(臨時営業)訃報12件(アンジェラ・ランズベリー、一柳慧他) 2022年10月
2022年10月21日(金) 今回は訃報をまとめて(敬称略)。 まずは英国出身の女優アンジェラ・ランズベリー(Angela Lansbury。11日死去、享年満96歳。上の写真)。 英国労働党党首を祖父に持ち、同じく政治家の父と貴族出身の女優である母との間に生まれた「生粋のお嬢様」だが、幼くして父親を亡くし、ナチス・ドイツによる空襲(The Blitz)を機に一家は米国に渡ることを決断、彼女は(既に英国で演技の教育を受けてはいたものの)新天地で本格的に母親と同じ女優の道を歩むことになった。 10年以上前に当ブログでも紹介したことのある作家パトリック・ハミルトン(https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502039246.html)原作の映画「ガス燈」(1944年のジョージ・キューカー監督版)で映画初出演するとたちまちアカデミー助演女優賞にノミネートされ、翌年公開の「ドリアン・グレイの肖像」でも高い評価を得てゴールデングローブ賞の助演女優賞を受賞した。 その後も「サムソンとデリラ」(1949年)や「長く熱い夜」(1958年)、「影なき狙撃者(The Manchurian Candidate)」(1962年)などの作品に出演、中でも「影なき狙撃者」では大統領夫人になるため自らの息子まで利用する冷酷無比な母親役を演じ、再びゴールデングローブ賞の助演女優賞を受賞した。 1978年の「ナイル殺人事件」と1980年の「クリスタル殺人事件(The Mirror Crack'd)」でアガサ・クリスティ原作の映画に立て続けに出演し(後者では素人探偵のミス・マープル役を演じている)、1991年公開のディズニー・アニメ映画「美女と野獣」ではポット夫人役(声)で得意の歌唱も披露している。 映画だけでなく演劇やミュージカルでも活躍を続けるが、彼女の演じた役柄で最も有名なのは、1984年から1996年まで続いたテレビドラマ・シリーズ「Murder, She Wrote」(ジェシカおばさんの事件簿)でのミステリー作家で素人探偵のジェシカ・フレッチャー役だろう(我が家にも家人の買ったDVDが何シーズン分かあるのだが、あいにく私は見たことがない)。 個人的にはアガサ・クリスティ原作の上記2作が最も印象的で、特に「ナイル殺人事件」における老小説家役には如何にも偏屈でわがままな老女の嫌らしさが滲み出ていて秀逸だった。 英紙ガーディアンの追悼記事はさすがに数が多く、私が気づいたものだけでも以下の通り(中には彼女も出演した「狼の血族(The Company of Wolves、1984年」の監督ニール・ジョーダンによる追悼記事もある)。☆Dame Angela Lansbury obituary https://www.theguardian.com/tv-and-radio/2022/oct/11/dame-angela-lansbury-obituary☆Angela Lansbury, star of TV, film and theatre, dies aged 96 https://www.theguardian.com/tv-and-radio/2022/oct/11/angela-lansbury-star-of-tv-film-and-theatre-dies-aged-96☆‘A real subversive, sprightly granny’: working with Angela Lansbury by director Neil Jordan(映画監督ニール・ジョーダンによる追悼記事) https://www.theguardian.com/film/2022/oct/12/angela-lansbury-neil-jordan-company-of-wolves☆Angela Lansbury: actor's most notable roles from Jessica Fletcher to Mrs Potts – video https://www.theguardian.com/tv-and-radio/video/2022/oct/11/angela-lansbury-most-notable-roles-from-jessica-fletcher-to-mrs-potts-video☆Angela Lansbury: film, TV and stage career – in pictures https://www.theguardian.com/culture/gallery/2014/jan/24/angela-lansbury-crime-drama☆Angela Lansbury: the scene-stealing grande dame of stage and screen for 75 years https://www.theguardian.com/tv-and-radio/2022/oct/11/angela-lansbury-the-smart-scene-stealing-grande-dame-of-our-screens-for-75-years☆Reassuring, timeless, safe: how Angela Lansbury set the style for female TV sleuths https://www.theguardian.com/tv-and-radio/2022/oct/16/reassuring-timeless-safe-how-angela-lansbury-set-the-style-for-female-tv-sleuths☆Was Angela Lansbury a grande dame? No, she was warmer and friendlier than that https://www.theguardian.com/commentisfree/2022/oct/13/angela-lansbury-grande-dame-friendlier-hollywood-theatre-national-treasure☆Bedknobs and Broomsticks: Angela Lansbury bewitches in a magical classic https://www.theguardian.com/culture/2022/oct/19/bedknobs-and-broomsticks-angela-lansbury-bewitches-in-a-magical-classic☆‘I totally fondled her Oscar!’: Jemima Rooper on larking around with Angela Lansbury https://www.theguardian.com/stage/2022/oct/17/jemima-rooper-angela-lansbury-blithe-spirit 続いてギリシャ出身の女優イレーネ・パパス(Ειρήνη Παππά、Irene Papas。9月14日死去、享年満93歳。上の写真。ちなみにギリシャ語での発音は「イリニ・パッパ」くらいのようである→https://ja.forvo.com/search/%CE%95%CE%B9%CF%81%CE%AE%CE%BD%CE%B7%20%CE%A0%CE%B1%CF%80%CF%80%CE%AC/)。 本国ギリシャで演劇女優として活躍する中、同じギリシャ系の映画監督エリア・カザンに見出されて映画界にも進出、ハリウッドを始めとする海外でも注目されるようになり、「ナバロンの要塞」(1961年)や「その男ゾルバ」(1964年)」、「砂漠のライオン」(1981年)などの大作から、やはりギリシャ出身の映画監督コスタ・ガヴラスによる「Z」(1969年)や英国映画「1000日のアン(Anne of the Thousand Days」(1969年)、フランチェスコ・ロージ監督の「エボリ(Cristo si è fermato a Eboli)」(1979年)、ガブリエル・ガルシア・マルケス原作の「エレンディラ」(1983年)などの名作・佳作に立て続けに出演した。 今世紀に入ってからも2001年公開の「コレリ大尉のマンドリン」やマノエル・ド・オリヴェイラ監督の「永遠の語らい(Um Filme Falado)」(2003年)などに出演していた。 英紙ガーディアンの追悼記事は以下の通り。☆Irene Papas obituary(追悼記事専門の故Ronald Bergan記者によるもの) https://www.theguardian.com/film/2022/sep/14/irene-papas-obituary 同じく女優(米国出身)のルイーズ・フレッチャー(Louise Fletcher。9月23日死去、享年満88歳。上の写真)。 米国アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞の主要5部門を受賞した「カッコーの巣の上で」(1975年)での冷酷非情な看護婦長役で知られる。しかしこの役の印象が強すぎたせいかその後は作品に恵まれず、個人的に覚えているのは「エクソシスト2(Exorcist II: The Heretic)」(1977年)くらいでしかない(他にも1978年の「名探偵再登場」(The Cheap Detective)や1992年のロバート・アルトマン監督作「ザ・プレイヤー」を始め、数多くの映画やドラマに出演してはいる)。 アカデミー助演女優賞を受賞した時のスピーチはとりわけ有名で(「Well, it looks like you all hated me so much that you've given me this award for it, and I'm loving every minute of it. And all I can say is I've loved being hated by you.」)、最後に声をつまらせながら聴覚障碍を持つ両親に手話で感謝を伝える場面もよく知られている(以下のYouTubeで見ることが出来る)。☆Louise Fletcher Wins Best Actress: 48th Oscars (1976) https://www.youtube.com/watch?v=pGl5U7nNlkY 英紙ガーディアンの追悼記事は以下の通り。☆Louise Fletcher obituary https://www.theguardian.com/film/2022/sep/25/louise-fletcher-obituary☆Louise Fletcher: Oscar-winning One Flew Over the Cuckoo’s Nest star dies https://www.theguardian.com/film/2022/sep/24/louise-fletcher-oscar-winning-one-flew-over-the-cuckoos-nest-star-dies 引き続き映画界からの訃報で、映画監督の小林政広(8月20日死去、享年満68歳。上の写真)。 正直さほど詳しく知っている監督ではないのだが、どういう訳かかなりの作品をDVDやテレビ録画したもので持っていて、何年か前に見た「ワカラナイ」(2009年)や「春との旅」(2010年)はいずれも未だ鮮明に記憶に残る佳作だった。 亡くなってしまってからでは遅すぎるものの、これから未見作を少しずつ見て行きたいと思っている。 ガーディアンには追悼記事がなかったので、米誌バラエティの追悼記事を。☆Kobayashi Masahiro, Japanese Film Director, Dies at 68 - Variety https://variety.com/2022/film/news/kobayashi-masahiro-dead-dies-japanese-film-director-1235362686/ やはり映画監督(スイス出身)のアラン・タネール(Alain Tanner。9月11日死去、享年満92歳。上の写真)。 上の小林政広以上によく知らない監督で、ドイツの名優ブルーノ・ガンツが主演した「白い町で」(1983年)をかなり前にテレビで見たことがあるだけなのだが、その静謐な作品世界に訳もなく惹かれたのを記憶している(もっとも映画の内容は全く覚えていないのだが・・・・・・)。 こちらもYouTubeなどインターネットからダウンロードした動画を結構持っているので、代表作とされる「ジョナスは2000年に25歳になる」(1976年)や「光年のかなた(Les Années lumière)」(1981年)」などから見て行きたいと思っている。 英紙ガーディアンの訃報は以下の通り(これまた既に自身も亡くなっている追悼記事専門のRonald Berganによる記事をアップデートしたもの)☆Alain Tanner obituary https://www.theguardian.com/film/2022/sep/12/alain-tanner-obituary 続いて作家の神坂次郎(9月6日死去、享年満95歳。上の写真)。 これまた南方熊楠の評伝「縛られた巨人――南方熊楠の生涯」位しか知らない人なのだが(それ以前に話題になった「元禄御畳奉行の日記尾張藩士の見た浮世」もパラパラとめくった記憶はある)、この本にしても未だ最後まで通読できておらず(ついでに「熊野まんだら街道」もやはり積ん読のままである)、今回の訃報に接して今度こそ読み通さなければと思っているところである。 次は音楽界からの訃報で、現代音楽作曲家でピアニストの一柳慧(いちやなぎ・とし。7日死去、享年満89歳。上の写真中央。右はジョン・ケージ)。 しばらく前に、立花隆の「武満徹・音楽創造への旅」の中で武満徹との非常に印象的な出会いについて書かれているのを読んだばかりで(他の方のブログ記事で恐縮なのだが、この記事で簡単に触れられている→https://lequiche.blog.ss-blog.jp/2017-05-11)、その時にYouTubeでこの人の曲も何曲か聴いたものである。 それ以外は、かの小野洋子の最初の旦那さんだったということくらいしか(今も)知らないのだが、何曲か聴いて気に入った交響曲を筆頭に、ジョン・ケージに師事したバリバリの現代音楽作曲家の曲にしてはそれほど難解ではなさそうな曲の数々を、(やはり遅ればせながら)更に探究していきたいと思っている。 やはり英紙ガーディアンでは記事が見当たらなかったので、米紙ワシントン・ポストの訃報を。☆Toshi Ichiyanagi, experimental composer who straddled cultures, dies at 89 https://www.washingtonpost.com/obituaries/2022/10/13/toshi-ichiyanagi-composer-yoko-dies/ 続いて英国の公共放送BBCの(少し以前の)「朝の顔」ビル・ターンブル(Bill Turnbull。8月31日死去、享年満66歳。上の写真左)。 ちょうど私が英国に滞在していた時の朝のニュース番組「Breakfast」のホストで、リスニングの苦手な私にも聴き取りやすい英語と(少なくとも見た目には)温和な人柄とで、気持ち良い朝を迎えられたことをよく覚えている。 当時の「Breakfast」でのパートナーは上の写真に一緒に写っているSian Williamsや、下の写真に写っている3人(Susanna Reid、Louise Minchin、Charlie Stayt)で、当然個人的に知っている訳でもないのに、これらの人たちの写真を見ているだけで曰く言い難い懐かしさを感じるのだから不思議なものである。 英紙ガーディアンによる訃報記事は以下の通り。☆Bill Turnbull obituary https://www.theguardian.com/tv-and-radio/2022/sep/01/bill-turnbull-obituary☆Former BBC Breakfast host Bill Turnbull dies aged 66 https://www.theguardian.com/tv-and-radio/2022/sep/01/former-bbc-breakfast-host-bill-turnbull-dies-aged-66 次は声優・俳優の近石真介(5日死去、享年満91歳。上の写真左=1枚目)。 なんと言ってもテレビ・アニメ「サザエさん」のフグ田マスオ役が有名だが、他にも「猿の惑星」シリーズなどで知られる英国出身の俳優ロディ・マクドウォールの日本語吹き替えの声などは記憶に残っている。バイプレイヤーとしてもドラマ等で個性的な顔つきや親しみのある声によって他に代え難い存在感を示していたものである。 突然の訃報に驚かされたばかりなのだが、「ザ・ドリフターズ」の元メンバーでタレントの仲本工事(交通事故により19日に死去、享年満81歳。上の写真)。 まさに「8時だョ!全員集合」を毎週楽しみに見ていた世代なので幼時から親しんで来た人だが(ただしこの番組以降はお笑い番組そのものに興味を失ってしまったので、ここ30年以上ほとんど見たことがなかった)、実は訃報に接する少し前にたまたまザ・ビートルズが1966年に来日公演を行った際の「前座」の動画を見つけて視聴したばかりで、まさにこの人がメイン・ヴォーカルを務めて「のっぽのサリー(Long Tall Sally)」を披露していた(以下のアドレス参照)。 ブルー・コメッツや内田裕也、尾藤イサオなど、当時人気のあった(?)日本人バンドや歌手によるこの「前座」公演は正直なんとも「お寒い限り」のものでしかないのだが、今ではコメディ・グループとしてのイメージしかないと言っても良いだろう「ザ・ドリフターズ」のバンド時代の姿が見られる貴重な映像として、それなりの価値はあるのかも知れない。☆ザ・ビートルズ日本公演の前座動画(いつ削除されるか分からないため、幾つかアドレスを貼付しておく) https://www.youtube.com/watch?v=fQPKSbHoTYk https://www.youtube.com/watch?v=qoHtH3mmpcA https://www.youtube.com/watch?v=PXASBEt4GIs* 以下の2人は名前以外ほとんど知らない人たちなのだが、一応採り上げておく。 ノンフィクション作家の佐野眞一(9月26日死去、享年満75歳。上の写真)。 「旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三」、「東電OL殺人事件」、「宮本常一が見た日本」、「だれが「本」を殺すのか」、「怪優伝 三國連太郎・死ぬまで演じつづけること」といった著作に興味を覚え、何冊か本も持ってはいるのだが(ただしBOOK・OFFで安く手に入れたものである)、いずれも日本に置いて来てしまい、積ん読のままである。 スペインの作家ハビエル・マリアス(Javier Marías。新型コロナウイルス感染による肺炎のため9月11日に死去、享年満70歳。上の写真)。 ノーベル文学賞が話題になるたびにメディアで有力候補として挙げられていたので名前だけは知っているのだが、作品はひとつも読んだことがない(この人の短編小説が原作で、ウェイン・ワンが監督し、ビートたけしや西島秀俊、小山田サユリなどが出演した映画「女が眠る時」は見たことがあるものの、個人的な評点は5点満点で2.5点と決して高くない)。 「女は眠る時」の原作を含め、日本語訳も何冊か出ているが、果たして今後読む機会が訪れるかどうか・・・・・・。 英紙ガーディアンの訃報記事は以下の通り。☆Javier Marías obituary https://www.theguardian.com/books/2022/sep/15/javier-marias-obituary ついでながら、死んでから昨晩でちょうど29年が過ぎた亡き母親を含め、上記の人たちの死を悼み、心より冥福を祈りたい。RIP.