ローマ喜劇
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たしかにギリシャ悲劇に比べて、ローマ喜劇というのは、あまり聞いた事がないのだが、ドラマの源泉がシェイクスピアにあるとしたら、喜劇の源泉はローマ喜劇にあるというものらしい。著者は卒論と修論までは、その代表的作家であるテレンティウスをやったらしいが、その後すっかり足を洗い、ラテン語プロパーとして生きてきたという人らしい。今回は定年を迎え、やはり原点に帰ってきたかという感慨深いものらしいが、中公お得意のガチンコ研究論文新書374頁は、その方面の知識が皆無な人間には辛いものだった。新書のクセに通勤時間で読了できなかったし。ローマ喜劇は強姦好きという記述があって、ちょっと驚くのだが、この時代に女性の人権など考慮されなかったろうし、処女を重んじる宗教があった訳でもなかろうから、案外身近なテーマだったのかもしれない。同様に男色も珍しくはなかった様だが、後年、「教育的配慮」からそのシーンが取り除かれる時代があったそうな。いずれにしても今日的価値観では喜劇にしては性的な感じがするが、喜劇というのは本来、人間の色、欲を扱うものであったことは窺わせる。日本でも昭和30年代くらいまではフランキー堺の映画でよく、性がテーマになったりしてたし、90年代までの香港三級片などは、その多くがコメディであった。何故にセックスは悲劇のドラマで語られる様になったか不明だが、これも処女崇拝の宗教的背景が関係しているのだろうか。
★★
世間さまが許さない!
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結局、日本社会批判じゃねえか。
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ポケットの中の宇宙
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この「宇宙エレベーター」の人はマスコミに取り上げられる頻度も高いのだが、初のエッセイ集か。この種の外国人は日本語だと、論文を書く方がエッセイを書くより楽だと思うのだが、これは「語り下ろし」っぽいね。先日、朝日の土曜版では酒を飲むのが大好きとか出てたのだが、ギリシャ系トルコ人だったのか。ドイツ生まれの方が逆に保守的になるとも聞くけど、正教徒なのか、ムスリムだけど世俗化してるのかは不明。ただ、日本の魅力として、宗教に気を使わないですむということをあげていて、アカの無神論者ではないんだろうけど、宗教に対して否定的であることは隠してない。トルコがイスラーム政権になったら、トルコ人初の宇宙飛行士候補を剥奪されるかもしれないけど、アメリカから国籍をとってくれと頼まれるくらいな人だから、トルコに見切りをつけるのはわけないだろう。そんな世界各地からラブコールを受ける存在でありながら、トルコ国籍を保持しながら、日本に住むことを選び、トルコ男にしてアラフォーで独身というのも、宗教に限らず、既存の価値観に対するアンチテーゼが強い人なのかと思う。まあ、そんな性格でもなければ、タイムマシンとか宇宙エレベーターを作ってやろうとは思いつかないのだろうけど。
★
ピーター流生き方のすすめ
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この人はどうも傲慢な感じがして好きではないのだが、ジュニアに対しても、教えて諭すみたいな姿勢か。テレビでサッカー視る暇があればその間、本読んだり勉強しろというのも、こうるさい教育パパみたいだけど、私の様に15分くらいでこの本を読めるならまだしも、ジュニアの諸君は読むのに1時間近くかかるかもしらんから。その方が時間のムダだとも思う。例によって10何か国語だかを喋れる自己マンがあるんだけど、この人の様に何カ国も長期滞在してれば、程度の差はあれど、数カ国語は喋れるというレベルまでいくもんではなかろうか。どうもこういうマルチリンガルの人を日本人は持ち上げてしまう癖があるのだが、ヨーロッパの少数民族で、東側から西側への亡命を経て、アジア行きなんてキャリアなら、母国語に英仏独露は普通に出来るんだろうなという気もするし、そんな人は腐る程いるのだろう。ただ、米国や欧州にいてもその辺には大した価値がないから、それを最大限に評価してくれる日本に来たということか。「国家の品格」とかを槍玉にして愛国心を批判したりしてるのだけど、他国より自国(自文化)を上にみてるのはこの人も一緒ではないかな。少なくとも、日本に惹かれてとか、日本から何か学ぶということではなく、あくまで自己実現の場として日本を選択しているみたいだし。
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チベット
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クセジュのチベットものはこれが初めてなのかな。原書は2008年となってるから、去年の騒ぎで急遽出されたものなのだろう。フランスなので、当然、フリチベ派なのだが、ああいうレジスタンスに立ち上がる民は大好きみたいだね。ただ相変わらずウイグルとは温度差があるのはアルジェリア経験があるからなのかな。ベトナムはうまくアメリカに引き継がせたけど。ただ、著者はチベット問題を専門にやっている人みたいで、最近の王力雄の言説にまで言及がある。魏京生やハリー・ウーにもチベット問題への発言があって、六四亡命組にもチベットと「共闘」する動きはあった様だが、王力雄のチベット理解には到底及ばないものではあろう。ダライ・ラマやラビアさんの来日にはうるさく内政干渉する中国だが、王力雄の来日講演には何も言わないのか。翻訳はまあ読みやすい方だが、ラサの人口の95%が中国人とあるのは、漢族が95%を占めるという意味なのだろうか。ネパール人やインド国籍のチベット人も結構いるから、外国人が人口の5%を占めると言っても割は合うと思うが、これは第一次史料をあたらんと意味が分からんね。昔はよく自治区の95%はチベット族という数字が宣伝されたけど、今はラサの95%は「中華民族」という風にでも変わったのかな。
★★
オバマの言語感覚
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オバマ本も初期の頃からよく出ていたのが演説本。実際に既存の候補者と比べてあらゆる不利な背景を持ちながら、演説一本で登場して、大統領にまで登り詰めたのだから、その秘密を探るに演説は鍵に成るのだろう。ただ、CD付きとか英語学習系のものが多かったので、マジメに勉強する気など、さらさらなく、ただ読み物を欲していた私は手を出してはいなかった。そんな中、ようやく読み物系が新書で登場したので読了。著者は日本の政治家の言語感覚を分析した前著が結構評判になった人だが、アメリカの大学で教鞭をとってるらしく、英語の演説もお手の物の様だ。よって麻生とオバマの比較などもしているのだが、この辺はマスコミがよく酷評のネタに使うところ。しかし、言語学者である著者はオバマに比べて麻生が酷いといったことではなく、あくまでその言語感覚の違いを指摘してくれる。違いが顕著なのは「私」か「我々」かという主語の部分だが、演説で「われわれは~!」とやるのは、日本では極左の専売特許なので難しいところだろう。同様にマケインやペイリンの言語感覚の分析も行っているのだが、オバマには意外と日本的な言語感覚の部分もあるらしい。なんだかんだいっても、結局はスピーチライターが書いてるんでしょという指摘も想定内で、著者によると。例え他者が作った言葉で、内面から滲み出るものがないと、聴衆の心には響かないという。歌手も往々にして他人が作った歌を歌う訳だが、それを自分の曲として消化してるからこそ成立する舞台であろうとのこと。アメリカの大統領はエンターテイナーであると理解するのが妥当かと思うが、日本ではやはり「自分の言葉」に拘る向きが強いね。それで成功したのは角栄と小泉くらいだけど。
★★
ユダヤ人とダイヤモンド
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ユダヤ人の話なのか、ダイヤモンドの話なのか、どっち付かずになっている感じ。それもダイヤモンドはユダヤ人が支配している産業ではなく、デビアスもユダヤとは言い難いという結論に沿った結果と思われる。実際にダイヤモンド業界はインド人がマジョリティーになっているし、アーネスト・オッペンハイマーがキリスト教に改宗して以降、ユダヤ人の間ではデビアスはキリスト教系の会社と見なされているとのこと。実際にも社員はキリスト教徒が多数を占めている様だ。デビアスのカルテルも欧米の独禁法の前に屈服を余儀なくされ、いよいよを持って、ダイヤモンドの流通がユダヤ人どころか、特定の集団組織に支配されているということもなくなったらしい。ソ連がデビアスに低級の石しか供与せず、デビアスがその対抗で低級の流通価格を低く抑えたところ、あおりを食ったオーストラリアが打撃を受けて、低価格でカットするインド大量に供給する様になったという話は有名だが、アントワープも今やインド系の進出が著しいのだという。ただし、インド系が鉱山レベルまで押さえているという話はあまり聞かないので、未だ庇を貸して母屋を取られるという段階には至っていないかと思われる。その流通の大部分は加工貿易によるものだろう。日本は欧州を上回り、米国に次ぐ世界第二位の市場だそうだが、デビアスにとっても最も優良な市場であろう。結婚指輪は給料の三ヶ月分というPR作戦はもろくも崩れてしまった様だが。なお、最近話題の「紛争ダイヤ」については触れられていない。アンゴラやコンゴがカルテルと関係なく輸出してきたのは、「旧社会主義圏」の時代からのことかと思う。最近の「紛争ダイヤ」追放キャンペーンはやはりデビアスがからんでいるのだろうか。
★★
ルポ産科医療崩壊
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元オーマイニュース編集部らしい。
死活問題で死活問題解決かな。
★★
世界金融崩壊七つの罪
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これも今更なんだけど、真犯人はサブプライムローンだと万人が納得させられているせいか、金融危機犯人探しはどうも決定打が見つからない。その中で、この本の様にグリーンスパンを犯人の一人と名指したものは結構珍しいのではなかろうか。かなり容赦のない批判を浴びせているのだが、それ以上に、グリーンスパンを祭り上げたり、構造改革を主張してきた学者やジャーナリストの責任を追及しているのだが、イケイケで動いていた経済を後退させる様な言説を張る事は難しいものがあったろうし、例え誰かが小泉の首をとっていたとしても、世界金融が崩壊するなか、日本の様な国がひとり無傷でいられた訳もない。サブプライムローンの問題も突き詰めて考えると、貧乏人には家を持たすなということになってしまうし、結果として信用偏差値が支配する夢のない社会になってしまうのなら、他人のカネを動かして飯を食ってる人間を懲らしめただけでも意味があるというもの。もっとも真の悪道は此の期に乗じて大儲けしている訳で、まずはそうした連中をあぶり出してあぶく銭を返却させたい。グリーンスパンや小泉なんて所詮は連中が動かしている駒に過ぎないんだろう。
★★









