映画評 「フルスロットル」~ポール・ウォーカーの遺作にして傑作「アルティメット」のリメイク・・・ |  書店員バツ丸の気ままにエンタメ

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・評価:80点



マフィアたちがはびこる無法地帯となっているデトロイトの一角。そこに潜り込み、マフィアの動向を探る潜入捜査官ダミアン(ポール・ウォーカー)は、彼らがデトロイト市民300万人をターゲットに中性子爆弾を起動させようとしている情報をつかむ。彼は、マフィアにさらわれた恋人を取り戻そうとする圧倒的身体能力を持つ男リノ(ダヴィッド・ベル)と協力し、10時間後に迫る中性子爆弾の起動を阻止することに。敵が次々と立ちはだかる中で爆弾と恋人を捜す二人だが、事態の裏には巨大な陰謀がうごめいていた。


非常に残念ながら「ワイルド・スピード」シリーズを始めハリウッドを代表するイケメン俳優であるポール・ウォーカーの遺作。

観ていてどうにも既視感がありありとするなと思ったら、丁度10年前に公開された、

世界が誇る変態監督にしてアクション監督としても優秀なリュック・ベッソンの傑作作品「アルティメット」のアメリカリメイクとはね・・・。監督は別人ですが・・・。

いや、まあ、何でそんなことをしたのかわかりませんが・・・。

よって、政府や警察すら手に負えない無法地帯の面々に「中性子爆弾」を強奪され、その爆破を阻止するために、凄腕の潜入捜査官と圧倒的な身体能力を有す地元の生まれ&育ちの男がタッグを組んで、数々の敵や難題を排しつつマフィアの本拠地へと乗り込む。しかし、実は彼らが入力せんとする爆破阻止のコードが爆破の起動コードであり、捜査官もろとも街ごと吹っ飛ばさんとする市長の巨悪な陰謀であった・・・。

という基本プロットは同じ。

ですが、敵マフィアのボスの扱いと、マフィアに捕らわれるのがリノ(オリジナルでは名前がレイトですが)の妹ではなく、恋人(妹は出てこない)になっていること、そしてリノの相棒となる男が軍人ではなく元々潜入捜査官であり、舞台となる街のマフィアのボスと因縁浅からぬ関係にあること、

などが大きな違いになっています。

ベッソンのオリジナル版に比べると、テンポの良さやストーリーが洗練されており、「映画」としての完成度は高いと思います。

しかし・・・。

それが率直に面白さにつながっているかと言うと疑問が・・・。


こういう作品って映画としての些細な瑕疵がどうこうというよりも、そういったものを問題とせず、アクションや作品のテーマの表現のためにどれだけ痛快で面白く、作品として突き抜けているかが重要なのであります。

フランスではなくアメリカを舞台にしており、そもそもの文化や政治システムなどの違いもあり、どうにも観ていてしっくりしないのですよね。

致命的なのが、決定的な相違点であるマフィアのボスの扱い。いや、確かに街を護っていたとはいえ薬を裁きまくり、人を殺しまくりのこいつが、まさか・・・。

これはアカんでしょう。

マフィアのボスはオリジナル同様、改心などせず、とことん畜生で居てほしかった。


そして、もう一つはアクション。

前作から10年経ったこともあり、流石のダヴィットもオリジナルの時のような見事に絞れた体ではなく・・・。今作単独で観たのであれば、依然凄い彼のパルクールやアクションにほれぼれとし、感動できるのですが、やはりオリジナルとの差は否めません。

いや、シーンそのものは、下手をするとその構成等でオリジナルを上回っているのですけれど、とにもかくにも、主役の身体能力の圧倒的且つシンプルな凄さを痛快に感じ取れる点に関しては、オリジナルには勝てていません。

致命的なのがカメラワークの酷さ。臨場感やスピード感を出さんとしてるのか、やたらと接近してぶれまくりで酷すぎ。論外。

やたらとカメラのブレでごまかすアクション映画が多くてほんと辟易します。「ボーン」シリーズもその悪しき典型例ですが・・・。

今作出演の面々であれば、そういったごまかしをせずとも十二分に凄さが伝わるはず。そもそも、この手のアクションは少し引き気味でしっかりと対象をとらえて撮る、ってのが基本中の基本です。オリジナルはこの基本に忠実な良いカメラワークでした。アメリカならではの糞手法と言うべきか?

気持ち悪くなるし、画面は認識できないし、って糞レベルに酷い。


で、最後、良くも悪くも今作を特徴づけたのがポール・ウォーカー。

彼はほんと男前。惚れ惚れとする程に男前。元々運動神経も良いのか、アクション面も非常に健闘しています。

しかし、当然ですけれど、様々な格闘技に精通し、アクション俳優としての実績もあり、ダヴィットに匹敵する身体能力を有していたシリル・ラファエリには到底及ばず・・・。

その変わり、彼お得意のカーアクションでは魅せてくれましたけれど、やっぱり違うのですよね。それ「アルティメットじゃない」と。

それと、彼が男前すぎて浮きすぎているのですよね。確かに温厚そうで端正な顔立ちの中に少しの悪っぽさが垣間見えるのが彼の大きな魅力ですけれど・・・。

同じ潜入捜査官設定である「ワイルドスピード」シリーズでは感じなかった違和感がどうしてもぬぐえません。

いや、その理由は明白なのですが。

ようは、相棒のダヴィットは別にして、雑魚キャラをはじめとして敵キャラの魅力が乏しすぎで、ポールのかっこよさだけが別次元的に浮いてしまっているのが、その違和感の根源。

「ワイルドスピード」でも、各キャラの特性上主要キャラ全部がいい男ではなかったですが、少なくともヴィン・ディーゼルやドウェイン・ジョンソンは文句なしにかっこいですし、「ユーロ・ミッション」での敵役もそれなりに魅力的であったので、ポールのかっこよさだけが際立つことはありませんでした。

そのあたり明確に差がつきすぎて、シリル・ラファエリ演じたくそまじめで思考硬直型の軍人が故に潜入捜査官であることを看過される点とは全く違う、「単にイケメンすぎる」からという酷くしょ~もない理由でチンピラに見えないというのはほんと情けない・・・。

いや、ほんとどんな馬鹿でも見破れますよ。


まあ、以上細かな所で不満はありますし、私的「心の名画選行き」である「アルティメット」には到底及ばなかったですけれど、今作そのものはそれなりの作品であるとは思います。

リノの恋人ローラを演じたカタリーナ・ドゥニがエロすぎて敵わんですね。南米女ならではの、手足の長さのみならず、無駄な肉が全くなくキュっとしまった体とおケツ。その健康的な肉体美に不肖バツ丸、前かがみでございます。

オリジナルのローラを演じたダニー・ヴェリッシモは小柄でキュートな魅力を振りまいてましたが、それとは真逆の魅力で堪能させていただきました。

コロンビアーナ、万歳!!


しかし、くどいですが、ポール・ウォーカーはいい男だった・・・。

今ハリウッドの男優の質がほんと酷いことになっており、未だにブラピやレオ様やジョニー・デップといった、もうオヤジどころではない面々が前線で出張っているのが何とも悲しいですが、

彼らに変わりうる逸材の1人であった彼の逝去は、ただただ残念でなりません。合掌。