総選挙が終わるまででいいから三橋貴明から離れよう | 独立直観 BJ24649のブログ

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流行に浮かされずに独り立ち止まり、素朴に真っ直ぐに物事を観てみたい。
そういう想いのブログです。

 政治に強い関心を持ち、保守派を自認する人の間で、三橋貴明氏の人気は高い。
 三橋氏は政治ブログランキング1位であり、チャンネル桜の水島総氏が全面的に信頼し、最も売れている保守系月刊誌WiLL(ワック)で連載を持っている。
 三橋氏は保守派を自認する人たちから強く信頼されている。
 本ブログも、もともとは三橋氏を応援すべく始まった(http://ameblo.jp/bj24649/entry-11438588391.html)。

 そういう私が敢えて言うが、保守派を自認する人たちは、来月の総選挙まででいいから、三橋氏から離れた方がいい。
 なぜなら、無自覚に民主党を支援することになりかねないからだ(下手をすると共産党の支援にすらなる)。

 安倍総理は、今回の解散を「アベノミクス解散」と名付けた(http://www.sankei.com/politics/news/141121/plt1411210062-n1.html)。
 消費税再増税先送りに端を発した解散だが、これについては今やどの政党も容認しており、争点にはなっていない(なお、安倍総理は、昨日の記者会見で、いつまで先送りにするかについては争いになり得る旨を言う(http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/1121kaiken.html)。デフレを脱却してインフレが昂進しすぎるまでは先送りするという主張が野党から出てくることを、安倍総理は望んでいるのではないか。)。
 争点の中心は、アベノミクスの賛否だ(http://ameblo.jp/bj24649/entry-11954972897.html)。
 安倍総理がこう名付けた以上、アベノミクスを否定する勢力は、否定する理由や対案を語ることを余儀なくされる。

 民主党はアベノミクスを否定する立場だ。
 ではどういう理由で否定するのか。


「衆院解散、12月14日総選挙でアベノミクスの是非問う」 ロイター2014年11月21日

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKCN0J502820141121

「野党は、実質賃金の低下や格差の拡大を踏まえ、「アベノミクスを継続して本当に国民は豊かになれるのか」(海江田万里民主党代表)と訴えていく考え。」

「アベノミクス論戦…民主批判に首相、実績強調」 読売オンライン2014年11月20日

http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2014/news1/20141120-OYT1T50067.html

「 民主党の枝野幹事長は20日朝、地元・さいたま市で街頭演説し、「景気がいいと胸を張る安倍内閣の下で、民主党政権時にはなかった1年を超えて実質賃金がマイナスになる状況が続いている」と述べ、改めてアベノミクスを批判した。」


 民主党のアベノミクス批判の要は、実質賃金の低下である。
 そして、三橋氏も、実質賃金の低下を問題視し、安倍政権を批判し、実質賃金を上げろというhttp://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11811165164.html)。
 「解散総選挙」と題された本日の記事でも、三橋氏は、「円安は以前とは異なり、実質賃金の上昇をもたらしていません。それどころか、輸入物価を引き上げることで、実質賃金下落に「貢献」してしまっていますが、株価を引き上げる効果はあります。何しろ、日本の株取引の65%は外国人投資家であるため、円安になると日本株が外国人にとって「お買い得」となり、日経平均は上昇するのです。安倍総理は、果たして「誰」の方を向いて政治をしているのでしょうか。」と言い、アベノミクス批判をしている(http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11955391219.html)。
 ここで三橋氏は株価が上がっても庶民には関係ないという旨も言っているが、民主党もこういう主張をしているのではないか(共産党の方がこういう印象が強いが)。これについては、三橋氏が支持する麻生太郎財務大臣が、株価上昇によって年金財源が充実し、広く国民の利益になる旨を言っている(http://blog.livedoor.jp/doyasoku2ch/archives/28146635.html)。また、株価と雇用には強い相関関係があり、庶民に関係がある(https://twitter.com/akichi_3kan4on/status/535758015421349888https://twitter.com/akichi_3kan4on/status/535758298964713472)。
 三橋氏のアベノミクス批判は、不当に民主党(および共産党)に力を与えてしまっている。
 ここまでくると、「三橋氏は、果たして「誰」の方を向いて言論をしているのでしょうか。」と言いたくなる。
 三橋氏は、安倍内閣打倒を言い(http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11887014825.html)、民主党の勉強会で講師を務めており(http://minsyu09.jp/policy_study.html)、民主党と反安倍共闘関係に立っている。三橋氏が民主党の方を向いているかどうかはさておき、安倍自民党の方を向いていないことは確かだ。
 それにしても、共産党の志位和夫委員長が、三橋氏の上記記事と似たようなアベノミクス批判をしているような・・・(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-20/2014112004_01_0.html)。

 三橋氏の安倍批判が当たっているならまだしも、当たっていないのが問題だ。
 デフレ脱却過程においては、実質賃金よりも、失業率や名目賃金に着目するべきだ。
 そもそも、実質賃金はデフレの時に上がりやすい。実質賃金=名目賃金÷物価であり、デフレにおいては物価が下がるからだ。
 枝野幸男は民主党政権の時に実質賃金は下がらなかったと自画自賛するが、デフレだったことが要因だろう。

 デフレにおいては失業者が増える。総雇用量と実質賃金には相関関係があり、実質賃金が上がると総雇用量は減る(非自発的失業者が増える)(飯田泰之「世界一わかりやすい経済の教室」(中経出版、2013年)190ページ以下参照)。失業者を減らすには、実質賃金が下がるのがよい。
 安倍政権になって、実質賃金は下がったが、同時に失業率も下がり、4%を下回ったhttp://ecodb.net/country/JP/imf_persons.html)。三橋氏は所得を重視するが、失業率が下がるということは、所得を得られる人が増えるということである。喜ばしい話だ。
 インフレ率と失業率には相関関係があり、インフレ率が高い方が失業率が低い。これはフィリップス曲線で表され、三橋氏も取り上げている(http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11155795052.html)。なお、インフレにおいては物価が上がるため、実質賃金は下がりやすくなる。
 三橋氏は、わが国の完全雇用状態につき失業率2%を目安にするが(http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11574737997.html)、失業率が2%になるまでは、失業率が下がっている限り、実質賃金が下がっていても特に問題ないはずだ。そして安倍政権においては、上記の通り、失業率は下がっているものの、いまだ2%には達していない。ならば、まだ実質賃金は下がっていてもよい状態だ。
 にもかかわらず、三橋氏は「政府は実質賃金を引き上げる政策に舵を切れ!」と言っている(http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11811165164.html)。これは矛盾と言ってよいと思う。実質賃金を上げながら総雇用量を増やせというのは、経済学的にほとんど成り立たない主張なのではなかろうか。
 また、実質賃金が下がっても、名目賃金が上がると、人々は経済活動を活発化させる。この現象を貨幣錯覚という。そして安倍政権になって、名目賃金は上がってきた(http://ameblo.jp/akichi-3kan4on/entry-11895177979.html)。
 しかし、三橋氏は、「「実質的に賃金が低下した。よし! 消費や投資を増やそう!」などと思う人は一人もいないでしょう。」と言う(http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11811165164.html)。これは反経済学と言ってよいだろう。
 三橋支持者は、「経済学者は信用できない」と言うかもしれない。しかし、実は、民主党政権の時、三橋氏は貨幣錯覚について語り、実質賃金は特に気にしなくてよいということを言っていた(日下公人、三橋貴明「アメリカ、中国、そして日本経済はこうなる」(ワック、2010年)220~223ページ)。ところが、安倍政権になると、三橋氏は変節し、実質賃金の低下を強く問題視するようになった(http://ameblo.jp/bj24649/entry-11909293500.html)。

 三橋氏は、安倍政権の経済政策によって実質賃金が低下していると批判するが、誤った批判である上に、自身の従来の主張とも整合していない。
 こういう安倍批判を支持してはいけない。

 三橋経済論が好きならばそれでもよい。
 しかし、現実問題として、三橋経済論が民主党(および共産党)の言葉に不当に力を与える格好になってしまっている。
 三橋氏を好む人であれば、安倍政権の経済政策に不満はあるだろうが、それ以上に民主党には嫌悪感があるはずだ。共産主義も嫌悪しているはずだ(http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11890188890.html)。
 だから、せめて総選挙が終わるまでは、三橋氏から離れてほしい。