大佛次郎の「大東亜戦争」
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これも再評価か。
ダイブツ次郎でも間違いじゃなかったんだな。
★★
シベリア抑留
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「戦艦大和」に続いて、岩波新書のタブー崩しを担ったのは67年生まれの毎日記者だが、この世代より上の起用は色々と軋轢がありそうだな。このテーマに関しては先にジュニア新書の方で露払いがあったのだけど、こちらは全体像を捉えた総合編。左翼メディアの常として、拉致問題や東京大空襲同様、抑留は日本政府の関与があったという結論に導かれてはいるのだが、かといって、ソ連の行為を免罪する訳でもなく、その不当性も不法性にも十分踏み込んでいる。崩壊後20年近く経ち、ようやく岩波もソ連の亡霊から解き放された様だ。抑留協も平均年齢が85を超えるというのだから、洗脳組が影響力を行使出来る訳もなく、その先棒を担いだ「岩波文化人」を遠巻きに批判した箇所もある。一方、崩壊しなかった中国は革命の代を継いで、「中帰連」から「撫順の奇跡を受け継ぐ会」なるものを組織させたが、その中心人物を岩波に送り込む事に成功したから、当分、中国で処刑された日本人についてなどは岩波で扱うことはなさそうだ。まあ中国もスターリン評価に関しては今になっても保留したままだから、間接的にはシベリア抑留についても中立ではないのだが、ロシアの情報発掘が進めば、このテーマについても中国の「協力」が浮かび上がってくるのかもしれない。
★★
愛国と米国
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この人は実体験を書いた公安ものの新書などはすごく面白かったのだが、本人も認めている通り、アメリカについては「何も知らない」ため、観念的な話に終始してしている。実際、左翼にとってのアメリカと違い、右翼にとってのアメリカは打倒すべき眼前の敵ではないし、イラクや北朝鮮ほど大きな関心は無い様だ。そこで、やはり興味深いのは実体験たる「愛国」の方なのだが、もっぱら小沢遼子とか小田実といった「旧敵」の賞賛をしていて、田毋神とかに関しては批判的。もはや内実ともに「転向」している感じだが、同時期に同じ平凡社新書で出た雨宮処凛の本と自分語りの感じがよく似ているな。聞き書いたのが、同じ担当者なのかもしれんが、その左旋回ぶりといい、かつて一世を風靡した新右翼の旗手も思想的には雨宮処凛なみに成り下がったか。しかし、映画の「靖国」が「愛日的」というのは監督の李某の言葉をそのままオウム返しにしただけじゃないか。あれが中華愛国主義であることが分からんところをみると、イラク、北朝鮮同様、簡単に籠絡されてしまうぞ。イラクと北はネタで済むだろうけど、「日本右翼分子」から悔い改めて「中日友好分子」になったとか宣伝される様になったらおしまいだね。
★
医療のこと、もっと知ってほしい
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佐久病院、マッチアップ、「シッコ」で締めか。
まあ、あまり現実を突きつける必要はないけど。
★★
「中国問題」の核心
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「内幕」に続いての「核心」だけど、同じちくま新書で似た様なタイトルだから、出ていたのを気づかなかった。実際起きた(かどうか分からぬが)エピソードがつかみになっているのも前と同じで、何か既読感も覚えたのだが、これはホントに「核心」だけを追った見事な出来栄えだ。尖閣、毒ギョー、対日、チベット、六四ともう既に言い尽くされている感もある問題を別の切り口で解き明かせてみせる手腕はさすが。例えば1983年の「全学連訪中団」。香山健一を団長とする転向したかつての闘士一団は中曾根の密命を携えて、胡耀邦と面会した訳だが、その席で、胡啓立訪日と、日本人青年3000人訪中の交渉が行われたという。周知の通り、この3000人問題は後の天安門事件にも繋がってくる。この点について教科書的には中曾根ー胡耀邦ラインが言及される事が多いが、その素となった全学連人脈については、香山が早世したこともあり、あまり語られる事は無い。何でもプラハに本部があった国際学連のアジアの参加団体は共青団と全学連だけだったという。胡啓立は当時副委員長だったそうで、中ソ対立の影の下、プラハやモスクワで中国と日本の「主義者」同士が交流を深めていたらしい。こうなると香山を始め、全学連幹部の「転向」も日本の政権内部に人脈が欲しい中共の指令の様にも思えるが、香山などは日本の「転向文化」を体現した最後の世代なのかもしれない。現在の共青団人脈に、全学連の様な苦楽を共にした日本のカウンターパートがいないのが、胡錦濤のつらいところだが、最近になって自分が応対したかつての「3000人」参加者の人脈をも模索しているという。今、「3000人問題」が亡霊の様に登場するのも、それが天安門事件後に鄧小平に重用されて台頭した江沢民一派と共青団一派の対立に関係してくるからであって、ここに軍部の揺さぶりとしての反日における東シナ海問題とも繋がる。一方、六四後のチベット弾圧で台頭した胡錦濤の道を忠実になぞっているのが王楽泉であり、王を切ることも、対日融和策を切る事も、胡錦濤にとっては自分を登用してくれた胡耀邦と鄧小平を否定するということを意味する。そうなると日本は習近平ではなく、李克強が後継に指名された方が都合が良いのだが。習が日本に接近するのも、胡耀邦への揺さぶりの面が隠されているのだろう。いずれにしても、中国は「大国」として日本との関係は重視せざるを得ない。中国の国内問題の都合だけでカードを切られて、右往左往するのではなく、日本はこちらの側にカードがあることを理解すべきであろう。
★★★★
国境なき医師が行く
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「国境なき医師団が行く」という本は既に出ている様だが、これは個人に特化したものなので、このタイトルで良いのだろう。ということで、今やフランス共和国帝の体制側に組み込まれた団体に参加して、リベリアに行った医師の岩波ジュニアなのであるが、偉い人の教訓話という感じが受けない面白い本であった。著者は自分の医療行為の失敗をも綴っている。昨日も在米医師のを読んだし、今まで医師の書いた本をかなり読んで来たが、意外にこういうことが書いてある事は少ない。というか記憶に無い。これも日本の医者の「父権主義」とか、訴訟沙汰を避けることや患者の秘密を守るということもあるだろうが、医師の自己顕示欲とも関係しているのだろう。また、英語力のハンデで帰国させられそうになったとも率直に書いており、これも医師の海外ものとしては珍しい。というか自分に英語力が無いということを書いているものは、誇示するものは多くとも、今までのものの中では記憶に無い。医師は職業柄、英語で診療行為くらいはできるものなのだろうと私も思っていたのだが、外国人旅行者の付き添いで、都心の大学病院とかに何度か行った経験からいうと、実は平均的学生レベルと大して変わらんのではないかという気がした。連れて行った患者が女性だったので、診察室まで連れて行って、後は任せようとした時など、「君い、困るよ。一緒にいてくれなきゃ」とか怒られてしまって、逆に驚いたこともあった(この患者は別に私の家人でも恋人でもないお客さんだったので、この時は非常に困った)。そういうことから鑑みると、著者は平均的日本人医師よりはかなり上のレベルの英語力があると思われるが、日本では薬を商品名で呼ぶ習慣があるが、現地では薬品名であるとか、同僚が発したジョークを聞き返したら、解雇寸前などという特殊環境下ではそんな程度では使い物にはならないのだろう。もっとも、そうした失敗話は最後の感動話の布石とも言えるべきものなのであるが、特殊環境下に付き物のコイバナはジュニア新書と家族の手前上、書けなかったか。オトナは読んですぐピンと来るだろうけど。
★★★









