今回から来る次なる戦いに向けての北条時行くんのステップアップ、そして頼重さんとの遂に別離となる今回の回です。同時に連載開始時から気になっていた

逃げ若はどのような形で物語を決着をつけるのか?

史実を考える上で避けられない根本的な疑問に対する「答え」が用意されていました。詳しくは感想の後半で述べていきましょう。

それでは本編感想参ります。

 

〇任務からの解放

鎌倉近郊にある勝長寿院、諏訪頼重さんの最期の地となるこの寺院。惜しくも後に廃寺となってしまっており、今となっては僅かな痕跡を残すのみです。足利軍の追撃を逃れ、北条・諏訪軍の生き残りの戦士たちはここに集います。ここで叔父である祢津家の当主である祢津頼直から「嫡子・小次郎」の影武者の任務の解放を告げられるバンダナが取り外されます。生き残った諏訪神党の武士たちにとっても今や時行くんを再び匿うことができないのです。今や時行くんも頼重さんも建武政権に対する反逆の首謀者、彼らを匿うことは今度こそ諏訪神党そのものを滅亡を意味するからです。冷血でパージしているかに見える頼直の態度ですが…

祢津頼直「お前が信濃の外でお守りしろ。お前は充分祢津小次郎の名を上げた。今後は只の弧次郎として好きに生きろ」

それは今まで祢津家において過酷な境遇に置いていた甥に対するようやく見せた彼の配慮。そして遂にここから弧次郎もそれまで単なるオリキャラの少年武士から新たな成長を遂げるのです。幸い、逃若党の面々はすでに逃亡潜伏に向けての準備が整っていました。そのまま勝長寿院の中では既に時行くんと頼重さんの最後の別れの時間を過ごしていました。いつもは飄々としている風間玄蕃ですら沈痛な表情で、ここから重苦しい時間が始まります…

 

〇神様最後の宴の時


何か凄い楽し気ww

諏訪頼重さん「無理をしておりまする!無理をしておりまする!神力を使って無理をしておりまする!」さりりりり

といつもの調子の頼重さんにほっぺすりすり攻撃に晒される時行くんとその横で相変わらずポーカーフェイスで笛を奏でる雫ちゃん。彼ら神としての意地から明るくめでたく晴れやかに天に帰る選択肢として、この無駄に明るい空気で過ごしていたのです。インビジブル神様こと頼重さんの息子である時継。残されることになる息子の頼継のことを託します。

諏訪時継「時代の流れであの子は神力を宿していないが、人としての才覚に優れた自慢の子です」

ここでクソガキ…じゃないや頼継にとっては残酷な宣告。彼自身は神様としての自負があるのですが、残念ながら祖父や父のような神力を宿すことはできなかった。時代の流れは残酷です。すなわり諏訪大明神の神力は頼重さんと時継の代で途絶えることが彼らは知っていたのです。

 かくして一足先に逝くことになった時継と別れを告げる頼重さん。やはりかつて時継もまた父親からの頬ずり攻撃に晒された模様。何やってんですか、このショタ大好き現人神様はwwそれに対して自らの特性であるインビジブル能力を駆使して十二のころまで同じ布団に潜り込んでいたとこちらもまた諏訪家の重すぎる親子愛をカミングアウトする時継、かくして思い残すことの無くなった時継は安らかに息を引き取り…

完全に消えてしまいました!!

…雫ちゃん曰く、完全に姿を消しただけで実体は残っているらしい。これまで彼を揶揄していた諏訪玄蕃も神妙な表情で彼を弔い、本物の神と認めます。って今更かい!

 

〇南北朝のラスボス打倒への道標


紛れもない神であった時継の死を悼む時行くんたち。これほどの能力を持つ彼ですら、南北朝のラスボス足利尊氏の前では手も足も出なかった。そして今時行くんらは彼の人間離れした能力の前に完膚なきまで敗北を喫してしまいました。しかし頼重さんからは「心配ご無用!」と彼を「打倒」するための道標を時行くんに託します。

まずは娘である雫ちゃんに予知能力を託すと不意に告げると

雫ちゃん「え、い、いらない。私までインチキに見られる」(汗)

頼重さん「何を言うか!めっちゃあやふやだけど有難い力だぞ!」

雫ちゃん「うさん臭さが伝染る…」ふるふる

普段はポーカーフェイスで毒舌な雫ちゃんがめっちゃ本気で焦っている!こんな表情で慌てている雫ちゃんは初めてだぞww相変わらず無理矢理強引な態度で迫りくる頼重さん。2人が父娘でなければ、ヤバすぎるシチュエーションですww


ということで強引に頼重さんの「あやふや」な予知能力を継承させられた雫ちゃん。その継承された力で見える未来は

雫ちゃん「…永遠に続く無間地獄が見えます。素材…周回…課金…」

頼重さん「よし!なんかよく分からんが継承された!」

弧次郎(マジで必要かその力?)

何か明らかに原作者先生の「地獄」の境遇を見てしまっているような気がする雫ちゃん。本当にこれ必要なの?(笑)

そして時行くんに託されたのは「武器」でした。それは亡き実父の北条高時さんから託されていたもの。


おお、ここで「南北朝鬼ごっこ」にかけて北条家に伝わる名刀「鬼丸」が登場するか!

この刀実は『太平記』でも時行くんが父親の高時さんから受け継いだとの記録が残っています。それを最初の「鬼」である五大院宗繁を斬る時に一時預けていた、という形で整合性をつけていた松井センセイ凄い!まだ小学生の年齢程度の時行くんが斬れたのは北条家代々の加護による効果があったからです。そして南北朝のラスボス打倒の重要なヒントを与えます。

頼重さん「あらゆる武器と手段を使い、まず尊氏から『人間の動揺』を引き出しなされ」

人間的な動揺…それは

 

こんな人間離れした面白すぎ…じゃないや凄まじい顔芸の動揺などではない普通の人間の動揺をした時、神力は南北朝のラスボスから離れていく。

はい、答えが出ましたね。つまりここからの時行くんの戦いは尊氏を倒すのではなく、彼の中にいる「オニ」を倒し、普通の人間に戻す。史実的にもこれがやはり着地点として最適でしょう。そして南北朝のラスボスが「人間的」な動揺をするチャンスは

観応の擾乱のこのタイミングしかない。

よしどんどんとゴールに向けての伏線が見えてきました。そして逃げ若の物語はやはり観応の擾乱まで続くことが確定。

これまで「馬鹿明神」とかなんだかんだとひどいことを言っていた逃若党の少年少女たちは逃げる道をいいます。しかし、時行くんだけは分かっていました。もうこの道しかないのだと。

時行くん「でも私は貴方の死から逃げてはいけない」

これまで時行くんにすべての愛情を注いで育ててきた「父」の存在である頼重さん。その父から託された形で、別れを受け入れる涙を流す時行くんの尊さよ。それだけで頼重さんには満足でした。

遂に迫りくる尊氏の軍勢。いよいよ頼重さんと子供たちの正真正銘別離の時が迫ります。最後に時行くんがかけた言葉は


もうこれ以上の言葉は必要ありません。ああ、松井センセイが描く時行くんの涙の顔は本当に美しすぎて…