画像は別冊太陽249 中原淳一のひまわり (別冊太陽 日本のこころ 249) より引用
コラムニストの尾藤克之です。
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ネットによる影響力はどのようにして生まれるのでしょうか。文章には、「知ってもらう」「理解を深める」「説得する」「記録として残す」など、多くの役割があります。
効果的に伝えるためには「フック」が大切です。読者の気持ちをつかむには、導入部分にフックとなる「何だこれは!?」と思わせるような印象的な話題を用意しないと、次に誘導できません。100 文字、つまり 3 行程度でフックがかからないと読んではもらえません。
私はさまざまな Web メディアで記事を執筆していますが、フックをかけることを強く意識しています。ただし、「フックが大事」といっても、そればかりに意識が向くと過剰な書き方になったり、内容がともなわない文章になったりしてしまうので注意しなければなりません。
フックをかける際には、全体のストーリーと最後にメッセージを用意しておくことも必要です。というのも、最後にメッセージを用意することで主張がはっきりするからです。
たとえば、企画書、プレゼン、セミナー資料も同じことです。さまざまな商品やサービスがあふれているこの時代に、相手に「なるほど!」と思わせるポイントや相手にメ リットを感じてもらうポイント、つまり、フックがないと調子が冗長になり、話を聞いてもらうこともできません。
また、「フックは時代とともに変化するのか?」という疑問があります。約 10 年前、ニュースサイトでコラムを書きはじめた頃の話です。書き方のトレンドを理解するために、著名な日本語学者のテキストを読みあさりました。すると、とあるサイトで以下のような説明がされていたの
を覚えています。
B氏の格調高い文章はお手本として、多くのコラムニストにとってバイブルになるという趣旨だと理解しました。ところが、最近になってB氏を批判する人が多いことに気がつきました。10 年前には「お手本」だったのが、今ではそうではないのです。確かに文章や話し方は時代とともに変わりますから、当然といえば当然のことなのでしょう。
経済学者の野口悠紀雄が、「さらなる」は文法上間違っているので公文書では用いるべきではないと主張しています。また、法学者の星野英一は、「すべき」は文法上間違っているので公文書には不適切だと主張します。
いずれも正しい指摘です。公文書には正確な文法表現を用いるべきだと私も思います。しかし、現実には「さらなる」も「すべき」も、一般的に使用されています。また、小説家、丸谷才一の『文章読本』(中央公論社)には、次のような記述があります。
丸谷は、「決めるのは読者自身」と明言しています。さらに、文章を見極める視点を持つことを推奨しています。では、時代の変遷に左右されない普遍的なお手本とはなんでしょうか?
中原淳一という、昭和に活躍した画家がいます。彼は、少女雑誌「ひまわり」の昭和 22 年(1947)4月号に次のような文を寄せています。
画像は別冊太陽249 中原淳一のひまわり (別冊太陽 日本のこころ 249) より引用
今の時代でも通じるようなクオリティの高いコピーだと思いませんか。時代の変遷に左右されない普遍的なお手本とは、著者の技術的探求の結晶ではないかと思います。そして、時代を経ても解釈が変わることはありません。
つま り、「フックは時代とともに変化するか?」という問いに対する回答は「イエスでもあり、ノーでもある」ということです。最も大切なことは、時代の空気に臨機応変に対応することではないかと思います。
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