2011年シーズンにその1/3、1/2、2/3、そして終了時点で
“イメージ”として悪評のすっかり定着してしまったライオンズ救援陣について
果たしてそれは主観的なイメージだけではなく客観的なデータとしてもあらわれているのか、
またそうならば一体ライオンズのリリーフ陣のどの部分のデータが最も悪く
これから集中的に改善していくべきなのかを詳細に見ていきましたが
( ※参照 : 48ゲーム消化時点 → 【 データで見るライオンズ・リリーフ陣 】
73ゲーム消化時点 → 【 データで見るライオンズ・リリーフ陣 vol.2 】
97ゲーム消化時点 → 【 データで見るライオンズ・リリーフ陣 vol.3 & 牧田投手の先発・救援別成績 】
144ゲーム消化時点 → 【 データで見るライオンズ・リリーフ陣 vol.4 & RECAP 】 )
今シーズンも同じ手法を用いて、救援陣の成績を
24ゲーム(シーズンの1/6)終了ごとに客観的なデータで振りかえり
またそのデータの推移をグラフを用いて示していきたいと思います。
( ※なお、使用している用語についての詳細は
【 用語集 ( Acronyms, Abbreviations & Jargons ) 】 に記載しておりますので、あわせてご確認ください )
【 防御率について 】 ( ※再掲 )
投手を評価する指標として最も用いられるのが防御率ですが
この指標はある程度1人で長いイニング、連続して打者と対戦する先発投手用の指標であり
かわるがわるマウンドに上がり、人数をかけて失点を防いでいく救援投手にとっては
非常に不適切な指標だと判断し、ここではばっさり切り捨てております。
※失点、自責点ともに打者でいう“得点”-つまり「被得点」-であって
本来は打者と同じように“打点”-つまり「被打点」-のほうがより重要。
さらに言うと、打者の打点がランナーを置いての打席の多い打者に多くなるのと同じように
投手の「被打点」もランナーを置いての登板が多い救援陣に多くなるのもあたりまえで
よってこの投手の「被打点」もデータとして比較して使用するのは意味がない。
だとすれば、ライオンズ救援陣を評価するデータとして何を抽出するか。
・・・答えは代わる代わる打席に立つ、打者用に築きあげられた指標を
投手用にひっくり返して用いること、となります。
【 24ゲーム終了時点での生データ 】
※なお、ここでいう先発陣とはゲームの最初にマウンドに登り投球した投手で
それ以外の2番手以降の投手はすべて救援陣に含めております。
24ゲーム終了時点=5/3終了時点ですので、先発陣にも救援陣にも両方に名を連ねているのは野上さんはのみです。
例によって、このデータを少しわかりやすく加工します。
【 9イニング=1試合へ換算する 】
まずはここまでのライオンズ投手陣の分担イニングをそのまま9イニングに凝縮します。
そうすると、結果9イニングあたり先発陣 6 1/3 イニング・救援陣 2 2/3 イニングとなり
平均して先発陣はおおよそ7回1アウトまでを担い、そこで救援陣に交代し
救援陣はそこから9回終了までの8つのアウトを担っていることがわかります。
そしてそれぞれの担うイニングを消化する過程において
それぞれがどれだけの打者と対峙し、いくつの安打を浴び、いくつの四死球を与えるかが
その右のデータのあらわす数値となります。
これを見ると、ライオンズ救援陣は7回1アウトからの 2 2/3 イニング、
つまり8つのアウトをとる過程で平均12.2人の打者と対峙しており
四死球を1.19個奪われ、安打を3.3本浴びそのうち二塁打以上の長打は0.86本で
奪三振は1.8個ということになります。
次に、先発陣と救援陣の残してきた成績を比較しやすくするために
どちらも9イニングを先発陣だけ、もしくは救援陣だけで担当したと仮定した場合の
それぞれの安打数、四死球数などの平均本数、個数を表示します。
救援陣の成績の悪さが一目瞭然ですね。
唯一奪三振が先発陣より多いだけで後はすべて先発陣が優秀な成績、
特筆すべきは先発陣より1個近くも多い四死球の数、そして
安打数でも9イニングあたり2本以上の差を記録しており、また
長打(特に二塁打・本塁打)が多いのも心配ですね。
【 パ・リーグの各球団および平均データとの比較 】
最後に、ライオンズ内での比較だけではなく
パ・リーグ5球団のデータと、またライオンズを含んだリーグ平均のデータとの比較を
様々な指標を使って行っていき
また2011年シーズンの最終実績 → 24ゲーム消化時点 → 48ゲーム消化時点 → 72ゲーム消化時点
→ 96ゲーム消化時点 → 120ゲーム消化時点 → 144ゲーム消化時点 の順で
その推移をグラフにて追っていきたいと思います。
※なお、ライオンズ以外の他チームおよびリーグ平均のデータは
えるてんさんがプロ野球 ヌルデータ置き場にて集計なさったものを利用させていただきました。
この場を借りて心より御礼申し上げます。
まずは5/3終了時点(=ライオンズ24ゲーム終了時点)での
各チーム、及びライオンズ先発陣/救援陣のデータを表にてご覧いただきたいと思います。
そして更に視覚的にわかりやすく観ていただくために
それぞれのデータの推移を折れ線グラフにて観ていただきます。
残念ながら、これがライオンズ救援陣の惨憺たる現実です。
ほとんど同じメンバーが守備に就くライオンズ内でにおいて
BABIPが先発陣と救援陣とで大きく異なるということですから
この部分についてはおそらくシーズンが深まっていくにつれ
同じような値に近づいていくことが予想されますが
その以外の部分について、ほとんどどのデータにおいても
ダントツで物足りない値を示していることは非常に心配ですね。
昨年、救援陣の成績の悪さをみて牧田さんをクローザーに指名したのが
ちょうど48ゲームを消化した時点での決断で、
【 データで見るライオンズ・リリーフ陣 vol.4 & RECAP 】 で示した
2011年シーズンの投手陣の成績の推移をグラフで表したものを観ていただけると一目瞭然ですが
その配置転換が功を奏し特に48ゲーム → 72ゲームにおける
ライオンズ救援陣の成績の推移が劇的に良化した2011年シーズンでした。
今年2012年シーズンも、昨年のちょうど半数の24ゲームを消化しただけの時点ではありますが
涌井さんをクローザーに指名し、上で観ていただいたような非常に悪い救援陣の成績を
2011年同様に今後良化させ、また安定させていこうという意図がひしひしと感じられますが
今シーズン、牧田さんを再び先発に配置転換したと同時に
また2011年シーズン序盤と同じような非常に悪い成績となってしまったリリーフ陣なのですから
この涌井さんの配置転換も十中八九続いて2012年シーズン一杯ということもあり
これだけでは残念ながら対症療法にしかならず
今のままでは涌井さんを先発に戻した途端に元の木阿弥、再びライオンズは救援陣に足を引っ張られ
思うように順調に勝利を積み重ねていけない時期が長く続くことになることがじゅうぶんに予測できます。
この牧田さん、そして涌井さんの配置転換にしても
いずれも現状戦力の中で首脳陣ができうるギリギリの、最高の英断と言ってよく
それ以上を求め、安定して素晴らしい成績を残していけるブルペン陣を構築するには
当然のことながらフロントオフィス、編成陣による積極的な補強やトレードが必要不可欠です。
もちろん、スグに素晴らしい結果を残すリリーフ・ピッチャーを補充することは
特にシーズン途中であれば更に、非常に難しいことですが
それならば近年、特に統一球導入後カッターや2シーム、シンキングファストボールなど
“動く速球”を得意とする先発投手たちが数多く活躍し結果を残していますから
先発投手を補強し、現有戦力の“先発投手候補”である若い才能たちを
数多く救援陣へと配置転換するなどの発想の転換もありでしょう。
そしてライオンズ球団内で、伝統的な評価指標だけに留まるのではなく
若く才能あふれる才能たちが安心してブルペン陣で活躍できるような
チーム独自のリリーフ投手のための評価指標を整備していくことも必要不可欠でしょう。
いずれにせよ、この救援陣の再構築のためには
フロントオフィスの積極的な補強を始めとした対策が欠かせません。
今後のフロントオフィスの動きと、それに伴うリリーフ陣の成績の向上を期待しつつ
今後もライオンズ救援陣の残していく成績を、そしてその推移を見守っていきたいと思います。