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Vol.20 Fabulous New Yorkers (7) 林緝光

林緝光 アーティスト、アートコレクターのラム・ジャップ・ジャングさんとの出会い



ラムさんと出会ったのはもう15年以上前です。

日本のメンズ誌にラムさんの素晴らしい中国アンティークのコレクションとアーティストとしての彼を紹介したのがきっかけで、今ではかけがえのない友人になりました。


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ラムさんと奥さんのマリーアンさん

マンハッタンにあるラムさんのギャラリーにて


共産党革命を経験したラムさんの人生は、私のような平和で平凡な人生とは比べ物にならないくらいの壮絶な人生です。

彼は銀山を持っている裕福な家に生まれたため、革命では親戚は殺され、すべてを失い、カナダ経由でニューヨークに来ました。


すべてを失っても中国人の彼のパワーは衰えません。

ニューヨークでは映画ビジネス、レストランビジネス、メディアビジネスを手掛け、すべて成功して今ではとてもお金持ちです。


様々な分野を手掛けましたが、ラムさんにとって一番好きなのはアートなのです。

子供のころからアーティストになりたくて、絵の勉強をしましたが、家族からは銀山を継げといわれ、いやなら勘当だと宣告されました。

ラムさんはお金よりもアートを選び、1日3時間の睡眠で働きながら、絵を勉強しました。


「僕は成績がとてもよかったので、中学生で飛び級して大学まで行きました。生意気でもあったので、もしアートがなかったら、僕はギャングになっていたかもしれないね」というラムさんは、言われればどこか中国マフィアにも見えるような気が・・・・


絵の先生からラムさんは目利きと言われ子供のころから中国アートのコレクションを始め、コレクション歴は50年以上。

米国に来てから、中国のアートが評価されずに安く売られていたので、中国を代表するような気持ちで買い求めました。

彼のコレクションはBC 16-11世紀の商の時代から数千点を数えます。


そして、今の中国ブームで、彼のコレクションが再評価され人気を集めています。

現在、彼の生まれ故郷の広州に中国政府がラムさんのために4階建てのミュージアムを建設中です。


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中国のラムさんの美術館の着工式典で


400点ほどをラムさんがコレクションから寄付をし、ラムさんの絵、書なども展示されます。

アーティストしてもコレクターとしてもこれほどの名誉はないでしょう。

2011年の春にオープンの予定ですので、是非、行ってみたいですね。


今、ラムさんは陳列するアートの解説書きに追われています。

またニューヨークにある彼の“Art Collectors’ Gallery”では年4回、アートオークションを実施しています。


よき人生のパートナーであるマリー・アン(趙明心)さんが、パンフレット制作やオークション運営などでラムさんを支えています。


このオークションには全米の中国人や、中国からのバイヤーが100名ほど参加し、何百万、何千万円もの中国アートがどんどんせり落とされ、今の中国の熱気を感じました。


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ラムさんのギャラリーで行われたオークション


次回のオークションでは香港のササビーズやクリスティーズでも注目を集めた清朝の乾隆時代(1736-1795)の花瓶がラムさんのオークションにも登場します。


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香港のオークションカタログ 清朝の花瓶が表紙に


予定落札価格は4-6ミリオンドルだそうです。


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清朝の花瓶 ゴールドが鮮やかなオープンウィンドーのある2重構造の花瓶


ラムさんがいかにお金持ちかというエピソードを紹介しましょう。

競馬馬を持っているというので、「勝つことはあるの」と聞くと「いつも勝つよ、だって全部自分の馬だから」とさらりと言うのです。

「それは面白くないですね」と言ってみましたが、なんとも迫力負けですね。


でもラムさんも奥さんのマリーアンさんも決してスノッブではなく、明るく元気で私はいつもエネルギーをもらっています。

気前はいいけれども無駄なお金は使わないという徹底した合理的な考えにはいつも勉強させられます。


www.HongKongAuctionGallery.com にアクセスしてみてください。

ラムさんのコレクションの一部を見ることができます。


ラムさんの興味深く壮絶な人生を本にしたらと前から勧めていましたら、最近、中国人ジャーナリストと一緒に書き始めたそうです。


日本語版で読める日が来ることを待っていますよ、ラムさん。