四国犬の古典鑑賞43:陸奥号(血統編3) | 未整理箱。古い四国犬の話でも入れておこうか

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主なテーマは以下です。
■二代目の箱「長春系四国犬の回顧録」
■三代目の箱「気が付けば犬がいた件」
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■「表現のつづら」(たぶん雑談)

【四国犬の古典鑑賞】

現在の日本犬中型 四国犬に影響を与えた犬

43:陸奥号(血統編3)

 

 

 今回は、陸奥号の母系の血統を見て参ります。

 先の記事で注目したゴマ号は、母系の三代前に入っており、ゴマ号のお相手となった八女号は本川村からの山出しと聞いています。

 八女号は耳や目型、体躯構成を見ると確かに本川系の表現です。短毛気味で筋肉のカタい感じも本川系のルーツと考えられる、東南アジア起源の犬の体質が見て取れます。しかし、その子である富士鷹女号の表現は、画像を見ていただければ分かるように、はっきりとした頬白やどっしりした体躯、大きな口吻などから、幡多系の特徴を体現していると言ってよいと思います。つまり、富士鷹女号の代では、本川系の表現の大部分が隠されているということです。このように遺伝する形質には優劣がありますので、違う系統を交配すると、次の代では優性の表現が多く現れた子ができやすいのです。私の今までのブリーディングの経験でも、本川系の形質は幡多系より劣性のものが多く、正しく系統繁殖をして残さないと失ってしまうと感じています。

 

八女号(本川村山出し 高知岡本882)

 

富士鷹女号(高知岡本991)

先の記事のゴマ号(別カット)の画像によく似ていることが分かる。



 本川の猟師、山中春男氏※1が、本川の猟のことを語った記事にも、大変参考になる話があります。

『四国犬のルーツをたずねて』バーチャル本川村「私と猟と本川犬 山中春男」より

 猟師は良い猟がしたいので、つい"商売の犬"※2を注文してしまう。買ってきた犬はよく猟をするが、その犬を交配してできた子は変な犬が出る。

 自分たちで自家繁殖しているものは親の代と同じものが出る。それで格好いい。掛け合わせは自分のところでやるが、あまり近親交配ばかりだと、犬が"細く"なる。その時には10年、15年に一回とか、よその犬を入れる。次の代で今までの犬をかけあわせたら「かけ戻し」といって、犬が元に戻る。そういうようなことをして保ってきた。(以上、抜粋し要約)


 ずいぶん前の記事でも申しましたことですが、四国犬黎明期とも言える昭和初期、山出しされた犬達を見ると、雄犬の方は文句の付けようのない犬が揃っています。四国犬の祖犬と呼ばれる名犬達はどれも雄であることは、愛好家の方ならご承知のことでしょう。しかし、私が収集しております古い写真でも、山出しの雌犬の方はあまり良い犬を見つけることはできません。

 諸先輩からうかがった話や、私が若い頃山を歩いて山出しできる犬を探していたときに聞いたところでは、猟師は山出しを依頼されて金を積まれても、自家繁殖のために良い雌は手放さなかったとのことでした。それが山出しの雌が乏しい原因だと思われます。

 

 富士鷹女号は、幡多系のゴマ号によく似た犬でした。ただし、富士鷹女号での本川系の形質は劣性となり表現されなかったとしても、ゴマ号のお相手が、八女号という本川で育まれ品種が固定された犬であるということは、見えなくても本川の遺伝子を50パーセント持っているということです。その富士鷹女号に本川の犬である長春号を"かけ戻し"することで、その次の代では本川の血量は75パーセントに上がり、父方、母方の両方から本川の形質を多く受け継いだ表現を持って、血統的にも本川系と言える登美女号※3(陸奥号の母)が生まれたと考えられます。(be-so)


※1 山中春男氏のご一族は、本川村で代々猟師をされており、昭和初期、親類が長春号を所有していたと伝わっている。

 詳しくは下のリンクから記事をご参考ください。上記の山中氏の記事についても触れております。

※2 犬屋が作出した交雑種(F1)の犬のことを指している。

※3 登美女号は登美号との記録もあり、以前の記事では「登美号」として紹介している。

 

 

 

 

 

陸奥の記事、書いていたらまた長くなりました。

もうちょい続きますが、またお時間少々いただきます。

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