現代アメリカ宗教地図
![]() | 現代アメリカ宗教地図 (平凡社新書) 平凡社 2009-08 売り上げランキング : 214571 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者はシカゴ大博士で大正大の比較宗教学の先生だそうだから、このテーマにうってつけの人なのだろうが、小難しい宗教学的アプローチを一切省いて、ユーチューブでアメリカの宗教地図を描いてみようという新しい試み。ユーチューブは新書でソレ自体がテーマになって以降、大統領選に関連したものも新書で一冊出たが、遂には宗教学の史料として一冊の新書を構成できるほどになったか。元々、宗教は宣伝してナンボの世界だから、誰でも投稿でき、かつ規制も緩いとあっては、正にユーチューブは宗教の為に用意されたメディアであると言っても過言ではない。その辺は比較宗教学の博士も了承済みなのだろうが、学生が文献からアプローチすることの限界を感じたのかもしれない。新書という世界もまた、取り立ててて優秀でもない学生や社会人に一般教養を授ける媒体として業界では認知されているのだろうから、ユーチューブと新書とは相性が合うのも必然なのかもしれない。こうなると、宗教と学生、新書がユーチューブで一本の線に結ばれて来るのだが、五月病の大学生を主たるターゲットとしてきた学園カルトにとっては、ユーチューブは使い勝手が良い物では無さそうだ。創価とか統一の関連動画には反対、批判、侮蔑のレスが必ず付くだろうし、数分のパソコン画面で洗脳されるほどのメディア弱者は今の時代少なくなっているだろう。むしろ、或る程度の規模がある教団にとってはむしろ脅威ともいえるものだが、ユーチューブ発で生まれるカルトは生まれつきのアドバンテージもある訳で、事実、人気を呼ぶにつれ、だんだんと「宗教化」してくる投稿者というのも出て来ている。既存宗教でないから、比較宗教学の領域ではないのかもしれんが、そうした宗教の「萌芽」みたいなものも取り上げてくれると面白かった。
★★
ノモンハン事件
![]() | ノモンハン事件—機密文書「検閲月報」が明かす虚実 (平凡社新書) 平凡社 2009-08 売り上げランキング : 12615 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
小林英夫がノモンハン事件とは畑違いの様にも思えたのだが、在外日本企業の研究から満鉄研究、日中戦争に移行した様に、ノモンハンも最近取り組んでいる吉林省所有の満洲国の「検閲月報」を読み解く作業の延長線上にあるものらしい。ノモンハン事件に関しては辻政信のソレから最近の田中克彦の岩波新書まで、当事者体験記も小説もノンフィも入れ乱れてあるし、ソ連やモンゴル側にも研究書が出ているのだが、そうした豊富な史料を丹念に当たっていることも窺える。ただ、さすがに文芸社のヤツには手を出してはいなかったか。そうした作業から見えて来るのは、如何に日本が虚実の大勝利をアピールし、「戦犯」とも言える辻が如何に弁明を試みているかというところなのだが、その結論自体は事件の評価としてはオーソドックスなものとも言える。検閲月報にあるのは兵士の私信であるから歴史的発見がそこにある訳ではないのだが、検閲官の裁量によって、見逃された手紙もかなりある様で、中国としては、手紙の中身より、検閲システムの研究の為に修復に力を入れたのではないかとも勘ぐってしまう。藤田嗣治とノモンハン事件の関係は興味深かった。藤田が描いたノモンハンの戦場画は2種類存在したとのことで、「事実」を描いた方は今日、行方知れずだという。
★★
昭和の車掌奮闘記
![]() | 昭和の車掌奮闘記―列車の中の昭和ニッポン史 (交通新聞社新書) 交通新聞社 2009-08 売り上げランキング : 130460 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
また新しい版元の新書が出たか。
中身は随分昔のもののリサイクルみたいだけど。
★★
現代思想の断層
![]() | 現代思想の断層—「神なき時代」の模索 (岩波新書) 岩波書店 2009-09 売り上げランキング : 13027 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
岩波新書お得意のベテラン名誉教授もの。1929年生まれか。60年代にドイツに留学してアドルノに師事したというドイツ哲学の人らしい。そのアドルノに加え、ウェーバー、フロイト、ベンヤミンの思想の足跡を辿っていくものだが、ウェーバーはアメリカ体験、残り3人はユダヤ性との対面といった、ドイツ思想の内なる異文化経験を著者流に解題していく。久々に岩波新書らしい哲学新書だが、随所で比較されるハイデガーを含め、もはや「現代思想」とは言い難い面々なので、ニーチェの宣告に倣えば、「神も思想も死んだ」状態に現代は置かれているのではなかろうか。もしくは「思想が死んで、神は生き返った」とでも言うべきか。ドイツ思想の観点から見れば、日本の文化に西洋の普遍はないはずなのだが、「神」を受け入れなかった日本人が、「思想」を自明のものとして受け入れるのも奇妙なことである。ドイツ思想における神と思想の葛藤を教養に昇華させた先人たちは、廃仏毀釈による精神の荒廃との類似性をそこに見つけたのだろうか。
★★
邱永漢の「予見力」
![]() | 邱永漢の「予見力」 (集英社新書 514A) 集英社 2009-10-16 売り上げランキング : 1073 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ワイン野郎が銭ゲバを語るではないけど、玉村が永漢の中国視察ツアーに参加して、話を聞いたものを本にしたもの。永漢も、もう86歳というから、さすがに自分で書くのはしんどくなったまでのことかもしれんが、まだまだ金儲けはしたいみたいだね。その立志伝は十分過ぎるほど書いてきたし、金儲けの著書は何冊出してるのか自分でも分からないくらいだろうから、ワイン通が代筆したところで大して変わりはないのだけど、ちょっと気になる発言が幾つかある。まずチベット、ウィグルの独立には反対の様で、漢族は規制などしないでどんどん移民を送り込み、中国に同化させろと言う。もうとっくに縁を切ったのだろうけど、かつて参加していた台湾独立運動の流れも汲むに日本の台湾同郷会会長はチベット、ウイグルとの共闘を宣言しているというのに、カネに目が眩んだ欲ボケはすっかり中国に恭順してしまったか。もうひとつは参議院選に出馬した経緯についてだが、日本が大陸と関係を深めるのにストップをかけ、台湾の援護射撃をする為だったとしている点。その為に日本国籍をとったそうだが、この爺さんにかかれば、日本の国会議員も祖国発展の道具に過ぎなかった様だ。おまけに、恭順した国民党も、台湾でビジネスのトラブルを抱えたりして、今では大陸に全てをかけていることは周知の通り。ツルネンは知らんが、蓮舫や白眞勲なんかもやはり日本ではない「祖国」の為に貢献しようと思って出馬したところはあるんだろうな。白なんかは完全に確信犯だけど、蓮舫や永漢を支えるだけの「在日中国人パワー」はまだないか。民主党政権がこのまま続けば、やがてなし崩し的に韓国籍の国会議員とかが誕生するんだろうけど、それで良いのかな。
★★
アメリカ世界を読む
![]() | アメリカ世界を読む (創成社新書) 創成社 2009-09-10 売り上げランキング : 280422 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
創成社新書はようやく今頃になってオバマ本か。メジャー各社とマトモに張り合っても埋没するだけだから、わざと時期をずらしたのかもしれないけど、相変わらず書店では見かけない。「中華世界を読む」はまだ出ていないのだろうか。中身はオバマ政権紹介と宗教、アメリカ史の三本立て。どれも定番なのだが、アメリカの歴史と社会を紐解けばオバマ大統領の誕生がどれだけ革命的なことかと分かるという仕掛け。たしかに就任前は暗殺説も根強かったのだが、いざスタートしてみれば、一夜にして世界が変わるなんてことはまるでなく、鳩山政権もそうだが、それが歴史的な政権交代であっても、成熟した国家では政権交代時に大きな混乱などは起きないというものである。ブッシュはクツを投げられる心配がない日本シリーズの始球式ぐらいしか海外では出番が無いが、これが他所の国だったら、前大統領たるブッシュは今頃法廷に立たされていることだろう。しかし、ピノチェトが引退後にイギリスに入って捕まった様に、戦争犯罪人として訴追されるとブッシュも他国で拘束されることなんてことがあるのかな。セルビアみたいにオバマがブッシュを差し出すなんてことはないだろうけど、江沢民は引退後にあまり外遊をしていないみたいだね。
★★
裁判員必携
![]() | 裁判員必携―批判と対応の視点から (ちくま新書) 筑摩書房 2009-08 売り上げランキング : 165755 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
新書界は反対一色の中で珍しい制度肯定派かと思ったら、反対だけど、決まったからには頑張ってくれということらしい。
★★
ヒトラーの経済政策
![]() | ヒトラーの経済政策-世界恐慌からの奇跡的な復興 (祥伝社新書151) 祥伝社 2009-03-27 売り上げランキング : 5176 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
こういう本はやはり欧米では出せないのかな。日本の「植民地近代化論」とも通じるものもあるけど、一つでも認めてしまえば、絶対的悪魔化するのは困難ということで、ナチスの功績もホロコーストという大海に沈められてしまうのである。ドイツ人は日本人と違って徹底的に反省し、謝罪しているという「神話」とは裏腹に、ナチスの遺産が戦後ドイツの復興を早めたことは、大日本帝国の工業基盤が戦後日本の経済成長を支えたという事実と同じ構図であり、「ナチスと決別した民」がナチスが築いた社会基盤に安住しているということなのである。格差社会是正の為にユダヤ人を追放したというのは逆説的だが、アメリカにしてもイスラエルにしてもユダヤ人にとって格差社会こそが己の生存圏であるという事実は否定しようもない。マジョリティの平等社会が実現したら、異分子であるユダヤ人は排除されるか、少数民族として亜流の暮らしを強いられる訳だが、ナチスの経済政策がユダヤ人の経済感覚と相容れないものであったことは考慮に値するだろう。もちろんだからといってホロコーストが許されるはずもないので、そんな陳腐な言い訳はしないが、ナチス政権誕生を許したドイツの第一次大戦後の経済危機が、ベルリン・オリンピックで頂点を迎えるまでになった事情を経済学者ではなく、ライターが解き明かさなくてはならないというのも考えさせられるものがある。別にこの辺は学術的アンタッチャブルになっている訳でもないだろうけど。
★★









