「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド -6ページ目

「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド

ブラジル移民から世界放浪 若い頃にフラッシュバック
消せないアルバムの話。

初夏のパリは空気が変わり空は青くなる。

 

時間を重ねると、友達会話も近くなり「歳下でも、段々とタメ口になってるな」

 

嫌な時と気持ちいい時とあるけど「話しのテンポが今一のらないな」

 

信州の子は元気だ「ねえ 又 サンジェルマンでワインいいですね」「うん いいけど」

 

「この前の続きだけど、ブラジルの話を聞かせて」「じゃあ リオの海の話をしようかな」

 

ダラダラ話して内に遅くなったので「もう帰ろうか」「そうですね」

 

今まで知ってる子とは可成り違う「真面目で垢抜けない感じ」洒落が通じない。

 

それでも友達になっていく。

 

そんな時、店のバイトでソルボンヌ大学の学生がいた、彼女はフランス語を教わっている。

 

彼が、信州の子が好きになったみたいで「告白されたの」彼女が俺に言う。

 

「え〜 そうなんだ、それで」「うん〜 嬉しいけど 今はね」「私は後一年半で日本に帰るから」

 

「じゃあ 彼にちゃんと言わないと、それが大人の対応だよ」「わかった そうする」

 

こんな話の相談にのるなんて、俺もおじさんジャンルだな。

 

ある日、又 日本から新しいサービススタッフが来た「二十代後半かな」

 

少し気位が高く「挨拶が上からだ」。なんか嫌いなタイプの女性。

 

その人は信州の子とは仲良くなり「今日 三人でもいい」「いいけど 俺 大丈夫かな」

 

突然、気位の高い彼女が「ごめんなさい 今日はよろしくお願いします」

 

いざ三人で、サンジェルマンで飲んで会話してみると「なんか気さくな感じ」

 

「私し日本から逃げて来たの、好き男に振られて」「その人には奥さんがいたの」

 

奥の深い大人の話しになってきた「ついていけない」

 

「ねえ 彼と付き合ってるの」、信州の子と俺は同時に「友達」「えっ あはは」

 

「気づいてないね、友達以上にしか見えないよ」信州の子は黙ってしまった。

 

その日は雰囲気が変になりお開きに。

 

次の日、気位の高い昨日の彼女が「お昼 私に付き合ってください」「えっ 何」

 

「後で話すから」「わかった」

 

近くのカフェで彼女が「昨日はごめんなさい、少し飲み過ぎでペラペラと」

 

「信州の彼女はいい子、だから つい 口が軽くなって」

 

「でも 彼女はあなたの事は好きよ」「本当に 俺は旅人だよ、まさか」

 

「鈍いね でも 大事にしてね」なんかお説教された感じだ。

 

その夜、今度は信州の子が「お茶して帰ろう」声をかけてきた「昼の事が聞きたいんだな」

 

店の隣のカフェで会った「お昼 何の話したの」「昨日の話、軽口が過ぎたって」

 

「なんだったっけ」「お酒飲んでの話なんで、よくわからない」

 

季節が夏から秋に変わる、最高のパリの時がやってくる。

 

「人も景色も心地いい季節の始まり」俺の季節も変わりそう。

シャンゼリゼ通りの裏通り、ダルトア通り。

 

ここ通りの小さな和食レストラン、ここに若者が集まる。

 

毎日がドラマの様な青春物語、キャストも千差万別で男も女もだ。

 

ウェーター、フレンチのコック、美容師、ファッション関係、スキープレーヤー

絵描き、バックパーカー族等々。

 

「こんな時間は二度とない、真似も出来ない、お金じゃ買えない、最高の自慢だ」

「あの時の出来事を全部話してみたい」

 

ある日曜日にスキープレーヤーの車で、バックパーカー族、絵描きと自分、

パリ郊外にドライブした。

 

途中の道沿いにイチゴ狩りの畑があった。

 

スキープレーヤーが「イチゴが好きだから食べたい、絵描きも賛同」

皆んな金も無いのに「気楽な連中」「食べ放題だからお昼ご飯だ」

「食べた食べた」どの位食べただろう、そして 笑った笑った。

 

「何を話したかあの時間」青い空、一面のイチゴ畑

 

あの日のあの時間「忘れられない」出来るならタイムトラベルしたい。

冬のパリ、コートの襟を立てマフラー姿が似合うパリジェンヌ達。

 

カフェは、笑いながらの会話を楽しむカップルが目につく。

 

俺は夜中の2時にパリを出て、ランディス市場に週二回の仕入れの日々。

この仕事も慣れたけど「朝は暗く寒いな」「早く春が来ないかな」

でも、市場で朝飯のタルティンヌにカフェオレ「これは最高、バターがうまい」

空が明るくなる頃にパリ市内に戻る、道が綺麗に掃除されたシャンゼリゼは美しい。

 

10時には作業が終わり眠りにつく。そんな時「トントン」ドアのノックで目があく。

「ごめん もうお昼休憩なので」、信州の彼女だ「いや もう起きようしてた所だから」

「カフェでも行こうか」、すっかり仲の良い友達になっていた。

「今度の休み、ベルサユーでも行こうか」「いいね」

 

春は未だ来ないけど「楽しい パリはいいな」、ルーブル美術館で絵を鑑賞したり、

サントノーレの高級店で、買えない商品を見て楽しんだり「いつか買えたらいいね」

冬は会話が多くなり、お互いを見てる時間が長い。

 

春が近づくと、パリの日差しが強くなり空が青くなる。

 

「パリジェンヌ達も春近しって感じだ」、信州の彼女も「少しパリ色になってきたかな」

「今度 電車に乗って葡萄畑を見に行こうよ」「どこの ボルドーかな」「いい〜ね」

そんなプランが次々に出てくる。

 

ある日の朝「今でも目に浮かぶ」。店の表の方で何やら騒がしい「イミグレだ」

誰かの声が聞こえた。俺は地下の裏にいた「ダメだ 逃げなきゃ」

裏口から、荷物を抱え知らんぷりして近所のカフェに飛び込んだ。

 

「バイトの仲間どうしてるか」、通りの向こうの店から仲間達が連れていかれる。

「大丈夫かな」言葉にならない。俺はそのままアパートに戻り荷物をまとめた。

 

「トントン」「わたし」、ドアを開けると彼女だ「もう大丈夫だから 店に来てって」

店に行くと女将さんが「店は当分休みにします」「落ち着くまでバイトの人達は自由にして」

パリを出なきゃ行けない「俺はパリを離れます」「解ったわ でも また戻って来てね」

「わかりました」店を出てシャンゼリゼを歩くと涙が止まらない。

「こんな形でパリを出るとは」なんて運命なんだ。

 

彼女が追いかけて来た「これからどうするの」「ロンドンに行くよ 仲間がいるから」

「私はどうしようかな」「君はちゃんとした契約があるから大丈夫だよ」彼女の目には涙が。

「貴方がいなくちゃ つまんないよ」「ロンドンに着いて落ちつたら電話するよ」

「絶対だからね 忘れたらロンドンに探しに行くぞ」「嘘はつかない」

 

パリがこんなに好きなっていた俺「行きたくない」「辛い」

 

シャンゼリゼ通りにはミモザが似合い、香りも街行く人達にも春が来た。

 

「別れのパリと彼女」俺にも春を感じられたのに。

 

「さよなら 大好きなパリ」