このところ記事更新が滞っていて申し訳ございません。転倒事故による左腕の痛み、睡眠不足による記事作成中の居眠り、歴史記事執筆のための材料集めetc…ブログ記事書くのがこれほど大変になるとは思いもしていませんでした。『逃げ若』も本来なら毎週木曜あたりを目標にしていながら、いつのまにか日曜日になっていたという愕然の事態。遅筆の大先生を怒る資格ねーじゃん!と言われても仕方なし。いや今回は本当に書きたいことがあったので私自身も忸怩たる思いがしていたのですよ。そんなこんなで遅くなって申し訳ございません。『逃げ上手の若君』感想記事をお届けします。『ナポレオン』最新話は来週日曜日記事UP予定。
よし自分で退路を断っておいたぞ
今回はやはり何といっても一番のポイントだったのは現代における歴史モノ描写に対するクレームをもギャグに変えてしまった高度なセンスを特筆したいです。ご存じの通り、現在では歴史を題材にした作品における特定の行動の描写に対するクレームが大きく特筆されるようになるのが現状です。それを現実での活動と史劇での創作とごっちゃにするのが噴飯モノなんですが、この手の論法が大手を振るえば、いくらでも歴史ものへのケチつけることなんて容易いんですよ。例えば、「差別」を描いたらその作品は「差別を助長する」なんて言われれば、描くことはできないですし、制作者が委縮してしまったら逆に歴史モノは成り立たない。むしろ変に現代的にされると「過去の歴史」とは異なるわけです。極端な例えを上げてみましょう。例えば1930年代のドイツを舞台にした作品で「作中でユダヤ人差別を描いているが、これはユダヤ人差別を現代に助長するものだ。だからこの描写は削除しろ」なんてクレームが成立するか…
そんなわけないでしょうが!むしろ「無かったこと」にしてしまう方がよほど罪深いでしょう。
ただこの辺なんでもかんでも描いていいか…と言われるとそれはそれで困る
作り手も見る側も一定レベルの節度と配慮をもっておこう
これに限るんじゃないでしょうか。その点、今回はなかなかに上手いネタを持ち込んだなぁ…と大笑いしてしまいました。それでは本編感想参ります。
〇ストップ!動物虐待
頼重さんの件で密談を行う仇敵・信濃守護にしてギョロ目の怪人小笠原貞宗と守護補佐役の市河助房。助房が「耳寄りな情報」として諏訪大社でおこわなれるイベントの件を進言すると貞宗が「策」を耳打ちして、諏訪への陰謀を進めていく・・・のですが、
距離が近い!というか「眼球伝導」って何だ(笑)
耳に目玉が接触しての伝達とか流石に助房も表面上は追従笑いしながらも「気持ちワル!」と内心では困惑を隠せません。
なるほどこれが「目が語りかける」というやつか
今回も「眼」が絶好調の貞宗なのでした。なお、この市河氏は北信濃で勢力を張る国人領主となり、戦国時代には上杉に臣従しながら、武田とも密かに接触するなど強かな国人領主であり、しかもこの時の書状の多くを残していたことが後年になって、『甲陽軍鑑』の主要キャラである山本勘助の実在が確定させるなど後の歴史研究にも大きな影響を与えた一族です。
「犬追物」
これは当時行われていたスポーツイベントであり、一定の区画の中に騎馬武者が逃げる犬たちに殺傷力の低い矢を当ててその得点を競うというものです。当然、犬は素早く動くものなので必然的に狙いを定めることは困難…そう普通の弓道の練習と違い、実戦では当然相手も動く人間ですから、その意味でも実戦に即した武芸であったといえるでしょう。また『太平記』第1話を見ればわかるように当時の犬も結構な獰猛であり、決して人間たちもひたすら嬲るようにしていたかというとさにあらず。結構血生臭いイベントではあります。
諏訪大社内でも行われるように当時としてはまったくの当然の行為。狐次郎が早速行いますが、さしもの彼でもなかなかうまくいかない様子。そして主人公の時行くんもこれに参加します。雫ちゃんから応援をうけますが、頼重さんが忠告します。時行くんの正体は諏訪の郎党にも内緒の最高機密事項。安易に本名を口に出してはまずいので別の名前で呼ぶようにという、頼重さんにしては珍しく真っ当な内容
雫ちゃん「じゃあ・・・『兄様』で」
と顔をお赤らめながら走り去る雫ちゃん。時行くんは気づいていないようですが。完全に「♡」の字。同い年の娘から「兄様」と呼ばれる破壊力にニヤニヤ笑いがしてきそうです。あ、でもそうなると例の『男の娘』疑惑はどうなるんだろう。
そこへ突如乱入する小笠原貞宗。信濃守護の自分が盛り上げるからといきなり飛び込み参加でその持ち前の弓の名手ぶりを披露します。そのすさまじさは時行くんも感嘆するほど。ここで「弓手」呼ばれる順手、とは反対の「馬手」と呼ばれる体をひねっての反対方向への騎射という敢えて難しい技が登場。すると普段はあれほど平然としている頼重さんが頭を抱えて震えだします。
頼重さん「違うのです…未来では動物虐待で確定でしょうが。この時代では普通の事で問題にされると困るっていうか…」
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
時行くん「誰に何を釈明しているの?」
大爆笑。まさかの未来からの「クレーム」も見落として釈明してしまう頼重さん。ハイ、冒頭のネタというはまさにこれですね。こうして「その手」の筋の方への予防線を張りつつ、それをネタにしてしまった松井先生の高度なセンスに脱帽です。
〇眼の怪人VS神様 第2回戦
自らの高スペックを披露して、更に飛び込みの役人一人が高得点マークしている現状を諏訪へのアカラサマな挑発する貞宗。いや、アンタのその能力にかなうやつなんているわけないだろ…
小笠原貞宗「おやぁ!?飛び入りの役人が一位を取ってしまうとは眼を疑った!」
普段から大きな眼球が更に巨大化した貞宗の目。だからデカすぎだってば。もちろん「目を疑う」とは比喩的なもので実際目を疑っている…わけではないと思う。多分。更に貞宗は諏訪一党に対して「賭け」を持ちかけます。犬追物で競い、貞宗が勝てば諏訪の領内で北条の残党を捜索し、怪しい者を取り調べを自由にするという明らかに貞宗に有利な賭け。勝手に飛び込み参加して露骨な挑発に殺気立つ諏訪一党。しかし頼重さんは冷静に分析します。現状は諏訪は後醍醐帝から信濃守護を公認された小笠原に迂闊に手出しできない。かたや貞宗もいかに北条シンパとはいえ、諏訪に正面から戦争を仕掛けられない膠着状態。だからこそ今は駆け引きが重要なのだと。敢えて受けて立つことにします。貞宗にとってはまさに狙い通り。彼にとっては何よりの目的は諏訪の権威を木っ端微塵にして小笠原に屈服させるという実に俗っぽいもの。ほくそ笑む貞宗でしたが…
◯ヘタレ主人公立つ!
ところが頼重さんが対戦相手としたのは「諏訪一番のヘタレ」と言う「長寿丸」という稚児。
もちろん主人公の時行くん(笑)
これには時行くんも唖然、読者も唖然。前回、隠れながら貞宗の弓術を盗み取れ!と無茶なミッションすら卓袱台返ししていきなり正面対決させようとは無茶苦茶な神様です(笑)それにしても貞宗を挑発するためとはいえ、仮にも庇護している主筋の少年にヒドイ評だ(笑)
これには小笠原貞宗もすっかり攻守逆転。
屈辱に震え出すうえに頼重さんは更なる「追加ルール」を提案します。犬だけではなく、他ならぬ対戦者の貞宗と時行くん同士の急所も得点対象とするもの。畳みかけるように頼重さん、またも変顔になって貞宗を挑発。
頼重さん「おやブルブル震えて怖いのですか?この前射た無抵抗の巫女と違って・・・この子は武器を持っていますからなぁ!!」
ブルブル震えだしてて可愛い(笑)貞宗の目にドヤ顔で迫る頼重さんの口、だから二人とも密だって!もうちょっとソーシャルディスタンスを取れよ!(笑)
それにしてもこの二人、犬猿の仲でありますがよく考えたら「人間離れした異能」「周囲もドン引きの変人」「底意地の悪さ」と実によく似た者同士ですね。違いと言えば眼と口の違いだけ(爆)
無論無謀な賭けに郎党の狐次郎、亜也子にまで反対されます。「ウサギなみの戦闘力」とか「若の弱さナメンな!」とか改めて見ると主人公に対して酷すぎる(笑)評価だ。しかし頼重さんは言うのでした。それだけの価値がある勝負だと。
頼重さん「断言します。戦いの後、貴方様は何かカッコいい技を習得するかも…しれないけど…どうかなぁ…」
時行くん「断言して!?」
おーい、ここは神様の力を発揮できる諏訪の地じゃないのかよ。まあ口から出まかせ言っている可能性が大ですが。ただいい加減な神様で終わらないなが頼重さんの頼重さんたる所以。問われているのは「北条の大将」としての気構え。そして時行くんもかつての鎌倉にいた頃の無気力な少年ではありません。今の彼には倒すべき敵がいる。
人外の強さと常人には理解不能な思考で動く「怪物」
ここでも登場してないのに凄まじい存在感を放つラスボス尊氏。そう時行くんはこの男との戦いでは逃げません。その不思議な魅力に雫ちゃんたちも密かに惹かれていく様子は実に少年漫画の王道を地で行く展開です。かくしていきなりの強敵・小笠原貞宗との正面対決、どうなるか目を離せません。無論、まともに勝負すれば話になりませんから頼重さんが提案した「追加ルール」が鍵になりそう。自らのプライドをズタズタにされ、怒り心頭の貞宗は時行くんに集中攻撃を加えるでしょう。そこは逃げ上手の時行くんが神回避していく展開を予想。
小笠原貞宗「小僧〜この貞宗を見くびった代償を支払わせてやる」
時行くん「請求は頼重様にして下さい」
すっかり胆力も身につけてきた時行くん、言うようになってきましたね。
それにしてもこの小笠原貞宗、何かに似ているなと思っていたらちょうどこれにソックリなことに気付きました。
(この怪物について詳細を知りたい方は「マヴラヴ BETA 光線級」でググッてみてください)
嫌悪感を感じずにはいられないデザインとどこか愛嬌を感じずにはいられないつぶらな瞳、完璧にソックリやん。これで貞宗も目からレーザー光線出したら完璧です。是非とも小笠原貞宗は「逃げ上手の若君」における
「キモカワ」キャラを目指して欲しい(笑)