初心者同志 -66ページ目

朝の冷気。

「うわ、寒いっ」


朝起きて、仕事に向かおうと外に出た途端、

身を竦めたくなるような寒さに襲われたりすると、

思わず、そのまま家に逃げ帰りたくなる。


吐いた息は真っ白になった。

首筋をまるで切り裂くように走っていった風に、

思わず肩がぶるっと震えて、手をこすり合わせてしまう。


私は寒いのが苦手だ。


寒いのと暑いの、どっちがいいか、と訊かれれば、

断然、暑いほうだ。


冷たい空の下にいると、体がまったく動かない。

自分がさび付いた古い歯車にでも、なった気分になる。

油断すると、歯がガチガチと鳴りはじめる。


凍りついたように冷たくなった指先で、

あまりの冷たさに感覚のなくなっている耳など触ろうものなら、

ホラー映画のヒロインさながらの悲鳴をあげたくなる。


さらにそんな日に、雨なんか降っていようものなら、

きっと私は、世界のすべてを呪って一日を過ごすだろう。


身も凍るような寒さに加えて、さらに雨なんて!

ひ、非常識にもほどかあるっ!


それだったら、雪が降ってくれたほうが、まだずっといい。

見た目は綺麗だもんな。

すぐに払い落とせば、服も濡れないしさ。


でも、たとえば、

暖かい地方と寒い地方、どちらに住みたいか、と訊かれれば、

私は、寒いところに住みたい、と答えるかも知れない。


暖かいところは、一年中、いつも暖かい。

なんだか、それってちょっと退屈な気がするのだ。


寒い地方だったら、長く辛い冬のあとには、

必ず、暖かくて過ごしやすい時期がくる。


このときの幸せって、寒いところに住んでいる人で

あればあるほど、わかるんじゃないかなあ。


何の理由もないのに外に出て、

大声をあげながら、背伸びしたくなるのだ。


うん、やっぱり、私は寒いところが好きだ。

寒いのは嫌いだけど。


ああっ、なんてワガママなんだろう。

でも、寒い日を乗り切るには、多少のワガママも必要だと思うんだよなあ。




蛇に見込まれた蛙ハンター。

オンラインゲーム「MHF」 例解 日本語辞典



へび-に-みこまれた-かえる 【蛇に見込まれた蛙】

 ①恐ろしさに身がすくんで動けない様子。 ②とても対抗できない状態。

 ③睨まれた蛙、と間違えて覚えている人多し。


「何も悪いことしてないのに、パトカーが見えると、―――みたいになるのって、なんでだろ?」



MHFss201


へ、蛇に見込まれた蛙・・・・・・。

未確認飛行物体ハンター。

オンラインゲーム「MHF」 例解 日本語辞典




みかくにん-ひこうぶったい 【未確認飛行物体】

 ①その存在が確かでない物体。 ②確認できていない飛行物。

 ③UFO。


「昨日飲みに行った帰りに、―――を見てさ、携帯で撮ったんだよ。見る?」

「そういや、昨日おまえん家の奥さんから、電話あったぞ」

「なんて?」

「うちの―――がまだ帰って来ないんですけど、知りませんか?て」

「・・・・・・・・・」



MHFss200

未確認飛行物体っ!

その名は古龍、ヤマツカミ!

喧嘩の記憶。

まだ、私が小学生だったとき。


いつものように学校が終わって近所の公園に遊びに行くと、

そこで、同級生らしい二人組みに、

執拗にいじめられている小学生を見つけた。


彼らは砂場でその子の髪をつかんで、砂に押し付けたり、

蹴り飛ばしたり、振り回したりして、大声をあげて笑っていた。


いじめられている子供は泣いていて、されるがままになっていた。


そこは団地が立ち並ぶ地域で、公園の周りを囲むように

建物が建っているのに、そのときはまるで、

世界のすべてが廃墟となって、

人もみんな消えてしまったみたいに静かで、私と、

その公園にいる三人の小学生だけが、この世界に

取り残されてしまったみたいに感じられた。


そこに二人の高い笑い声と、一人の冷たい泣き声が

響いて反響し、その声は最後に私へと向かってきて胸に突き刺さった。


いじめられている小学生は無抵抗だった。


大きな口をあけて泣きつづけ、鼻水を流し、

それは流れ落ちる涙と一緒になって、

砂を巻き込んで顔にはりつき、腕は頭をかばうように上に掲げて、

まるで祈るように、ただ、時間が過ぎるのを待っている。


私は、声をかけたのだと思う。


もしかしたら、それはいいように記憶を変えているだけで、

実は、ただ向こうが、私の姿を見つけただけ

だったのかも知れない。


とにかく、私と、その公園にいた三人は目が合った。


とても不思議だ。

どうしてあのころの私たちは、喧嘩をすることに理由を

必要としなかったのだろう


私と目が合うと、いじめていた二人は慌てるふうでもなく、

すぐにどこかに行ってしまった。


私も、そこから立ち去ってよかったのだけど、

元々この公園へと遊びに来たのだし、なんとなく、

残されたほうの小学生のことも気になった。


私がその小学生のところに近づいていくと、

その彼は、私を見て、とっさに砂場の砂をつかんで

私に向かって投げてきた。


それから私は、その小学生と喧嘩になった。

お互いにつかみ合いになって、砂場の砂を容赦なく、

相手の顔に投げつけあった。


やがて、その小学生はその場から走り去った。


この記憶の中で、もっとも鮮烈に残っているのは、

そのあと、砂場で砂まみれになって、一人座り込んでいる

自分の姿だ。


小学生だった私。

懐かしい道を歩きながら、ふと思い出した、そんな記憶。


慣れ親しんだ道を少し外れていくと、

そのときの公園がまだあるのを発見して、私はパチリと写真を撮っていた。



hitokenonai kouen


記憶の中と同じ景色。

先日、小学生のときによく歩いていた道を通った。


その道を通ったのはまったくの偶然で、

そこは、ほとんど、思い出すこともなくなっていた場所だった。


でも、歩いているうちに、ここは自分が昔、ランドセルを

背負って歩いていた場所だ、と

ふと思い出して、しばらく動けなくなってしまった。


驚いたのは、景色が何も変わっていなかったことだ。

すごい速さで蘇ってきた記憶の中で歩く私も、

今、目の前にしている景色と、全く同じ光景の中を歩いていた。


さび付いた看板、ひび割れた道路、

傷ついて歪んだガードレール、赤い塗料の剥げた消火栓。

水の流れない側溝、何も植えられていない植え込み、

役割を果たしているのか怪しい電柱、

車の止まっていないガランとした駐車場。


私の実家があった周辺は、今では数々の

大きな施設が建ち、整備された道路ができるなど、

景色が一変してしまっている。


だから当然、小学校のころに見た私の景色も、

もう、残っているはずがない、と私は勝手に思っていた。


だから、当時の景色が今もまだあることと、

そして、その場所に今、自分が建っていることが、

すぐには納得できなかったんだと思う。


不思議だったのは、それが嬉しいのかどうか、

自分でもわからなかったことだ。


実家の周り景色がどんどんと変わっていくのを見るのは、

間違いなく寂しかった。

でも、昔のままの景色が今も残っているのを見るのは、

なんだかちょっと、複雑な気持ちだ。


なぜだろう、と、そのときは思っていたのだけど、

今なら、なんとなく、わかる。


きっと、景色は昔のままでも、わたし自身は、

昔の小学生だった自分には戻れないからだ。


そして、やっぱりこれも、喜んでいいのかどうか、

わからないな、と私は思ったのだった。


夏になると、涼しい日々が恋しくなって、

冬になると、暑い日々が恋しくなるのと似ている。


うーん、季節にも春と秋があるように、

大人と子供、そのどちらでもない時間が、あればいいのになぁ。