紳士の国のインテリジェンス

川成 洋
紳士の国のインテリジェンス (集英社新書 401D)
英国を「紳士の国」と称するのもなんか古臭い感じもするが、テーマがスパイなのでこれもアナログの世界。流石に「紳士の国のスパイ」としたら、いつの時代の本かよということになってしまうので、出版社的にはこの分野の救世主となった佐藤優風の「インテリジェンス」にしたのかもしれない。とはいえ、エリザベス朝時代の人から、最盛期であった冷戦時代の人までの話なので、MI6がスパイを公募する時代(佐藤によればこれもカバーだそうだけど)にあっては、やはり歴史のお話である。この著者はてっきりスペイン専門かと思っていたのだが、専攻はイギリス文学だったとは知らなかった。そういえば大学の内幕を書いた新書も読んだ記憶がある。如何にも「インテリジェンス」好きそうな感じだ。「007」とか「第三の男」といったところには別に興味がないのだが、ソ連が崩壊した時、ソ連の亡命した西側の人たちは一体どうなるんだろうと気になったことを思い出した。キム・フィルビーなんかが、その代表格だが、この人は88年というタイミングで亡くなっていたらしい。この本で紹介されている亡命組は皆、ソ連崩壊前に亡くなっている様だが、こうした「大物」以外に、大勢囲っていた西側とか第三世界の反体制家は、ロシアで生きていく大義名分は無くなってしまったのではなかろうか。スペイン内戦で受け入れた共和派残党はスペイン系ソ連市民としてロシア社会に根付いたらしいが、アメリカで失業したからソ連の亡命したなんて話は昔はよくあったものだ。オズワルドとかキタガワハルミなんかもそのクチだけど、やっぱり使えない奴はあっさり捨てられるもんなのかな。
★★
バール、コーヒー、イタリア人

島村 菜津
バール、コーヒー、イタリア人―グローバル化もなんのその
著者は「イタリア国家資格ジャーナリスト」ではなさそうだが、あの「スローフード」の仕掛け人らしい。ということで、ピザとかスパゲッティの話はないのだが、コーヒーやバールはスローフードの範疇に入る様だ。もっとも「エスプレッソ」の名の通り、イタリアのバールでコーヒーを飲むという行為は「ファーストフード」ではないかという疑問は残るのだが、その辺は、バールは地域の社交場であるとか、スターバックスはイタリアに一軒もないとか、フェアトレードとか、焙煎が塀の中で行われているといったことが証左になり、「バール、コーヒー、イタリア人」は反グローバルなのだということになるらしい。私は無知なもんで、スローフードとはてっきりファストフードの反対の健康に良い食事を推奨している運動かと思ってたのだが、どうも科学的というより、政治的な運動であった様だ。お隣のフランスでは農民という名の運動家がマクドナルドを襲撃して捕まったりもいたのだが、そうした流れも汲んだものらしい。コーヒーを飲むことがアフリカ人の搾取になるのかどうかはさておき、フェアトレードというものが免罪符以上の効果を挙げているかどうかは微妙なところだ。その意味ではフェアトレードとスローフードは矛盾する様な気もする。私も昔、某国に居た頃はバールでエスプレッソを一杯引っ掛けるという習慣があったが、今はコーヒー飲むのはただ読書の場所確保の為。ナナハンライダーの時代じゃあるまいし、純喫茶でのマスターとの会話などウザイだけだ。スタバより、ドトール、ドトールよりマックで結構。しかもマックが一番美味い気もする。ビンボー人の言い訳っぽいが。
★
暗殺国家ロシア

寺谷 ひろみ
暗殺国家ロシア―リトヴィネンコ毒殺とプーチンの野望
学研新書といってもジュニア向けという訳ではない。その歴史は知らんが、現在では無礼なセールス電話をかけてくるクソ会社だから、ブームに便乗した新書参入なのだろう。そんなことは著者には関係ない話なのだが、この本は主にインターネットの情報を構成したのだという。それでは、まるで田中宇ではないかと思いきや、こちらの著者はフルブライト出身で、アメリカ、ロシア、オーストラリア、韓国でも教え、現在は青学の名誉教授というお方。ちなみに男性らしい。しかし、ゾルゲとかドクター・ハマーとかロシアン・マフィアを専門としているらしく、どうも怪しげなところに興味がある人の様だ。その点、ロシアの暗殺合戦はとても今の時代に起きているとは信じられないものがあるので、著者の感性にもマッチしたものがあるのだろう。しかし、インターネットの情報を切り張りしただけでは、やはり本としての体裁が整っていない様な気もする。それなりに面白い情報もあるのだが、背景がイマイチよく分からない。オリガルヒのほとんどがユダヤ系ということは分かったのだが、誰が何の為に、何の目的で殺しあうのかは陰謀論にしても複雑に入り組んでいて混乱してくる。その辺は著者も気になったのか、最後にリトヴィネンコ暗殺の真犯人を教えるという大サービス。ただ、それでもまだ消化不良気味だ。
★★






