四国犬の古典鑑賞42:陸奥号(血統編2) | 未整理箱。古い四国犬の話でも入れておこうか

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【四国犬の古典鑑賞】

現在の日本犬中型 四国犬に影響を与えた犬

42:陸奥号(血統編2)

 

 

 では、陸奥号について血統の構成を細かく見て参ります。先の記事で述べましたように、長春号の血が50パーセントを占める陸奥号ですが、楠号とゴマ号という名犬が奇しくも3代前に入っているという点も目を引くポイントとなっています。私は、このバランスが陸奥号の血統を云々する上で非常に重要になってくるものだと考えています。

 

長春号。顔の正面が見られるカット。

 

 父犬の母方に入っている楠号は、写真を見るとその形質を楠美女号に見事に伝えていて、本川原産らしい体躯の張りや、脂肪の少ない筋肉のいわゆる"堅さ"が見て取れます。腰が高く短毛系、綿毛も少なめで、はっきりした頬白も見ることができません。母である美智号の阿波系らしい特徴は楠美女号では隠されているようです。この様な雌を選択したことによって、長春号と楠美女号で父系の両親を本川系の形質で固めることに成功しています。

 

陸奥号の父方の祖母、楠美女号

 

 


 しかし、特筆すべきは、幡多系の山出しであるゴマ号が血統構成に入っていることです。血統を構成するすべての犬が本川系であったならば、これだけの近親交配ですと、犬の表現は矮小化するなど、良くない状態になっていたでしょう。強烈なインブリードで作出された犬は、体躯に"弱さ"が見られます。この様な弱さを防いでいるのがゴマ号と、雌では阿波系の美智号と考えられます。

 

 

ゴマ号(中124 昭和8年山出し)松本克郎氏と大舘友重氏のお二人とも、緋赤の鮮やかな赤胡麻だったと仰っていた。

第6回本部展 文部大臣賞ほか

 

ゴマ号別カット


 幡多系については、古城先生によると以下の特徴があるとされています。

 

『愛犬の友』誠文堂新光社 第25巻第6号 古城先生が執筆された記事「本川系と幡多系の系統と特徴」より

 

 高知県の幡多郡は、交通が不便で隔離的な土地だったため、本川と同様に他犬種との混交が行われず、純粋な犬が保存された地。平野が少ないが、本川地方のように険峻ではない。その関係から、体躯の特徴は「重厚」であると言える。耳は小さ目で色素と目切れは本川系に劣ることが多い。やや伸びが悪くズングリしているが、前駆がよく発達し、頭蓋大きく、いわゆる猪首で逞しい。概して骨量に富み、胸は広く厚く、押し出しは堂々としている。綿毛は本川系より多い。黒四つ目はほとんどおらず、赤もある。がっちりした柔道家か拳闘家のようでもあり、馬でいえば輓馬型である。欠点としては、胆汁質で体質上皮脂肪(原文ママ)が付きやすいことである。

 現実にゴマ号の直系と言うべき犬はいない。ゴマ-万嶽-猪智-初緑ぐらいまでは、その系統はあったが、系統繁殖ではなかった。終戦後、北村犬舎の松風号が、その体型、体質がゴマに似て骨量に富み、重厚感があり、かつ僅かながらゴマの血が入っていた※1のでゴマ系と言われていた。(以上、抜粋し要約)(be-so)

 

※1 松風においてゴマ号の血は、母系の祖父という形で25パーセント入っている。

 

 

 

血統編終盤へ。またちょっとお時間いただきます。

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