"Magical Mystery Tour" | タコさんの庭

タコさんの庭

ビートルズの歌詞和訳に挑戦

"Magical Mystery Tour"

Writers : credited Lennon-McCartney (by Paul McCartney )

Artist :  The Beatles

Recorded : 1967/4/25-27, 5/3, EMI Studios

Released :  1967/11/27(US)(LP) 1967/12/08(UK)(EP2枚組) 1968/12/05(JP)(LP)

      「Magical Mystery Tour」(LP)A面1曲目 (EP)A面1曲目

1973/04/19「The Beatles / 1967-1970」

2009/09/09「Magical Mystery Tour」[Remastered] 

2023/11/10   「The Beatles: 1967-1970 (2023 Edition)」

US UK 

 

Artist : Paul McCartney

1993/11/08  「Paul is Live」

 

ポールの本 「The LYRICS」には載っていませんでした。

 <歌詞和訳>"Magical Mystery Tour"  邦題 "マジカル・ミステリー・ツアー"

       魅惑的なミステリーツアー

[Intro]

Roll up, roll up for the Magical Mystery Tour

Step right this way!

    いらっしゃい いらっしゃい マジカルミステリーツアーに

    こちらへどうそ!

 

[Verse 1]

Roll up, roll up for the mystery tour
Roll up, roll up for the mystery tour

Roll up (And that's an invitation)

Roll up for the mystery tour
Roll up (To make a reservation)

Roll up for the mystery tour

    いらっしゃい いらっしゃい ミステリーツアーに

    いらっしゃい いらっしゃい ミステリーツアーに

    いらっしゃい (では こちらが案内状になります) 

    ミステリーツアーにいらっしゃい

    いらっしゃい (予約するために)

    ミステリーツアーにいらっしゃい 

   

 

[Chorus 1]

The Magical Mystery Tour is waiting to take you away
Waiting to take you away

    マジカルミステリーツアーは あなたを連れて行くため 待っています

    あなたを連れて行くため 待っています

 

[Verse 2]

Roll up, roll up for the mystery tour
Roll up, roll up for the mystery tour
Roll up (We've got everything you need)

Roll up for the mystery tour
Roll up (Satisfaction guaranteed)

Roll up for the mystery tour

    いらっしゃい いらっしゃい ミステリーツアーに

    いらっしゃい いらっしゃい ミステリーツアーに

    いらっしゃい (あなたが必要とするものはすべてこちらが用意します) 

    ミステリーツアーにいらっしゃい

    いらっしゃい (満足は約束されています)

    ミステリーツアーにいらっしゃい

 

[Chorus 2]

The Magical Mystery Tour is hoping to take you away
Hoping to take you away

    マジカルミステリーツアーは あなたを連れて行くことを願っています

    あなたを連れて行くことを願っています

 

[Bridge]

The mystery trip

    神秘的な体験

 

 

[Repeat Verse 1]

Aaaaah The Magical Mystery tour
Roll up, roll up for the mystery tour

Roll up (And that's an invitation)

Roll up for the mystery tour
Roll up (To make a reservation)

Roll up for the mystery tour

    あぁぁ ミステリーツアー

    いらっしゃい いらっしゃい ミステリーツアーに

    いらっしゃい (では こちらが案内状になります) 

    ミステリーツアーにいらっしゃい

    いらっしゃい (予約するために)

    ミステリーツアーにいらっしゃい 

  

[Outro]

The Magical Mystery Tour is coming to take you away
Coming to take you away

The Magical Mystery Tour is dying to take you away
dying to take you away, take you today

    マジカルミステリーツアーが あなたを連れて行くために到着します

    あなたを連れて行くために到着します

    マジカルミステリーツアーは あなたを死ぬほど連れて行きたいのです

    あなたを死ぬほど連れて行きたいのです 本日あなたを捕まえて

 


 

????

ポールとジョンで作った歌です。

 

今までに、ビートルズは二本の映画に出演しています。

1964年に、『A Hard Day's Night』 邦題『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』

1965年に、『Help!』邦題『ヘルプ!4人はアイドル』

二本ともコメデイ映画で、監督はリチャード・レスターでした。

脚本と制作は、それぞれ違う人が行っています。

 

1967年4月、

アルバム「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のレコーディングを終えると、

ポールは、ローディのマル・エバンスとアメリカに行きました。

『ロミオとジュリエット』の舞台劇に出演している恋人のジェーン・アッシャーの21歳の誕生日をサプライズで祝うためです。

ポールとジェーンは、デンヴァー公園に行きました。ポールは木々の間を歩くジェーンをビデオカメラで撮影した時に、テレビ映画のアイディアを思いついたそうです。

そして4月11日ロンドンに戻る飛行機の中で、そのアイデアは具体的になります。

帰国したポールは、アイディアをマネージャーのブライアン・エプスタインに伝え、ブライアンもこの企画に賛成しました。

今回のテレビ映画『Magical Mystery Tour』は、監督もビートルズが務めました。

脚本はなく、手書きのアイデア、スケッチ、シチュエーションをもとに進めたそうです。

 

イギリスでのレコードアルバムEP2枚組「Magical Mystery Tour」の発売は12月8日

ファンはレコードを充分聞いたあと、12月26日放送の映画『Magical Mystery Tour』を見たことになります。

映画『A Hard Day's Night』『Help!』に続き、みんなの楽しみ度は大きかったことでしょう。

映画の内容は、「サイケデリックにペイントされたバスに乗って、ビートルズを含めたユニークな人たちが行き先不明のミステリーな旅行にでかける」というものでした。

1967年12月26日にイギリスのBBC1で白黒で放送され(サイケデリックなペイントも残念ですアセアセ)1978年1月5日にはBBC2でカラーで放送されましたが、当初は酷評されたそうです。

 

  2024年2月3日追記

バリー・マイルズ著 「ポール・マッカートニー/ メニー・イヤーズ・フロム・ナウ」翻訳 竹林 雅子 496ページ 

 BBCは一九六七年十二月二十六日、ボクシング・デイの夜八時三五分からこの作品を白黒で放映した。一九六八年一月五日にはカラーで再放送されたが、半年前に発売されたばかりのカラー・テレビを持っている家庭は殆どなかった。カラー撮影されたこの作品は、モノクロの画面ではインパクトを失った。その上、ナレーションもなく、事件の脈絡もない、文字通りのミステリー・ツアーに視聴者は困惑を隠せなかった。

 批評家連中はこの番組をビートルズ叩きの格好の材料にした。以下略

 

そのサイケデリックにペイントされたバスへの呼び込みの歌が、タイトル曲の"Magical Mystery Tour" ですね。

レコーディングは、ポールがアメリカから帰った4月に、早速開始されています。

映画の撮影が開始されたのは9月です。

 

バリー・マイルズ著「ビートルズ・ダイアリー」松尾康治訳

1967年 223ページ

 

4月3日
ポールはマル・エヴァンズとロサンゼルスに飛んだ。真夜中少し過ぎに、マル・エヴァンズは カヴェンディッシュ・アベニューのポールの家に彼の荷物を持って行った。ポールは午前3時30分に寝たが、内装業者が家を直しにきたので早起きした。エール・フランスの職員二人がポールとマルを迎えに来て、少ししてから彼らはパリのオルリー空港に飛んだ。そこから彼らはロサンゼルス行きの便に乗った。ポールはデンバーでジェーンに会った時に、彼女に『サージェント・ペパー ズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケットを見せるために、その写真のコピーを持っていくつもりだったが、忘れてしまった。ポールのアメリカのビザは期限切れであることが分かったが、 ロサンゼルスのアメリカ税関と入国管理局はその問題を30分で解決してくれた。それからフランク・シナトラに借りた自家用リア・ジェットで彼らはサンフランシスコへと飛んだ。

アビイ・ロード
『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のセッション。ジョージは「ウ イズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」に自分のリード・ヴォーカルを入れた。

 

バリー・マイルズ著「ビートルズ・ダイアリー」松尾康治訳

1967年 224ページ

 

4月5日
 ポールは、ジェーン・アッシャーの21歳の誕生日に彼女のところへ行って驚かせようと、彼女がブリストル・オールド・ビクトリア劇団でシェイクスピア劇を演じているコロラドのデンバーに行った。
 ポールのリア・ジェットは、サンフランシスコからデンバーまで高度4万1,000フィート、時速650マイルで飛んだ。デンバー空港でポールは自分の家を貸したバート・ローゼンタールに会った。マルはドリフトウッド・モーテルを予約した。 その日遅く、ローゼンタールがポールとジェーンを迎えに来て、ホテルに連れて行った。そこでジェーンの21歳の誕生パーティーが行われた。ブリストル・オールド・ビクトリア劇団の仲間も素敵なパーティーに参加した。
 

4月6日
 マルはハーツ・レンタカーで車を借りて、ポールとジェーンをロッキー山脈まで連れて行った。彼らは木々の間の脇道に車を停めて、川へ向かう岩の峡谷を歩いて降り、そこで、冷たい水でぱちゃぱちゃと水遊びをした。そして新鮮な空気の中、雪のふきだまりの上を裸足で歩いた。その日の夜、彼らはたくさんの食事を平らげ、ローゼンタール家のカラー・テレビの前で眠ってしまった。

 

4月7日
 マルはポールのカメラを修理に出して、それからギリシャ劇を見に公園へ行った。ポールは木々の間を歩くジェーンを撮った。この時テレビ・スペ シャル用に『マジカル・ミステリー・ツアー』のアイデアを思いついた。

 

4月7日、デンヴァー公園でテレビ・スペ シャル用に「マジカル・ミステリー・ツアー」のアイデアを思いついたポールは、

4月11日、ロンドンに戻る飛行機の中で、さらに具体的な構想を練りました。

バリー・マイルズ著 「ポール・マッカートニー/ メニー・イヤーズ・フロム・ナウ」翻訳 竹林 雅子 473ページ

 

 映画用カメラを持参したポールは、その二日後にデンヴァー公園で撮影をしていた。ミステリー・ツアーをテレビのスペシャル番組に仕立てることを思いついたのは、このときだ。アイデアはどんどん膨らんで、『マジカル・ミステリー! ツアー」という企画が出来上がった。この企画には、ビートルズらしい北部の労働者階級文化と、ファンをアシッド・トリップに招待するという二つの意味が込められていた。四月九日にオールド・ヴィク劇団が次の公演地に旅立つと、 ポールとマルは再びフランク・シナトラのリア号ジェットに乗ってロサンジェルスに戻って行った。
ポール「アマチュア映画に凝っていたからね。『カメラマンを雇って、撮影する場面を指示すれば、それで映画の撮影は出来る。ウェストミンスター橋を逆さから渡りたいと言えば、プロにはそういう撮影も出来るだろう。僕が何をしたいかを伝えればいい』―― そう考えたのも、まあ、自然の成り行きだった。それで、バスを借りて、人を集めて、マジカル・ミステリー・ツアーの物語を作ろうとアイデアがまとまった。

 北部ではミステリー・ツアーというものがあってね。子どもの頃、目的地も知らされないままバス・ツアーに参加したもんだけど、殆ど必ず行き先はブラックプールと決まってた。リヴァプールからだと、結局ブラックプールになっちやうんだよね。『あーあ、何だブラックプールだったのかあ!』って。到着するまで、どこに連れて行かれるんだろうって想像するのがスリルなんだ。それが思い出に残ってた。ビートルズって思い出を歌った曲が多いじゃない? "ペニー・ レーン" に登場した看護婦と理髪屋と消防士は僕らがバスから眺めていた人たちだったけど、今度の企画では彼らも僕らと一緒にバスに乗って出かけるんだよ。ちょっとしたシュールレアリズムを生み出すために、僕らはこんな風に現実を少しばかり極端に仕立ててみた。そういう作業に興味をそそられたんだ」。

 このアイデアは、ケン・ケーシー&ザ・メリー・ブランクスターズの影響も受けていた。一九六四年にケーシーの一団は、一九三九年製インターナショナル・ハーヴェスターのスクール・バスをサイケデリックに塗りたくり、LSDをやりながら道中の出来事を撮影するというアメリカ横断旅行を敢行した。撮影フィルムを『ザ・メリー・プランクスタ ーズ・サーチ・フォー・ア・クール・プレイス』という映画として完成させる計画は実現しなかったが、この出来事はトム・ウルフの『クール・クールLSD交感テスト』に取り上げられて伝説となった。 
 ポールは四月十一日にマルと共に乗り込んだイギリス行きの飛行機の中でこのアイデアを思いつき、早速スチュワーデスにメモ用紙を貰(もら)ってタイトル曲の歌詞を作り、六十分のテレビ番組やその他のイヴェントに使えるフィルムの計画を練り始めた。

 

バリー・マイルズ著「ビートルズ・ダイアリー」松尾康治訳

1967年 224ページ

 

4月12日

ポールとマルがヒースロー空港に到着した。

 

 

[Intro]

Roll up, roll up for the Magical Mystery Tour. 

Step right this way!

    いらっしゃい いらっしゃい マジカルミステリーツアーに

    こちらへどうそ!

 

[Intro] は「Magical Mystery Tour」への呼び込みのセリフですね!

バスターミナルにあるチケット売り場みたいなところで、呼び込んでいるイメージをしました。

 

roll up」の訳には迷いました。

roll up : (歓迎されない形で)やってくる、どやどややってくる、いらっしゃい、入ってらっしゃい

roll up : 研究社 新英和中辞典での「roll up」の意味

    [通例命令法で; サーカスなどの見せ物の呼び込みの言葉に用いて] いらっしゃい, 入ってらっしゃい.

 

海外の動画で「roll up」と言っているのはないかと探したのですが、みつかりませんでした。

[Intro]の「Roll up, roll up」に、イメージしたのは、上野のアメ横や、八百屋さんが低い声でお客さんを呼び込んでいる声です。

 

以下のサイトに、「roll up」は日本語の「いらっしゃい」に似ているとありました。Lukeさんありがとうございました。

また、イギリスでは、道でとおりすぎてる人に「roll up! roll up!」と叫ぶ人が多くいます。
これは「いらっしゃい」という日本語に似ていて、あるイベントに注目を集めたい人は特に「roll up!」と言います。

 
Step right this way!」は、
海外の動画で「Step right up!」と呼び込んでいる動画はたくさんありました。
 

Step right this way!」を直訳すると、「こちらへまっすぐ足を運んで!」でしょうか。

以下の方のサイトを参考に、「こちらへどうぞ!」と訳しました。

  • Right this way.:こちらへどうぞ。

「こちらへどうぞ」は「Step this way」、またはよりシンプルに「Follow me」と表現してもOKです♪

 

 

[Chorus 2]

The Magical Mystery Tour is hoping to take you away
Hoping to take you away

    マジカルミステリーツアーは あなたを連れて行くことを願っています

    あなたを連れて行くことを願っています

 

「主語 + hope ~」と「主語 + be動詞 hopping ~」について以下のサイトで勉強しました。

英語には「尊敬語」や「謙譲語」はないけれども、「丁寧な表現」はあるそうです。

be動詞 hopping ~」の形にすると、「hope ~」より、丁寧な表現になるそうです。

丁寧な訳にしました。そして他の歌詞もぜんぶ丁寧な訳にしました。

 

 

[Outro]

The Magical Mystery Tour is coming to take you away
Coming to take you away

The Magical Mystery Tour is dying to take you away
dying to take you away, take you today

    マジカルミステリーツアーが あなたを連れて行くために到着します

    あなたを連れて行くために到着します

    マジカルミステリーツアーは あなたを死ぬほど連れて行きたいのです

    あなたを死ぬほど連れて行きたいのです 本日あなたを捕まえて

 

「be dying to ~」には「~したくてたまらない」という意味だそうです。

 

バリー・マイルズ著 「ポール・マッカートニー/ メニー・イヤーズ・フロム・ナウ」に、

「"死ぬほど連れて行きたい"(たぶん原書は"dying to take you away") というのは『チベットの死者の書』を意味している。」

とありました。

『チベットの死者の書』を意味しているとのことなので、

「be dying to ~」を「~したくてたまらない」ではなく、「死ぬほど~したい」で訳しました。

「The Magical Mystery Tour is dying to take you away」

「マジカルミステリーツアーは あなたを死ぬほど連れて行きたいのです」

 

2024年1月30日追記

『チベットの死者の書』という本については、"Tomorrow Never Knows" で少し書きました。

 

 

 

take you today」(本日あなたを捕まえて)は私にとって挑戦した訳です。

皆さんの思うように聞いてくださいアセアセ

 

 

 

「roll up」の二つの意味

バリー・マイルズ著 「ポール・マッカートニー/ メニー・イヤーズ・フロム・ナウ」翻訳 竹林 雅子 476ページ

 

ポール「"マジカル・ミステリー・ツアー" はジョンと僕の共作。僕らの "地元のお祭り"期とも言える頃の作品。『寄ってらっしゃい、見てらっしゃい』の祭りの呼び込みがインスピレーションになってる。何かを約束するっていう。たとえば『絶対壊れません』とか『高級肉屋』とか『必ずご満足いただけます』みたいな新聞広告のノリが『サージェント・ペッパー』にもあったよね。『入ってみてごらん。寄って行きなよ』っていうノリが、僕の歌にはみなぎってる。レン ン・マッカートニー作品には、このノリがよく出てくるんだよ。 

 子どもの頃はよく祭りに出かけたな。ワルツァーやダッジム(*小型電気自動車)に乗ったり――でも一番興味を惹かれたのは見世物小屋。ボクシング・リング、髭の生えた女、五本足の羊――なんて言って、実は作り物の足を一本縫いつけてるんだけどさ。足に触ったら、『おい、触るんじゃない!』って怒られたよ。子ども時代にはこれがすごく楽しみでさ。こんな子ども時代の黄金色の記憶の中から生まれた作品は多いね。アイデアに詰まったら、海へ遊びに行った夏の日を必ず思い浮かべるんだ。砂浜に太陽に波にロバの鳴き声……これだけで十分に歌のシナリオが出来るだろ。 

 ジョンも僕も、ミステリー・ツアーってものを覚えていて、あれはいかしたアイデアだとずっと思ってた。どこにたどり着くか分からないで、バスに乗るんだよ。何だかロマンティックだし、ちょっと超現実的でもある。バスのトランクにはビール箱が積んであって、みんなでたくさん歌を歌って、大型バスの旅を楽しむんだ。このアイデアを曲と映画に取り入れた。
 サイケデリックの時代だったから、僕らがやるからには単なるミステリー・ツアーじゃなくて、もう少し超現実的なマジカルなものを作りたかった。サーカスやお祭りの呼び込み風のやり方でね。"いらっしゃい (*roll up!)"にはジョイントを巻く (*roll up!)という意味もかけられるしね。僕らの仲間にだけは通じるだろうという、ドラッグやトリップを暗に意味する言葉にもこだわった。"マジカル・ミステリー・ツアーはあなたを連れてイクのをお待ちしています" というのもドラッグの意味だし、"死ぬほど連れて行きたい" というのは『チベットの死者の書』を意味している。普通の人にとっては単なる楽しいバス・ツアーの意味でも、トリップしてる人にとっては、実際に死後の世界への本当の魔法のツアーを意味するんだ。僕らの"同胞"のために、こんな表現を詰め込んでるんだよ。
 マジカル・ミステリー・ツアーとはドラッグのトリップのこと。そのつもりで映画を作ったよ。『これは最高のミステリー・ツアーになるぞ。誰も行き先が分かってないんだから。どこでも僕らが好きな所に連れて行けるぞ!』って、当時はそんな気分だった。『空に行ってもいい。そう、飛んでもいいんだ』って。まだお喋りを書き取った程度の最初の脚本段階では、バスが空に飛び立って、雲の上の手品師に会いに行くことになってたんだよ。手品師の格好をした僕らが。 トイレの中でしばらく馬鹿をやるっていう」。

 

 

「ブライアン・エプスタイン」

4月12日にアメリからロンドンに戻って来たポールは、自分が思いついた「Magical Mystery Tour」のアイディアを、マネージャーのブライアン・エプスタインに伝えました。

バリー・マイルズ著 「ポール・マッカートニー/ メニー・イヤーズ・フロム・ナウ」翻訳 竹林 雅子 475ページ

 

『サージェント・ペパー』の発表前の一九六七年四月にポールはブライアン・エプスタインにこの企園についての細かい相談を持ちかけている。ポールーの自宅の居間の長椅子に腰を下ろしたブライアンは、ポールの企画のあらゆる側面を検討しながらメモを取っていた。ポールは六十分のフィルム作品の時間配分を、円グラフに表した最初の企画書を再検討した。ブライアンはポールの企画からスケジュールを立て、撮影所やリハーサル・スタジオの予約、機材やお茶の準備といった必要な実務を割り出して管理することが出来た。彼がいれば、ビートルズは自分たちのときにあいまいで過度な要求を満たすためにどれほどの組織が必要になるか、心配する必要はなかったのである。 

 ときにはブライアンが、他のメンバーをもっとシーンに登場させてはどうかと口を挟むこともあった。彼は四人のメンバーが平等にシーンに登場するように、特に気を配っていた。『リンゴにもっとやらせよう』『ここでジョージに歌を作らせてはどうか』などと進言しながら、彼はこの企画に非常に熱意を燃やしていたようだ。ビートルズはツアー活動を止めてしまい、最新アルバムもまだ発表していなかったので、ブライアンがビートルズのために出来る仕事は殆どない状態だった。本来の自分の才能を発揮出来るポールの企画に、彼は明らかに喜んでいた。ブライアンが亡くならなければ、『マジカル・ミステリー・ツアー』の制作はもっとスムーズに進んだことだろう。彼ならばビートルズ・ツアーの要領で、手際良く撮影所を押さえ、組合と交迎し、仕出し業者やホテルを確保しただろう。彼は生前に、熟練マネージャーならではの貢献もしていた。『マジカル・ミステリー・ツアー』の技術監督を務めた技師のピーター・セオボールドは、ブライアンがイギリス映画研究所に電話をして適任者の紹介を求めた際に、映画評論家ピーター・ウォレンが推した人物だった。

マネジャーのブライアン・エプスタインは、この年(1967年)の8月27日に亡くなりますが、テレビ映画の企画『マジカル・ミステリー・ツアー』に、意欲的だったのですね。

ポールの企画に喜んでいたブライアン・エプスタインですが、病院に入ることになったそうです。(以下の本には、ポールがブライアン・エプスタインに企画をすぐには話せなかったと書いてありますが、4月に一度話しているので、二度目、三度目の話し合いでしょうか。)

 

ピーター・ブラウン、スティーヴン・ゲインズ著「ビートルズ ラヴ・ユー・メイク 下」 小林宏明訳 54ページ

 

 マジカル・ミステリー・ツアーの構想を、ポールはブライアンと話し合うことができなかった。ポールが帰ってくると、私はブライアンがプライオリーというリッチモンドの経費の高い病院で看護を受けていることを彼に話さなければならなかった。ブライアンは眠っているときと起きているときの周期がひどく不規則になり、一睡もしないで何日間も起きているかと思えば、興奮剤の副作用で突如昏倒してしまうといったありさまだった。明らかにストレスがひどくたまっていたため、ドクタ・ノーマン・カゥアンの強い勧めで、ついに精神科医のドクタ・ジョン・フラッドの治療を受けることを承知したのだ――「ただし今回かぎりだぞ!」と叫んで。五月十三日、ドクタ・フラッドはブライアンの病いの原因が「不眠症、精神的動揺、不安、うつ病」からきていると診断をくだした。ブライアンは即座にプライオリーに入院させられ、そこで"睡眠治療"なるものを受けることになった。彼は治療中点滴を受けながら 催眠状態におかれた。そして目をさますと、とりあえず話力がみなぎってさわやかな気分になった。 

 ブライアンが入院した日の夜のようすを見に病室へ入っていくと、彼は三人の男を眠らせてしまえるほどの睡眠薬を投与されていたにもかかわらず、ベッドに坐って手紙を書いていた。その夜に書いた手紙の一通は私宛てのもので、そこには「この哀れた男を眠らせるのに必要なものがなんであるのか、彼らはまるでわかっていない……」と書かれていた。しかし彼は結局厖大な量の睡眠薬に負けて、一週間近く眠りこけた。目をさましたとき、 ブライアンはロンドンの私のところに電話してきて、この治療もたいして効果がないと言った。

 

発売前のアルバム「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」も、エプスタインは病院のベッドの上で聴いたそうです。

ピーター・ブラウン、スティーヴン・ゲインズ著「ビートルズ ラヴ・ユー・メイク 下」 小林宏明訳 57ページ

 

ブライアンがビートルズの新しいアルバム《サージャント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・パンド》をはじめて聴いたのも、プライオリーのベッドの上だった。ビートルズがこのアルバムを特別にアセテート盤に録音しておいてくれたので、私はステレオ・レコード・プレーヤーとそれをもってロンドンからブライアンを訪ねた。ステレオをドレッサーの上に置くと、ブライアンはベッドに坐ってレコードに耳を傾けた。スピーカーから出てきた音楽を聴いて、私たちはふたりとも仰天した。そして世界中の人たちも、私たち同様仰天することになった。

 

そしてその前後はわかりませんが、入院中、ジョンからの花束のプレゼントにブライアンは涙したそうです。

ピーター・ブラウン、スティーヴン・ゲインズ著「ビートルズ ラヴ・ユー・メイク 下」 小林宏明訳 55ページ

 

 お説教は、大きな花束が届けられたときに中断した。ブライアンは花束にそえられていた手紙を一所懸命に開き、声に出してそれを読んだ。「あなたが大好きだ、ほんとうに大好きだよ……」。手紙の最後には、ジョン、としたためられていた。ブライアンが感情を抑えきれなくなって泣きだしたので、看護婦はスティグウッドとナットを廊下に出した。

 

ため息です。

自分の愛したビートルズが自分の手元から飛び立って行くような、そんな寂しい想いがブライアンにあったのかもしれません。

ブライアンは、5月19日に退院します。

 

 

辞書

情報提供元(著作権者)Weblio

参考辞書 英辞郎goo辞書

(引用できない英辞郎goo辞書を使って訳した場合は、その単語や慣用句を太字斜体にして、自分で訳した訳を載せました)

roll up : (歓迎されない形で)やってくる、どやどややってくる、いらっしゃい、入ってらっしゃい

roll up : 研究社 新英和中辞典での「roll up」の意味

    [通例命令法で; サーカスなどの見せ物の呼び込みの言葉に用いて] いらっしゃい, 入ってらっしゃい.

step right this way : 例文 Of course, Step right this way.

            もちろんです、こちらへどうぞ。

magical : 魔法のような、不思議な、魅力的な、神秘的な

magical : Magical Mystery Tour「魅惑的なミステリーツアー」

mystery : 神秘的なこと、不可解なこと、なぞ、神秘、(小説・映画などの)推理もの、ミステリー、(宗教上の)奥義、秘法、秘訣(ひけつ)、秘跡

tour : (視察・巡遊などの)(小)旅行、周遊、観光旅行、ツアー、(劇団の)巡業、(スポーツチームの)遠征(旅行)、勤務期間、(交替制の仕事の)当番、勤務交替、(外国などでの)勤務期間

invitation : 研究社 新英和中辞典での「invitation」の意味 招待[案内]状 〔to〕.
make a reservation : 予約を取る、宿を取る、宿をとる、予約する
take away : The Magical Mystery Tour is waiting to take you away

     「マジカルミステリーツアーは あなたを連れて行くため待っています」

have got : もっている、しなければならない、する必要がない、(…に)ちがいない、きっと(…の)はずだ

satisfaction : 満足、(…を)満足させること、(…の)充足、(…に)満足すること、満足(感)、喜び、満足となるもの、履行、賠償、皆済

guarantee : 〈…を〉請け合う,約束する.

hope : 希望する、期待する、願う

come : 来る、(話し手のほうへ)やってくる、(相手のほうへ)行く、やってくる、(ある場所に)到着する、届く、達する、巡って来る、到来する、現われる

die : 〔+to do〕〈…したくて〉たまらない,しきりに〈…し〉たがっている.

         例文 She's dying to go on the stage. 

    彼女はしきりに俳優になりたがっている.

take : (手などで)取る、(…を)取る、つかむ、(…を)抱く、抱き締める、(わな・えさなどで)捕らえる、捕縛する、捕虜にする、(…を)(…で)捕らえる、占領する