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国会のトップである細田博之衆院議長の発言が物議を醸しています。

細田衆院議長は5月10日、東京都内で開かれた自民党参院議員の政治資金パーティーで「1人当たり月給で手取り100万未満の議員を多少増やしてもバチは当たらない」。さらに、「議長になっても毎月もらう歳費は100万円しかない。上場会社の社長は1億円は必ずもらう。普通の衆院議員は手取りで70万、60万くらい」という趣旨の発言をしたことが、複数のメディアで報じられています。

これを受けて日本維新の会の藤田文武幹事長は「民間感覚で照らし合わせて、ちょっとありえないと思う」と批判し、与野党内からも批判する声が上がっています。5月12日午前には「給料月100万円」がツイッタートレンド入りし、「一概に安い高いとは言えないが国民の血税であるという認識がないことは間違いない」「『100万円しか」という金銭感覚。議員の増員を金の問題にしてしまう愚かしさ」などと厳しく非難するツイートが飛び交いました。

■歳費100万円は議員の肌感覚か
現在、国会議員の歳費は月額129万4000円ですが、現在は新型コロナウイルス感染拡大を受け、2割減額の103万5200円となっています。しかし、改正歳費法による期間は2022年7月末までです。期間延長により引き続き2割を削減するという声は上がりませんでした。

筆者は以前、テレビ東京の「永田町特集」に出演する機会がありました。番組では「永田町界隈で暗躍する政治家・秘書・官僚・政治評論家 ココだけの話大暴露」と題して、政治家や、官僚にまつわる暴露話が飛び交いました。出演者は、杉村太蔵氏(元国会議員)、岸博幸氏(元官僚)、伊藤惇夫氏(政治評論家)、筆者の4名です。

番組内では、杉村氏が「手取りが月70万~80万円、手取りのほかに、文書通信交通滞在費というものが毎月100万円支給される。毎月の手取りが70万円として、文書通信交通滞在費100万円を合わせると、年間で2040万円の収入を得ることとなる。任期が6年ある参議院議員の場合は、1億2240万円の収入が、何もしなくても懐に入ってくる」とコメントをしていたのが印象的でした。

これは、杉村氏の肌感覚だと思うのですが、国会議員に取材をすると同じような感覚の人が多いので、「月100万円、手取りが月70万~80万円」と考えている人が多いということでしょう。

 

議員報酬は「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」(2014年6月27日法律第86号)により規定されています。各議院の議長は217万円を、副議長は158万4000円を、議員は129万4000円を歳費月額として受けるとされています。1回生の国会議員でも129万4000円(月額)が歳費として支払われます。

ここで論点になるのは、歳費以外の手当です。文書通信費が毎月100万円、期末手当(賞与)が年額635万円、立法事務費などの必要経費が月額65万円、JR特殊乗車券・国内定期航空券の交付や、3人分の公設秘書給与や委員会で必要な旅費、経費、手当、弔慰金などが支払われます。

また、政党交付金の一部が、各議員に支給されます。国会議員のセンセイ方は事務的に振り込まれるために報酬とは考えていないのでしょうか。しかし原資はれっきとした血税です。

■議員報酬は守られた聖域
政治家と金の問題がクローズアップされると、国会議員の歳費を減らせ(報酬を減らせ)という意見が噴出することがあります。
 

<憲法第49条>
両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

 

詳細は法律によって規定されています。その法律が国会法と国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律です。国会法では、次のように規定されています。

 

<国会法第35条>
議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額より少なくない歳費を受ける。

 

「少なくない歳費」とは、一般職の国家公務員の最高の給与額よりも大きい額の歳費額でなければならないという意味です。国の業務に従事する国家公務員は、特別職と一般職に分かれます。国家公務員と聞くと、省庁で働く行政官や、外交官、税務職員を思い浮かべますが、すべて一般職の国家公務員に分類されます。

一般職の国家公務員の最高額(わかりやすい例なら、トップの事務次官など)よりも大きい額の歳費が国会議員には保障されているということです。歳費は当選回数を重ねても額は変わりません。そして、よく議論になる文書通信交通滞在費には次の規定があります。

 

<国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第9条>
各議院の議長、副議長及び議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、文書通信交通滞在費として月額百万円を受ける。

 

国会議員1人当たり月額100万円支給されます。しかし、領収書の公開などが不要であるため、第2の給与とも呼ばれさまざまな用途に使用されているのが実情です。以前からそのあり方が問題視されていました。国会議員には領収書による精算すら実現されていません。庶民では、ごく当たり前のことが実行されていないのです。

あろうことか、今国会で「国会法及び国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、「文書通信交通滞在費」から「調査研究広報滞在費」に費目が変更されています。名称を変えて問題のすり替えを図ったと解釈できます。国民のためにではなく政治家の権利を守るために国会議員をしているのかと思います。

このようなことでは、格差だけが広がり社会は良くならないでしょう。幸いにも今年の7月には参議院選挙があります。有権者の意思を示したいものです。

■有権者はここをチェックせよ
政治家が建前と本音を使い分けること、これは大切なスキルです。しかし、有権者にとって裏切られたような印象を残すことは好ましくありません。信頼感が揺らいで政治不信につながる危険性があるからです。

解釈で押し切っても有権者は納得しないでしょう。政治家の説明は具体的でなければ説得力がありません。今後、選挙がらみの報道が増えてくると思いますが、政治家のさまざまな発言の裏を読み解くと以下の通りです。

<善処する>
「善処します」は前向きイメージととらえがちですが、誤解を招きやすい言葉です。「その状況に応じた対処をする」という意味になりますが、保留の可能性があることについても「善処する」という言葉を使うことはよくあります。


<対応を協議する>
「対応を協議する」もよく耳にする言葉です。話し合うという意味がありますが、協議するだけですから具体策が見出されるとは限りません。政治家の「対応を協議する」は「話し合っただけ」という保留の意味がありますから注意が必要です。


<真摯に受け止める>
「真摯に受け止める」もよく耳にする言葉です。本来は、真面目に取り組むことを意味しますので、不祥事やクレームを受けた時などに使用されます。しかし、この言葉も、「受け止めただけ」という保留の意味がありますから注意が必要です。

有権者は政治家言葉の真意を理解しなければいけません。「善処する」「対応を協議する」「真摯に受け止める」には保留の意味があります。結局は「何もしない」「先延ばし」「時間の経過を待つ」などの否定的なイメージしかありません。

■保留を意味する言葉は数多い
保留を意味する政治家言葉は他にもあります。「適切な措置」「喫緊の課題」「諸般の事情に鑑み」「痛恨の極み」「誠心誠意」「包括的に考え」「可及的速やかに」などです。選挙区で政治家言葉を聞いたら、候補者へ具体的に聞いてみるといいでしょう。

たとえば、「議員数削減は事情を鑑み検討して参ります」という候補者がいたら、「それは削減するのですか?しないのですか?」と2択で確認するのがいいでしょう。「真摯に対応する(検討する)」と主張する候補者がいたら「何に対して真摯に対応するのか」を確認しなければ本当のことはわかりません。

筆者なら「議員向けのJR無料パスの電子化に賛成か否か」を聞きたいところです。JR無料パスには議員の氏名や有効期限が記入されていますが顔写真はありません。落選後の回収義務もありません。自動改札を通るためのチップが埋め込まれているわけでもありませんので、議員の個別利用記録も残りません。現状は不透明極まりない代物なのです。

なお、国会議員は公務員に含まれます。公務員は国民全体への奉仕者ですから利益誘導は許されません。歳費や手当が税金によって支払われる以上、仕事に見合うかどうかを国民一人ひとりが注視しなければならないのです。
 

※本記事は、5月12日に東洋経済オンラインに掲載した「細田議長「給料100万円しか」非難される当然の訳」をブログ用にリライトしたものです。

 


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