妖精のアイルランド
- 下楠 昌哉
- 妖精のアイルランド―「取り替え子」の文学史
広義のアイルランド文学における妖精の意義について論じた本。著者はダブリンに留学した人で、全アイルランド大学選手権65kg以下級チャンピオン(経歴
より)だった人らしい。登場するのはイエイツ、ハイド。『ドラキュラ」のブラム・ストーカー、オスカー・ワイルド、ラフガディオ・ハーン、そしてジョイス
と、これもビッグネームばかりだ。彼等の想像力の源はアイルランド民話にあるのではないかというのが論点だが、アイルランド民話の代表的モチーフとなって
いるのが妖精である。今の日本の妖精イメージは少女と結びついた「清純」に近いものだが、それには幾分英国経由のオリエンタリズムの作用が働いているらし
い。英文学というフィールドにおいては、そうした「異文化」としての「妖精イメージ」が必要とされ、『ドラキュラ」や『雪女』といった第三国が舞台の作品
にも流用できる汎用性があるものの様だ。それを生み出した作家たちの多くが、プロテスタントであったり、国外出自だったり、ハーフであったり、ディアスポ
ラであったりと「ケルト性」を脱構築できる立場であった事と、その作品における「ケルト性」の影響とは無関係ではなかろう。
★★
ヴェネーツィアと芸術家たち
- 山下 史路
- ヴェネーツィアと芸術家たち
日本語なんだから「ベネチア」でいいじゃんと思うのだが、これは「ヴェネーツィア」に足跡を残した近代芸術家たちの物語。登場するのはヴェネーツィアゆか
りの芸術家というわけでもなく、モーツアルト、ゲーテ、ワーグナー、チャイコフスキー、スタンダール、ヴィヴァルディとビッグネームばかり。ティツィアー
ノ、ゴルドーニと地元選出の芸術家も入っているが、寡聞にて、この2人だけは名前を知らなかった。さて、ビッグネーム連中は旅の途中でヴェネーツィアを訪
れたといったパターンなので、厳密にはヴェネーツィアを舞台にした物語とは言えないのだが、作品ではなく、その人生に焦点を当てた評伝は興味深い。この時
代にパスポートやビザが必要だったかどうか分からないが、当時の芸術家たちはひょいひょい国境を超えて、仕事を求めていたらしい。まるで今日のEU統合を
先取りしている様で面白い。
★★
中東がわかる8つのキーワード
- 宮田 律
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★★
ローマの泉の物語
- 竹山 博英
- ローマの泉の物語
★★