打撃のエッセンス(11) バッターの目線
バッティングの基本のひとつに「ボールをよく見る」というのがあります。球種やコースを見極めるために球筋をよく見ることは大切ですが、これと同じ意味で使われる「インパクトまで見る」というのは現実的ではありません。一流選手たちの目線を確認してみてください。テッド・ウィリアムズハンク・アーロンケン・グリフィー・ジュニアバリー・ボンズミゲル・カブレラマイク・トラウト松井秀喜球速が120km/hを超えると、ピッチャーのリリースからインパクトまでの時間は0.5秒もかかりません(リリースポイントからインパクトまでを17mとして計算)。スイングの始点であるトップからインパクトまでの時間はおよそ0.15秒ですから、バッターが決断してスイングし始める時、ボールはバッターの約5m前方にあることになります。バッターはリリースから5m前方までの球筋を見て、ホームプレート上のどこにボールが来るかを予測し、そこに向かってスイングするのです。人間の目は17m先から120km/hで迫ってくる直径7cmのボールにピントを合わせ続けることはできません。ですから、ピッチャーがボールをリリースする直前に、先回りしてスイングを決断する5m前方に目線を移します。目線を移してもそこに焦点を合わせるわけではなく、リリースポイントも視野に入るようにぼんやり見ます。こうすることでボールの軌道を“線”として捉えることができます。ボールが近づくにつれ視野は狭まり、5m前方に達する頃にはボールにしっかりと焦点が合います。この後2m前方くらいまで、つまり視界から外れるまでボールは見えていますが、インパクトまでは見ることはできません。これを頑張って見ようとすれば肝心なリリースからの球筋が見えなくなりますし、すでにスイングが始まっていてバットの軌道修正などできないインパクト直前までボールを見ることに、そもそも何の意味もありません。それよりも大切なことは、5m前方までの球筋からホームプレート上の球筋を予測する感覚を養うことです。フリーバッティングという練習はそのためにあるのです。最後に、自他共に認める史上最高のバッター、テッド・ウィリアムズのコメントを、著書『The Science of Hitting』(邦題『バッティングの科学』)から引用します。“見る”ということはどういうことだろう。私の視力は0.5(※)だ。人並みである。誰かが私が回転しているレコードのラベルを読めると書いていたが、そんなことはできない。バットがボールを打つ瞬間も“見る”ことはできないが、それは感覚でわかる。優れた大工は金槌が釘に当たるのを見ることなく、いつでもきちんと釘を打つものだ。私は視力が優れていたのではなく、たくさん練習したのだ。※欧米と日本の視力検査は同じではないので数字は参考程度に。本人が「人並み」と言っているのだから人並みなのだろう。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■このブログの内容をはじめ野球に関する質問や相談を受け付けますよ(ただし向上心のある選手や指導者に限ります)メールかTwitterのDMでどうぞ↓3210@goo.jpbaseballmaster■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■