから彼の家庭は法律エリート一家なわけなんですが、家族それぞれの社会に対する責任意識が古城を通して伝わってきて、考えさせられる内容もありました。古城はその中でまだ自分の進路を決めきれず、逡巡しながら人間関係を学び、成長している途上にあります。
面白かった。
〜おまけ〜
好きな相棒・名コンビといえば?
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