はじめての言語ゲーム
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執筆を依頼されてから20年経っていたのだという。元々は「はじめての構造主義」の第2弾となる予定だったそうだが、似た様な本になるのが嫌で時間を置いたとのこと。その間にヴィトゲンシュタインの講義もしていたし、言語ゲームに関する著作も出してはいた様だが、それ以上にかなり雑多な分野に首を突っ込んで著者に考え方の変化はなかったのだろうか。仏教に応用してみせたのはその成果かもしれないが、かといって言語ゲームを身近に感じることはなかった。数式も禅問答もあまり関わりたくはない世界だ。分かりやすいという事は分かりにくいものである。ヴィトゲンシュタイン個人の人となりを知るのは面白いものである。ヒトラーとの邂逅も奇妙だが、その才能と不器用な生き方との乖離は興味深い。
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横浜開港と宣教師たち
![]() | 横浜開港と宣教師たち—伝道とミッション・スクール (有隣新書) 横浜プロテスタント史研究会 有隣堂 2009-05 売り上げランキング : 433391 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
有隣堂の有隣新書ね。出版部は戸塚にあるのか。新書ラインナップは地元系が多いな。横浜も今年は開港150年ということで、盛り上がってるのか、放り投げ市長のせいで、盛り下がってるのか微妙な所だが、開港150周年ということは、開教150周年ということか。ただ、この「横浜プロテスタント史研究会」というのは1981年にヘボン来日120周年を契機に始まったそうで、執筆者はみな年季の入った人ばかり。57年生まれの小檜山ルイを除けば、47年が一人いるだけで、あとは皆、戦前のお方たち。新規メンバー補充などせずに、30年近く活動してきたのだろうか。関東学院関係者が多いが、皆さん信者みたいだから、まあ偉人伝集みたいなもの。横浜は開港の経緯からいって、アメリカのシマだから、カトリックよりプロテスタントが優勢。伝道者をどう評価するかは、現在的価値観で言っても始まらないのだが、当時の事情では貧乏人をカネで釣るというより、先鋭的な人間を先進文明で釣るといった作戦が効力を発揮した様だ。後は改宗した先駆者が無知な大衆を啓蒙して現地化するというのが、「野蛮国」における伝導パターンなのだが、日本がそうならなかったのは、明治維新以降の国民国家化が先に来たからであろうか。
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ドイツ参謀本部
![]() | ドイツ参謀本部-その栄光と終焉 (祥伝社新書168) 祥伝社 2009-07-28 売り上げランキング : 37076 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
渡部昇一も来年は80の声を聞く事になるのか。新書も最近は祥伝社とかベスト新書だけど、この原版は1974年の中公新書。その間2回単行本で再刊があったらしいが、新書は35年ぶりに他社で復活という事らしい。それだけ名著だったのか知らないが、田毋神が推薦の言葉を寄せていて、その筋ではこの著者の本は未だに寝強い事情があるのかもしれない。ただ、復刊には著者の別の思惑があった様で、中公を絶版にしたのもある事情があったからだという。それは秦郁彦がこの本を剽窃だと批判したからだそうで、それに対する反論とお約束の南京とか従軍慰安婦を巡る「歴史認識」の持論を巻末に付けている。渡部と秦とは細部を除けば、大まかな「歴史認識」では一致していると思うのだが、それだけに余計に悔しかったのだろう。「剽窃」の部分より、この「ドイツ参謀本部」が著者の出世作と書かれたことに怒りが生じた様で、自分は「知的生活の方法」も学術業績には入れた事がないなどとしている。剽窃で出世したなどと言われれば誰しも怒るだろうが、横のものを縦にしたり、大著を新書にする技術はそれこそ「知的生活」として認めても良さそうなもの。で、肝心の内容より、その辺の事情の方が興味深かったということなのだけど。
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グリーン・ニューディール
![]() | グリーン・ニューディール—環境投資は世界経済を救えるか (生活人新書) 日本放送出版協会 2009-06 売り上げランキング : 1908 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
これもNスペ新書。オバマの目玉政策がこのグリーン・ニューディールってヤツであることはこれまで関連書籍を読んできた通りなのだが、放送は例によって、アメリカはこれだけ進んでいますよ。世界の取り組みもスゴいです。翻って日本は完全に遅れてますといった内容だったらしい。アメリカにしても、景気刺激策の8割が環境関連という韓国や、同じく4割で2兆円規模の中国にしても、同分野が正にニューディールであるという背景があってのことだろう。日本はわずか2%の支出で大幅に遅れているといっても、それは未開拓の原野にカネをバラまくのとは訳が違う。環境も投資が白熱すればバブルも起こるし、実体経済との乖離が始まれば、行き過ぎた環境投資が、逆に環境破壊を招くこともあろう。石油エネルギー産業の成功体験をみれば、誰しもが次世代の環境スタンダードを握る事を夢みるだろう。環境をニューディールとして発展させることが、果たして地球の環境を守る事に成るのかという根本的問題が置き去りにされている様な気がする。
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