十五夜間近の折も折
秋の訪れに流れ行く幾年月を想い送りつつ

雲間から覗く月を肴(さかな)に『ぐびり』と燗をやる。


そんな弛(たゆ)み感 とは裏腹に

腹の底から沸き上がって来る『何か』…

それは

『衝動』とも言うべき感覚。

『飢え』であり
『欲望』であり
『渇望』である。

己が未熟さ加減に天を仰ぎ見ると

すっかりとその姿を現した丸いお月様…


『まるで狼男だな』


思考回路まで酔いで箍(たが)が外れ始め

月明かりか酒の力か

根源という奴が無遠慮に這い出して来る。

どんなに浅ましくとも

どんなに短絡であっても

それが源(みなもと)である以上

飲み込み消化しきれずに

月夜の折りに這い出す。


『いいじゃないか』


月夜の狼男は

己の『青臭さ』を肴に

今日も『ぐびり』とやるのである。



毎年恒例の事だが

繁忙期が終わり社内の各部署が一斉に『お疲れさん会』と称して打ち上げを始める。

年末商戦前のほんの一息である故

この時ばかりは自己脅迫観念の塊のようなボス(失礼)も何も口を挟まない。

戦い傷付いた狼男と狼女達が鋭気を養う時期でもある。


我が部署も昨日遅くまで打ち上げがあり

わたくしは朝帰り&まったく記憶無し。

向かいに座る総務の四橋さん(三十路の美人妻)も恥じらい気味のあくびを禁じ得ぬ様子で

潤んだ瞳とやや放心気味である。

パソコンに向かうわたくしの盗み見を見透かすかの様に四橋さんが『ぽつり』と呟く…







『昨日は・・・・凄かったですわね』





なっ何がっ

すっ凄かったっ のでっ

ごっございましょうかっ!?

『羊の皮を被った狼』にございますかっ!?

はたまた『連敗明けの阪神の底力』にございましょうかっ!?


『おまえは虎だ!虎になるのだ!』

行け行けタイガー

リーグ優勝目前にございます(^^ゞ
『リサイクル品の方が高いんですわ』

闇雲にエコを推進する上司の頑固さに辟易したのか

総務の四橋さん(三十路の美人妻)が艶っぽくポツリと呟く。


大量消費型の社会を見直すという事は

必ずしも『消費しない』事では無い。

『消費生活』によるゴミや排熱、排気(排泄)が『悪徳』であるならば

我々は殺生する食生活を改めるべきだし

呼吸もすべきでは無い。

『消費する事』は

『生きる事』とある種同等のニュアンスを持つ。

日本人の美徳と評される『勿体ない』でさえ

一歩間違えるとガラクタの中で壊死しかね無い程に

取り扱いが難しい。


誤解の無い様に申し開きするならば

わたくし自身は

『歩くエコライフ』
『ロハスのリーサルウェポン』を自認し

忍(しのび)が懐に手裏剣をしのばすが如く

常に『マイ箸』を携帯している。


『古いパソコンにウィルスソフトをインストールしたばかりに亀よりも鈍く(失礼)なり作業効率を著しく損じた…』

そんな『無駄』な経験がおありではなかろうか。

『無駄を無くして素早く事を成し余裕をもって先へ進む』

これこそが真の『スロー・ライフ』ではないだろうか。


『それぞれの生活で』
『自分に見合ったスピードで』
『無駄を無くしてゆく』

月並みだが『自分に出来る事から始める』のが肝要です。


そんな事を考えつつ

退社する総務の四橋さん(三十路の美人妻)を

牛が反芻(はんすう)するかの如くゆっくりと眺め見送る。

先程の上司から言付かったリサイクル品の件が納得いかないのか

プリプリと怒る様な後ろ姿に

その腰もまた左右にプリプリと然り。

(『とても中学生のお子さん二人もいる様には見えませんな』)


『スロー・ライフ我関せず』


そんな四橋さん(三十路の美人妻)の魅惑の腰つきは




微かにインナーを覗かせた『ロー・ライズ』にございます(^^ゞ
灼熱にゆらゆらと浮かぶは

砂上の楼閣にも似た

遥かに届かぬ悠久のミラージュ…

決して辿り着けないあなたの王国は

手を伸ばした瞬間に音も無くすり抜け

澄まし顔でゆらゆらと微笑を湛えている。

追う程に窶れ果てるその身をけらけら嘲るが如く

『苛み足りぬ』と言わんばかりに

ゆらゆらと揺れて無慈悲に誘う。

掴んだ錯覚は歪小な夢のメタファであり

掛け替えの無い『時』と『己』を対価に

二乗倍に均しい速度で

はらはらと崩壊する。

押し付けのグローバルなスタンダードなど

ゆらゆら揺れる曖昧なアイデンティティにして

量子としてのあなたはゆらゆらとして

速度か位置のどちらか一方でしか無いとしても

マクロに於いては唯々風景に塗り込められる

ゆらゆらとした事象に過ぎない…としてもだ


最近『失うこと』に

あまりにも慣れすぎやしていないか…






ゆらゆらと揺れるキャンドルのむこうから

らんらんと見つめる双瞳には焔が映り

彼女の大きな瞳はきらきらと極彩色の光を放つ…

まるで獲物を値踏みする手練のハンター
であるかの如く

『いざ狩らん』とばかりに

大きく開いた胸元を妖艶に強調する。

(『…こりゃ火傷しそうだ』)

独りごちた後ひたすらにワインを痛飲し

ふらふらと立ち上がる。


彼女に気付かれぬ様にフロントにたどり着き

人差し指を交差してチェックを求める…





『四季の特別コースをお二人様とシャンパン、赤、白それぞれボトルご注文頂きまして、締めて2万5千円にございます』


にこにこと愛想の良い店員が言い放った言葉に

頭はくらくら

体よろよろ…である。


やんごとなき『罪と罰』の報いの末

『何でも奢る』とは言いましたがね

ヒエラルキ最底辺『お小遣制』のわたくしには

少々荷が重うございましょうぞ。




嗚呼いっその事

ゆらゆらと揺れる蜃気楼に

成って仕舞いやがれでございます(^^ゞ