紳士の国のインテリジェンス

川成 洋
紳士の国のインテリジェンス (集英社新書 401D)
英国を「紳士の国」と称するのもなんか古臭い感じもするが、テーマがスパイなのでこれもアナログの世界。流石に「紳士の国のスパイ」としたら、いつの時代の本かよということになってしまうので、出版社的にはこの分野の救世主となった佐藤優風の「インテリジェンス」にしたのかもしれない。とはいえ、エリザベス朝時代の人から、最盛期であった冷戦時代の人までの話なので、MI6がスパイを公募する時代(佐藤によればこれもカバーだそうだけど)にあっては、やはり歴史のお話である。この著者はてっきりスペイン専門かと思っていたのだが、専攻はイギリス文学だったとは知らなかった。そういえば大学の内幕を書いた新書も読んだ記憶がある。如何にも「インテリジェンス」好きそうな感じだ。「007」とか「第三の男」といったところには別に興味がないのだが、ソ連が崩壊した時、ソ連の亡命した西側の人たちは一体どうなるんだろうと気になったことを思い出した。キム・フィルビーなんかが、その代表格だが、この人は88年というタイミングで亡くなっていたらしい。この本で紹介されている亡命組は皆、ソ連崩壊前に亡くなっている様だが、こうした「大物」以外に、大勢囲っていた西側とか第三世界の反体制家は、ロシアで生きていく大義名分は無くなってしまったのではなかろうか。スペイン内戦で受け入れた共和派残党はスペイン系ソ連市民としてロシア社会に根付いたらしいが、アメリカで失業したからソ連の亡命したなんて話は昔はよくあったものだ。オズワルドとかキタガワハルミなんかもそのクチだけど、やっぱり使えない奴はあっさり捨てられるもんなのかな。
★★