ポーツマスの旗 | あだちたろうのパラノイアな本棚

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読書感想文、映画感想、日々のつぶやきなどなど。ジャンルにこだわりはありませんが、何故かスリルショックサスペンスが多め。

4月3日にNHKで放送した「歴史探偵 日露戦争 知られざる開戦のメカニズム」を見たのです。

 

 

内容はとってもわかりやすかったけど、物足りなかったかな〜あせる

 

どうして日露戦争が起きたか?

 

というのを、近年分かった要素などを織り交ぜつつ紹介してました。なんか結局、相手とわかり合おうみたいなシメになってたのはどうかと思ったわ。国際関係のエグいとこをもっと掘り下げて欲しかったな・・・(そういう番組ではないと思うが)

 

 

 

さて、先日読んだ陸奥宗光に続く外交の達人、小村寿太郎です。

陸奥宗光が日清戦争後の講和条約の交渉者なら、小村寿太郎は日露戦争の講和条約締結に尽力した人です。

どんな有能な人物なんだろう〜という期待を持ちつつ読み始める。

 

小村寿太郎は、宮崎県にある飫肥藩(おびはん)の生まれです。宮崎県にはこの人の銅像があったりとか生誕の地が史跡になってたりとか、顕彰されているらしいですね。明治の英雄だもんね。ここもいつか行ってみたい。

 

小村は下級武士の家に生まれたけれど家は貧しく、父親が事業に失敗して(武士の商法ってやつかな)めちゃくちゃ借金だらけの家で赤貧に喘いでいました。

でも秀才だから藩校で学んだのち、文部省の留学生としてハーバード大学で法律を修めたりしてます。

 

帰国後、司法省とか外務省とかで官吏として勤務していたところ、借金取りが家とか職場まで追いかけてきて給料を根こそぎ持っていく。ボロボロのコートを1着を擦り切れても毎日着てる。

 

なんか可哀想・・・ご苦労なさったのねえ。

 

と、思いきや。

彼、家事をせず芝居見物にうつつを抜かすダメ妻をもらったため夫婦仲は最悪で、小村は酒に溺れ女に溺れ、女郎屋に居続けする生活。あれっ?

 

そこを救ったのが陸奥宗光だったわけです。

 

陸奥は彼を北京公使館の代理公使に任命し、「恥ずかしくないように」と新しいコートと大礼服と金時計をプレゼントします。

 

が、小村はカネに困って陸奥にもらった金時計を売っ払っちゃいます。おい。

 

意外と私生活

クズだな・・・ダウンダウンダウン

 

 

でもこれが彼の運命を開き、快進撃が始まるんですね。

北京代理公使なんてヒマな左遷部署だから本を読み漁り、北京在住の欧米人が集まるクラブとかあらゆるところに顔を出してチョコマカ動き回るので、「ネズミ公使(rat minister)」と呼ばれたらしい。背が低くてちっちゃいしね。

いいんかそれで・・・ガーン

 

小説の冒頭はこんな彼のとても尊敬できないガッカリエピソードがこれでもかと記述され、心配になっていたところでした。

 

それにしても日露戦争って、知れば知るほど無謀すぎて危なすぎて、これものすごい国難だったんじゃないか。国家予算の8倍にもあたる巨額の戦費投入。

 

旅順攻撃の頃には弾薬尽きて、

 

「弾がないから送って欲しい」

「もう無いんで節約してくれ」

 

とかいうやり取りをしていたらしいので。なんだよ節約って、意味わかんないな・・・

 

この危うさ、震え上がりました。これに負けていたら日本人総勢、奴隷化されていたのでは。

よく勝ったな。って、ほんとは勝ってないんですけどね。

 

でもロシアも社会主義運動が盛んで、戦争が長引くと国内がまずい。双方、これ以上は戦争を続けたくないという弱みを隠して、アメリカのルーズベルトに講和の斡旋を頼みます。

 

ここで全権として任命され、ポーツマスに赴くことになったのが小村外相。以後の展開は日本側の思惑や入念な下準備、船の旅などすごく細かく描写された物語となっていました。

ここからが本番です。

 

本番が、濃い〜〜

ものすごく濃い〜〜〜

 

もう本当に薄氷を踏むような、慎重な駆け引き。
ロシア側の全権となったのはウィッテで、ウィッテVS小村の詳細なやり取りが続いていきます。
いやーやっぱり、ロシアもそうだけど欧米の国は複雑な外交を重ねてきた長い歴史があるので、とても敵わないんですね。日本みたいな、鎖国から目覚めたばかりの外交初心者は。
 
でも小村は、小さな体で一歩も引かない。
少々汚い手も使うロシア側に対して(外交ではそんなの当たり前なんですけど)日本が使える武器はただ一つ、
「誠実であること」
 
別にいい子ぶってるわけではなく、同じ土俵には立たないってことでしょうか。小手先の技は通用しないので、だったら正攻法で行く、みたいな。

 

しかし最後は、交渉決裂しちゃうんですよ・・・

もうダメだ・・・再び開戦だ・・・

っていう土壇場で届いた、政府からの電報叫び

 

そうか、これでだいぶ譲歩しちゃったのか。

けれどとりあえず、戦争継続は免れたー!!助かった!!

 

しかしうずまき

 

日本の危機を救うという大役を終えて帰国した小村を待っていたのは、「国賊」「売国奴」などという民衆からの罵詈雑言でした。あれだけの犠牲を払って、賠償金がとれなかったわけなので。

けれどそれは、これ以上戦うと存亡の危機だという事情を政府が国民に知らせなかったからです。知らせるとロシアにも伝わるため極秘事項だったので。責めを一身に背負ったのが小村だったわけですね。

 

精魂尽き果てて、まるでボロ雑巾のようになった晩年の小村が痛々しい。本当に可哀想えーん

 

吉村昭さんの筆致は緻密で大袈裟な表現はなく淡々と書いてあるんですが、臨場感があってこんな人間が本当にいたんだなぁとひしひしと伝わります。

 

すごーく面白かったし、勉強になりました。

 

日露戦争怖いよー、夢に見そう・・・絶望

 

 

 

〜おまけ〜

 

いつも行っているブックカフェ風舟さん。

こたつが片付けられてテーブルになっていました。

 

 

今週末のブックマルシェに出店させていただきまーすルンルン
初めてだからドキドキ・・・アップ