血糖値が高いと言われて二日早く入院した。毎日四回の血糖値の検査をしている。
数値は130~160 時には199位だった。200を超えたらインシュリンを打つと言われていた。
自宅では酒をあまり飲まなくなってから夕食後に菓子やリンゴを食べたりしていた。
菓子はマズいかと止めたがリンゴは毎日一個食べている。
昨日の夜、売店をうろついて、つい牛乳パックとパイナップルを買って食べてしまった。
病院の食事でも果物が出ることもある。
夕方六時に果物を食べても夜八時に食べても、それほどの違いはないだろうと思った。
それが間違いだった。
夜九時前に血糖値の検査があって、数値は240を超えていた。実に100も急激に上がってしまった。
考えてみれば、食後に次第に血糖値が下がっていくのだろうが、検査の直前に食べたのだから当然の結果だった。
直ぐにインシュリンの投与がなされた。
ほんのちょっと針を刺して液体を投与された。こんなものかと思った。
糖尿病になれば、毎日これをするんだろうな。
看護師から、小言を言われた。バツが悪かった。
自分の部屋は二人部屋なのだが、隣りには19才の大学生が居る。
東大生らしいが、気胸で急遽入院してきて、昨日手術だった。
その手術が急遽決まったものだったこともあるが、当日に予定していた別の人の手術が長引いていた。
当初は午後と言われ、ずれて夕方7時になって、結局夜中の10時過ぎに彼の手術は始まったらしい。
約二時間超の手術が終わって部屋に戻ってきたのは夜中の二時過ぎで、その後、処置やら面会やらで三時過ぎまで音や声がしていた。それまで自分は寝付けなかった。
彼の手術開始時間が余りに延びたので、明日に変更する案も提案されたようであるが、明日も重要な手術が控えているとの事で、夜中ではあったが開始されたようだ。
手術となれば多くの人が従事することとなる。いろんな役割の人が必要であり、総合的にサポートして手術がなされる。勤務時間の制限などあってないようなものだなと思う。しかも人の命を預かる仕事なのである。
それを考えるとやはり、医療に従事する仕事は責任も伴うが、崇高なものだなと思うことが多い。
患者の立場から思えばありがたい話である。
K医師からカンファレンスの結果を告げられた。
新たに見つかったリンパ節へ転移したと思われる腫瘍の処置についてである。
結果的には、同時に手術で削除してよかろうと言う結論だった。
当初の説明でも、多分一緒に切れるとK医師は説明していたものである。
但し、手術は一人で判断するものでなくチームとしてその処置で良いかを協議して決めるとの事。
一人の独善的な判断ではなく、チームとしての判断をして手術に望むと言う事らしい。
肺に転移した二つの腫瘍を胸腔鏡による手術で切除するという判断も、今回のリンパ節にできた腫瘍を
同時に切除するという判断も呼吸器外科で可能と判断してくれていると言う事になる。
それはリスクは勿論あるものの、ある程度の自信を持って目的を達成できると言う判断で、手術することを請け負うと言うことになるのだろうと考えている。
リスクが高すぎる場合や、前例がないパターンではなく勝算がある手術であると思いたい。
今日は夕方から手術の説明がある。
以前の手術と基本的には変わらないが、違う点を中心に説明したいとの申し出だった。
K医師からPET検査の結果が説明された。
「概ね大丈夫でした」と言われたが、含みがあった。
色のついた画像を見せられて、肺の二か所が赤くなっていた。以前と同じ場所だった。
実は、もう一か所気になるところがあるんですと告げられた。
肺と接触している部分の内側が、数か所青くなっていたが、その一つを指して説明した。
リンパ節の部分ですが、これが非常に気になるところです。
これも今回と同様に腫瘍だと思われます。との説明だった。
しかしながら、これは今回の手術で同様に切除可能だと思われますとも説明された。
実際には明日のカンファレンスで他の医師との協議で決まりますとの事だった。
具体的な部位の名称は聞いたようで忘れてしまった。
正直、残念だった。新たな腫瘍は出ていないと思っていた。
しかし、現実は違った。まだ、癌の勢いは止まっていなかった。
一方で、こうも言われた。
大腸癌は転移をするたびに切って、そのうちに出なくなって完治する場合も有るんですよね。
珍しい話ではないらしい話のようだった。
要は転移する威力が次第に落ちて、それ以上の転移が無くなると言う事かも知れない。
どこまで切ったら、どれ位まで行ったら、癌の威力が落ちてそれ以上の転移がなくなるのか。判らない。
考えてみれば、今回の新たな腫瘍の発見も残念ではあるが、がっかりする必要もない。
小さいうちに見つけてもらったと考えれば、逆にラッキーだったと考えられない事もない。
根元の大腸癌は切除して二年後の内視鏡でも異常はなかった。
だとすれば、癌細胞の新たな供給は絶たれているので、残った腫瘍の種がもつ勢いがなくなるまで待つしかないのかもしれない。
それまでに勢いのある種が腫瘍になれば今回のように手術で切るしかないのかも。
昨年の六月に、一度肺に転移した腫瘍の手術をして摘出したが、年末にかけて再度転移が確認された。
手術から3~4か月での再発であった。
当初はショックだった。或る程度は覚悟していたが、実際にこれだけ早くに再発を告げられることになるとは思わなかった。
その後、年明けから抗がん剤治療を行ってきた。
三か月の区切りで再度、CT検査をした結果、肺にできた腫瘍を小さくすることは叶わなかったものの、新たな腫瘍の転移もないと言う事で再手術と言う事になった。
当初から抗がん剤で腫瘍が消えることは無いだろうと言われてきた。
多少の望みは持っていたが、小さくなるどころか以前より増大している事実にがっかりもした。
これを手術できるのであれば、選択しない手はないと考えている。
但し、削除したとしても今後、更なる転移がないという保証もない。
不安定ではあるが、それはしょうがない事であろう。
今は、兎に角自分の体内にある腫瘍を切除して新たな目を摘んでしまいたい。
またまた、一週間延ばしとなっていた抗がん剤治療が、無事に終了した。
だいぶ慣れた抗がん剤治療ではあるが、今回は医師より薬の量を少し減らしましょうと提案された。
前回もそうであったが、二週間しても白血球の数が標準値に戻らない事から更に治療が一週間伸びたことを考慮しての事であるようだ。
今回も一週間延ばして採血した結果は、治療OKであった。
それでも、今回は副作用によると見られる吐き気も見られるなど結構きつかった。
それに毎度のことだが、治療終了後に自宅まで帰る段階で疲労と吐き気などが一気に襲ってくる。
今回もカミさんに迎えに来てもらって事なきを得たが、やはり体力がなくなっているのであろうか。
それでも、自宅へ帰って風呂に入り好きなものを食べていると復調してきた。
現金なものだ。
次回の予定を医師と相談しようとしたところ、医師からは三か月の当初の予定分を終了しているので、CT検査の結果を含めて担当医師の診察を受けたところで継続するかどうか判断しましょうとの事だった。
既に三か月も経過していたんですね。
明後日に医師の診断がある。
胸の腫瘍が小さくなっているのか、新たには発生していないのか、手術と言う判断がなされるのかどうか。
そういえば、以前担当していた呼吸器外科の担当医師も異動されたらしい。引継ぎされた新しい担当医師にも会いたいし意見も聞いてみたい。
季節は春。桜満開だ。 いい話を聞きたいものだ。