たまふの書物語まりふ -10ページ目

737 魔法使いルーフィ

人間を模した、コンピュータの構造だから

もし、自由自在にプログラムを組める人々なら

それはつまり、自分の脳の中で
何を考えているか?


を、客観視する事。



コンピュータプログラムは、どんなものも
数値化して、計算する。


それだけの事だが、人間の思考も実は
同じである。




だけど、人と人はネットワークでつなげないから

心の中で思っている事を、一度言葉や
数式に置き換えないと、伝えられない。




誤解も曲解も多い。


それに、心で思っている事を
上手く伝えられない事もあるから




みんなが知っているようなイメージを

使って伝えるのが、言葉。



愛、って言うとなんとなくイメージできるけど



それぞれの脳の中で思っているイメージは違う。



平和もそうだ。



例えば、アイルランド移民でアメリカ大統領に

アイゼンハワーの後に就任したケネディは



愛と平和の心の持ち主だった。けど



その愛も平和も、アイルランド的なものだったし


移民的なものだったので




例えば、黒人と仲良くしたりした。


そういう事が嫌いだ、と言う白人もいた。



そういう時、嫌いな人々にとって


ケネディの愛は、攻撃性として映る。





そんな理由で、暗殺されたりするのも



愛と言う共通のイメージが、コンピュータの


システムファイルのように、数値化されていないから。


もっとも、ケネディの時代にコンピュータは
なかったのだけれど。

736 魔法使いルーフィ

深夜に至ったので、そろそろお開きにしようかと(笑)


もともと、神様同士だから
心で通じ合えるので
会って話さなくていい(笑)。


でも、なんとなく人間っぽい行動に
なってしまうのは
人間のスタイルをしているからである。



言葉で考え、イメージで想像する。



そんな時、詩人はlylicalに、音楽家は
音楽のようにイメージするだろう。


それらは、長く地上で生活しているから
3次元的な、空間イメージが元である。


人間ではないなら、6次元であろうと
11次元だろうと、1次元だろうと



イメージできるはずだが、それを

伝える手段はもう、言葉ではない。




そんなもので、生きる次元が違う神様たちは

言葉で伝える事は、実は必要なかったりもする。





そんな神様たちの傍らを、JR西日本のベージュの
制服を着た車掌が通り掛かるが



深夜に至って、ビールと中華で楽しくしている
神様たちを一目見て「お静かに」などとは
言わない。



長らく接客をしている車掌は、顔を見れば
大体、迷惑を掛ける人々かどうか、は
見当がつくのだ。



それは、養殖の鮎と天然の鮎が


顔つきが異なるのと似ていて(笑)



普段、している行動や思考に
顔つきが慣れてしまう、と言う事で




人間なら、環境に慣れてしまうと

言う事でもある。





神様なら、環境など苦にもしないから
顔つきは自然に、のどかなものになる。

736 魔法使いルーフィ

そう、過剰な攻撃性を持つ人々の多くは

不幸にして、幼児期に
容認と安堵を得られなかった、かわいそうな
心の持ち主である。

なので、物質や金銭、名誉などで
自らの安堵と安定を求めようとする訳であるが



それは、心の奥底の空虚感から来るものだ。

なので、
治癒すれば健康になれると、神様たちは
考えた。





「まあ、それも人格、パーソナリティのひとつって考えもあるが」と、めぐの国の神様は


自分の国で、すでに行ってしまった事を
振り返りながら。




列車、サンライズエクスプレスは


漆黒の闇を駆け抜け


いま、丹那トンネルを抜けた
深夜23時。



そろそろ、皆が夢に落ちる時間だ。

735 魔法使いルーフィ

「でも、昔から都市はあったわ。パリだって、ロンドンだって」と、フランスの女神。


「そう。愛されないで育った子供にとっては
苦痛なんだよ。規制されると。
服従させられた記憶がね、無意識にあるから。
だから反発したくなるのさ」と、ドイツの神様は
さすがに医学の国らしい(笑)。





都市は、結局人工物であるから
誰かの脳の中のイメージで出来たものだ、と

養老孟司先生も言う通りである。



不幸にして、愛のない母親から生まれた子は

親の都合で、無理強いをされて育つ。




親の脳の中のイメージ通りになんて、子供は
出来っこないのに。



そんな事すら分からない母親に、傷つけられて
育った子供は、だから規制に従うと

無理強いされた無意識の記憶を思い出すから


不快になる。



なので、意味もなく逆らう。


エスカレーターで歩くな、と言うと
むやみに歩く(笑)



幼稚この上ないが、当然で
その時、心が幼児に戻っているのである。



それを、アメリカの精神科医たちは


反抗挑戦性障害、などと呼ぶ。




エスカレーターで言えば、その時
道を空けて寄っている人々には、何等
苦痛でないのに、それができない人々もいる。




治療は簡単で、その古い記憶を呼び戻して

それは不条理だ、と消し去ればいい。



遠い過去には、脳外科手術でそれを
行ったりした。


いまは禁止されているロボトミーである。



麻酔で仮眠状態にして、記憶を操作するのは

どこかのカルト宗教が使って有名になったが

それも、もともとはアミタール面接と言う
医学書に書いてある方法だ。




人間は夢を見るとき、記憶を整理するので
魔法使いめぐのように、夢を自由に見る方法を
知っていれば、それを操作できる。


神様は、それを使おうと考えても見た。


スタンリー・キューブリックの「時計仕掛けのオレンジ」のように本埜木阿弥にならないと
良いけれど(笑)

734 魔法使いルーフィ

「でも、根本的な事を言うと、攻撃性が高まるのは他の人間が近くに来るからさ。人間は
殖えすぎだから、もう、昔に戻る事なんて出来ない。
だから、競い合って殺し合おうとするんだよ。
」と、ドイツの神様は生態学的な常識を述べる。





「だから、女の子でも闘争的になってしまうと言うの?」と、フランスの女神は
やや、哀しむように。




「確かにそうだね。母親からどんな動物も生まれるけれど。
その母親が、愛を持っていなくて、
子供を攻撃していたなら、始めから愛なんて感じた事はないだろうし。そうなれば、女の子だって
性と暴力しかないだろうな」と、アメリカの神様は言う。






「だが、人間は動物じゃないさ。知性があるんだ。
弱い者を助けるって文化だし、他ならぬ
授乳ホルモンと言われる、プロラクチン、オキシトシンが作用すれば、心穏やかになるじゃないか。

生物として遺伝的にある構造は、まだ変わってないんだよ。


ただ、ここ数年の日本人はそれを忘れているだけさ」と、アメリカの神様は


いかにもマテリアリズムの国らしい言葉を述べた。

733 魔法使いルーフィ

そんな、魂、言ってみれば
文学的に言えば、心ない人々が
親の世代だったなら。


子供は、もし

おじいちゃん、おばあちゃんのいない家族だったなら



その、親たちの間違った人生を見て


悔しい気持ちを持って育ってしまう。



誰かが[善悪]を教えなければ
[損得]で生きてしまう。



悔しい気持ちにならないように、手段を
選ばずに優位に立とうとする。




つまり、辛い時に優しくされた経験がないからである。




もし、優しくしてもらえた記憶があるなら
優しくなれるし、弱い者を守るために

頑張ってしまうのだ。





松下幸之助は、会社が潰れそうな時も
決して、社員を首になどしなかった。


そう言う気持ちは、辛い時に
優しくされた気持ちから起こるものだし


それもひとつの愛である。





「じゃが、わしは
日本の事よりも、自分の国に侵略しないで
くれればそれでいいがの」と、めぐの国の神様は言う(笑)。



日本に、知り合いも少ないし(笑)。

まあ、それも自然な感情かもしれない。




博愛と言っても、別に苦労してまで


よその国の事にまで口出す事もない、そんな
風に思っても
別に罪でもない(笑)。






「真の日本人は、別にイジメなどには
関わらないだろうがな」と、出雲神は言う。

元々、徒党を組むと言う発想は
旧来の日本にないもので


大東亜戦争を企てた連中が、民衆を
抑圧するために

考え出したものである。




隣近所で、監視しあって
軍部に協力させたりと言うような

非民主的行動である(笑それが虐めの構造に引き継がれている訳だ。)


ちなみに、民法でも勿論禁じてある。

私人間で力を行使ってはならない、と。



明治に出来た民法ですら明記されているのに
守らなくて良いと思っている軍部などは



要するにバカの集まり(笑)だし
虐めをする連中も同じである。




もちろん、真に日本を動かしている民衆は
そんなことはしない。



関わらず、さらりと自由に生きているのだが。

732 魔法使いルーフィ

深夜、23時。
東海道線を西に下るサンライズエクスプレスは
今、熱海に停車し
箱根をトンネルで抜ける。


多数の犠牲者を出した難工事、丹那トンネルを
最新鋭のインバータ電車は、静かに走り抜けてしまう。



路盤が多少歪んでいても、空気バネ台車の
弾性は、眠りについた乗客に伝える事もない。



多数の犠牲者、と言うけれど
ひとつの命は貴いもので、それぞれに
家族があってこの世に生を受けた、と
思うと心が痛む。


その時代には、男が周囲を分け隔てなく
見守るのは当然であった。



生き物の本質であり、強い、力を持つ者は
弱い者を守るのは当然である(民法に年少者庇護の条文があるように。)


それが、損得勘定が入ると壊れてしまう。


例えば、ライバル会社と商戦になっても
昭和の時代なら、フェアに行ったものだった。


いつか、仲間になる事もあったし
日本の場合、官僚主導で業界へ行政指導などもあったりしたせいもある。



例えば、家電メーカーのビクターは
経営に困った時、日産自動車や、松下電器の
支援を受けるように通産省が指導したり
した事があったりもした。
外資にも関わらずである。




今は、そういう指導を企業が聞き入れない事も多い。


目先のお金儲けが第一で、投資家達の
意向を気にする、つまりは


日本的な協調性にはなじまなくなってくる。



昔なら、とりあえず
大人の男が、傲慢な態度を取るのは
恥ずかしい事であった。





それが、その場凌ぎの損得で
態度を変えるような恥知らずの男が
増えてしまった。



損得勘定は相場次第だからである。

魂のない男。



それは諸悪の根源である。




例えば、部下を虐めてコストを下げろと
上司が言ったからと言って、戦前の男なら


そんな、恥知らずの事はできないと
拒否するはずである。






損得より、善悪が第一だからである。




今は、そうではないので



子供がイジメをするのは当然である。
損得なら、当然そうなる。




そういう社会で育つと、表面だけで
中身のない人間だけになるから
愛がなくなる。

731 魔法使いルーフィ

愛を、損得勘定に踏みにじられてしまった
哀れな女たちが、母になると
めぐの家に居る、今は猫に生まれ変わっている
元、悪魔くん。

彼も、もともと人間に生まれた頃の母がそうだった。
そのせいで、彼は魂の行き場を失い
空虚感から、暴力行為に走って
そして、死して悪魔になった。

人間だった頃、盗んだオートバイが日本のスズキ製だった事は
何かの因果かもしれない。

そう、スズキのオートバイには魂が入っていたから
彼は、それに魅かれた。

空虚な心を満たすものは、例えば機械でも良いのである。


それが、文学でもいい。


作家でも、たとえば太宰のように
心の空隙を埋めるために、神経に効く薬を買うために
(当時は禁止薬物ではなかった)小説を書いて売っていた。

それが、後で文学と呼ばれる。


ロートレックが、心と体が不自由なために
女性の絵を描き続けたりするのも

それを訴求するからであるし、鑑賞する人に
似た、心の動きがあればそれが胸を打つのだ。



若い男にとって、少女の姿は象徴的な愛である。

それは、勿論抽象的なモノで

多くの年老いた女が言うように、即物的な肉体を想っている訳では
もちろんない。


大切にしたい存在と、心を分かち合いたいだけなのだ。


それさえあれば、男は無闇に攻撃などしないものであるし

愛する存在と、その周辺を大切に守りたいと思うものだ。





そのためには、貨幣は一定の基盤に沿って不変であるべきだし
労働の対価も、従って安定であるべきなのだ。






神様たちは思う。
このまま、1950年代に戻し

安定した世の中を、この日本に与えるべきなのだろうか?



730 魔法使いルーフィ

神様のように、具体的に
愛すべき存在がある者は、幸せである。

その為に、働くと言う目的が
とりあえず発生するし


行動力を平和目的で使えるからである。




それのない人々が、無差別に攻撃をすると言うのは
例えばジグムント・フロイドの説明を
聞かずとも理解しやすい。


心に愛、つまり、オキシトシン
の刺激がない時だから

攻撃、つまりノルアドレナリンが
働く訳である。

同時に作用できないから、拮抗する事もない。


その、メディカルな方法を使ったのは
魔法使いルーフィだったが


今は、能力をなぜか失って、自分の世界へ
戻って行ったから


今、それを使えるとしたら


めぐ、くらいだろう。

729 魔法使いルーフィ

「じゃが、一番困るのはのぉ。損得勘定には終わりがないって事じゃな。
欲望も限りなくなるし、どんなものでも損得が
根っこにあると無間地獄だろう。
どこまで言っても満足しない」と、めぐの国の神様は言う。



もし、女の子がそんな環境で育ったら。



お金の為に、べつに自分を売り物にする事も
なんとも思わない者も出てくるだろう。


いや、結婚などは売買だと割り切るのは
この日本でも一部、そういう風潮があって。


そのあたりから、日本は荒んで行ったような傾向もある。



若い男たちにとって、幻のような愛を
見出だせなくなると、後は

性しか残らない。

攻撃しかなくなる。



どこかの失格柔道選手みたいになる訳だ(笑)。





神様は、めぐたちの群像をイメージした。



あの子たちの平穏を、侵してはならない。