熟女会(つづき)
8月最後の週末。
日曜日。
この日も暑かった。
昨日のマダム達はまだ姿を現さない。
砂浜をサイフを持った親子が歩いていたので、
お客さんかな?と見ていたら、
その親子の向こうに日傘の集団が見えた。
いた!
昨日のマダム達だ。
日傘を差して波打ち際ではしゃいでいる。
暑さに懲りたようで、土曜日とは違い、もっと夏らしい服装になっている。
それでもセレブ感が出ている。
しばらく遊んだ後、日傘の群れがこっちに向かって移動を始めた。
まるて海面にいるクラゲが波に流されているみたいだ。
そして、オレに向かって、
「こんにちは。今日もお邪魔するわね。」
と言った。
土曜日と同じ砂浜に面したテーブル席を確保し、
同じようにかき氷を注文した。
もちろん抹茶シリーズ。
待っているとき、ひとりのマダムが、
「あら、これ2PMじゃないの。」
と言った。
今年の夏は韓国黒酢のキャンペーンを行なっていた。
テレビのCMで流れていたやつだ。
売店に宣伝用に貼ってあったポスターを見て、
「やっぱりいいわねぇ。」
と言っている。
オレが、
「ファンなんですか?ポスターならありますよ。」
と言うと、
「え!?本当に?」
と目を輝かせた。
まさにキラキラという感じだ。
「どうぞ。」
とポスターを手渡すと、いきなり広げて、
もう一度、
「やっぱりいいわねぇ。」
まわりで見ていたマダム達も、
「あら、いいじゃない。」
などと言っている。
「まだあるから差し上げますよ。」
と言うと、
「私も欲しいわ。」
「私もいただこうかしら。」
結局、3人にあげた。
「せっかくだから、これも持っていきます?」
と言って、店頭に置いてあったうちわを見せた。
メンバーの顔がひとりずつアップで映っている6枚セットのうちわだ。
こちらも今回のキャンペーングッズ。
「まぁ、うれしい。」
とかき氷とグッズを持って自分達の席へ。
そこから嵐のような韓流談議が始まった。
「〇〇っていいわよねぇ。」
「あら、△△のがいいわよ。」
「私は□□がいいわ。」
などと物凄い勢いで話しているが、
オレには誰のことなのかさっぱりわからない。
やっぱりおば様は韓流スターがお好きらしい。
それにしても熟女会は、女子会とは違った迫力がある。
熟女会
8月最後の週末。
土曜日。
いきなり現れた7人のおば様方。
いわゆる熟女だ。
黒のロングドレスに黒のレースのストールを羽織っている。
日傘を差し、もう片方の手でスカートの端をちょっとつまみながら砂浜を歩いている。
それぞれ違うが、みんな似たようなスタイルだ。
ちょっとセレブなマダムといった感じ。
そのマダム達が売店の前で、
「ビーチサンダルはあるのかしら?」
などと話している。
オレは、
「ありますよ。サイズは?」
と聞いた。
足元を見ると、幅が狭くヒールが高い街歩き用のサンダルを履いている。
これでは熱い砂の上では役に立たない。
「24センチくらいだけど、あります?」
オレはビーサンを出して、
「ちょっと足を乗せて合わせてみてください。」
と言った。
マダムが足を乗せると、
「あら、ピッタリ。これいただくわ。」
と言い、
「あなた達はどうするの?」
と他のマダム達に聞いている。
多分、このマダムがリーダー格なのだろう。
「私もいただくわ。」
「私はいいわ。」
と口々に答えている。
結局、4人が買いビーサンに履き替えた。
そして、
「中で休ませていたたいてもいいかしら?」
と聞くので、
「どうぞ。」
と席を勧めた。
「かき氷が食べたいわね。」
「そうね。」
と注文にきた。
注文は
抹茶
抹茶ミルク
金時
宇治金時
やはりおば様方は和風のものを好むようだ。
それから2~3時間、かき氷を食べながら、もの凄い勢いでしゃべり続けた。
誰が誰に何を話しているのかまったくわからない。
ただ、「あら」とか「まあ」という相づちだけは聞こえてくる。
一応、会話は成立しているようだ。
女子会ならぬ熟女会だなと思った。
そして、話し終わったマダム達は席を立ち、
「また明日もお邪魔するわね。」
と言って帰って行った。
というわけで、
日曜日につづく。
お見事!!
お盆休みのある日のこと。
夕方。
この日は、お客さんが引き上げるのが早かった。
オレは、売店の横のテーブル席に座り、海を眺めるなから、
そろそろ片付けを始めようかと考えていた。
そんな時、
砂浜をひとりの女の子が、
砂浜をこちらに向かって歩いて来るのが見えた。
そして、
その後には彼女を追うようにひとりの男が小走りで近づいて来る。
売店の手前でその男は彼女追いついた。
「すいません、今何時ですか?」
と聞いた。
彼女は携帯を見て、
「もうすぐ4時半です。」
と答えた。
男は、
「俺、終電までまだ時間があるから飲みに行かない?」
と言った。
ウケを狙ったつもりだろうが、つまらないナンパの手口だ。
彼女は、
「あ、そうなの?あたしはもう終電だから帰るね。」
とサラッと言って歩き出した。
一瞬、呆気に取られた男。
立ち去る彼女。
男はそのままあっさり引き返して行った。
彼女がオレの前を通ったとき、
その光景を見ていたオレと目が合った。
オレが、
「お見事!!」
と言って、小さく拍手をすると、
彼女はニコッと笑って、そのまま歩いて行った。