降車する者とて幾らもいない夜のホームで

対岸に佇む見覚えのある女性(ひと)に目を奪われる


役立ちもしない『過日の焦燥』という名の記憶のネジが

時計を逆さまに回し始め

見るほどに

その面影は濃さを増し

気恥ずかしさに

ケイタイやら眺めるフリをしたものの

記憶の底から浮かんで来る『彼女』は

依然からの当然の如くとばかりに

『対岸の彼女(ひと)』にぴたりと重なってこの目を離さない

彼女の

くるくるとよく動く大きな瞳が

悪戯っ子の様に微笑を含み

微かに吊り上がった口角は

愉しい事々に居ても立っても…といった具合である


『背が高い』のを少し気にしていたはずが

ヒールを履くその姿は威風堂々として

思い出の中の泣き腫らした顔まで

『嘘よ』と今にも笑い飛ばしそうだ


別々に流れた時間が

何物にもかえ難い何かである様に

しゃんと伸びた背筋から

輝きが溢れ出さんばかりである


自分の中の一つの時計が

今その刻みを止め

筋違いの安堵と手遅れの喪失感に

『フィクション』さと呟き

『へくしょん』とくしゃみを一つしてみた



かわすべき言葉も無いまま

『対岸の彼女』は到着した電車に乗り込む

一時代と言う程の

埋まるべくも無い大きな溝に戸惑いながらも

視線だけは逸らせず

穿った言い方をすれば

『間違えようも無く』

『彼女は彼女』であり

二律背反の中で二重存在

『ドッペルゲンガー』で在る事を彼女が選択したのであれば

遠ざかる電車の『半減音と減輝する光』と相俟って…







さしずめ



『ドップラゲンガー』に

ございましょうか(^^ゞ
まどろみの中で

たゆたう夢もあれば

悪夢の様な現実から

逃れる白昼夢もある


届かぬ夢を追う者と

夢の骸(むくろ)を抱き続ける者


認知って奴が正体ならば

現実と虚構の間には

たいした違いなんてありゃしない


夢見て眠れ

そして

夢の中で目覚めろ


終わらない夢幻の中で

善くも悪くも

もがけばいいさ


そう…


『出来るだけ』ね






高校生の夏

夜遊びのフィナーレを飾るべく

出回り始めたばかりの『カラオケボックス』にしけこむ。

『順番で他の者から指定されたアルファベットで始まる洋楽アーティストの楽曲を最低ワンコーラス歌う』

ロシアンルーレット方式のデスマッチルール。


『R』で『リック・アストリー』の

『Never Gonna Give You Up』

『S』で『スティング』の

『Englishman in New York』を

ネイティブ・ジャパニーズ全開(発音)で歌い切る。


(伊達に『J-WAVE』聞いとらんぜょ)


鼻息の荒いわたくしに突き付けられた


お題『D』…


落ち着いていれば

迷う事無く『(デビット)ボウイ』


浴びる程飲んだ炭酸飲料(未成年故ジンジャーエールであったに違いない)の悪戯か
命取りとなる取り返しのつかないセレクトミス…



『えぇ~』(若干エコー)


『Dead or Aliveのぉ~』

『Turn around and count 2 ten歌いますぅ~』



くねくねと

男らしく野太い声で

刹那く妖しく

ハイエナジーかつハードゲ…ハードに歌い上げた高1の夏 …

恍惚に酔いしれるわたくしとは裏腹に

『マジどん引き』とばかり一様に気分を害す我が学友達…




彼等にとっては正に

『夏の夜の悪夢』でございましょうか(^^ゞ






追伸


…やっぱり


夢に出て参りました…








『ピート・バーンズ様』…



おちおち眠れませぬ(笑) (^^ゞ
挑んでこそのローテックと

敢えて不得手な剃刀(かみそり)にて

我が揉み上げを微調整中に

誤って『すっぱり』と…


切り落とす。


己のテクニック不足を呪い

茫然自失で鏡に映る自分の顔を凝視…

しばしの沈黙の後

反対側の揉み上げも


すっぱりと切り落としてみる。


もう怖いものなど何も無い。

若干短髪気味の『テクノカット』に見え無くもないと暗示をかけて

シンメトリだけは取り留めた絶妙なテクニック。


妻は

風呂から出たわたくしの顔…正確には揉み上げを数秒間凝視した後

預言者の占託の如く


『片桐はいり』と呟く。


『…ち、違く無い?』




『じゃあ…
     アメリ?』


いかなる神(髪)の御技(みわざ)にて

『似て非なる、決して交わらぬ両者』が

『銀幕』とかくも掛け離れた

『揉み上げ』から縁を結びあげられた事やら…

その技術たるや正に『ハイテクノロジィ』。


…男達よ

易き事、便利な事に慣れすぎやしていないか

文明にその牙を抜かれてはいないか

姑息なテクノロジーなど捨ててしまうがよい!

『コンビニ無くとも住めば都』
『盛って飾れよ錦』

である。

瑣末な事など揉み上げと共に『すっぱり』と潔く切り捨て

華麗なドライビングテクニックで今日も風切る営業車(助手席には取引先W嬢)…




1H(アワー)幾らの休憩(又は宿泊)施設を横目に

極ナチュラルに『信号待ち』を装って停車する高度なテクニック。

これまた極々ナチュラルに



『 … ハ イ ッ テ ク ? 』



そよ風に消え入る昭和のテクノポップ宜しく

ほぼ半減音で囁く。


寸分の疚(やま)しさも垣間見せ無いピュアな心が紡いだ言葉…





彼女の答えは風の中にございます(^^ゞ