「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド -14ページ目

「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド

ブラジル移民から世界放浪 若い頃にフラッシュバック
消せないアルバムの話。

寒いパリの12月。

 

仕事が終わり、いつも様にいつものカフェでお疲れビール。

 

誰かが「今日、クリスマスじゃない!」「そうだよ」

「なんか寂しくない」「今日は忙し過ぎて、早く寝たい」

「明日も朝が早いしな」

 

皆んなパリに集まったバックパーカー族。

 

「色々な世界を見てきた連中だ」

でも、今は真面目にバイトしている。

 

プロスキヤーの人、絵描きの人、慶応ボーイ、コック、ウエター等々。

 

パリの裏通りのこの店に集まって来た。

 

俺もブラジルから来た移民くずれの人間だ。

 

ビールからワインにと量が進むと「やっぱり メリークリスマスだろ」

後はいつもの飲み会に変わった。

 

「俺たちはいつもクリスマス見たいだよ」

青春のど真ん中、パリで俺たちは跳ねていた。

 

「あの連中、今何してるのかな」「皆んなおっさんだ」

あの空気は今でも臭いを感じる。こんな青春は俺の宝。

今でも笑える、今でもあの時の続きを話せる。

「パリの青春 ブラボーだ」

数週間後に店のオープン。

 

今度は食材確保での準備の問題が起きた「店の女将も、それは調理責任者の問題と言う」

日本なら兎も角ここはアメリカだ、仕入れルートも決めていないなんて信じられない。

「特に寿司は魚が命それも鮪は必須の食材」開店までに、最低五十キロ位は必要と言う。

 

「開店の一週間前に、ニューヨークまで買い付け」「何てこった、この先どうなるのかな」

ニューヨークに向かうトラックは、夜のハイウェーを不安飛行「バカヤロー」が腹の中にこだました。

 

どうにか店はオープンをした。

 

開店からも何回かニューヨークへの買出し、これもいい経験と自分に言い聞かせた。

 

パリに居た時も週二回、夜中の二時に開く市場へ食材の買出しに行っていた。

「朝方のパリの街は、何とも言えずカッコいい」

「昨日の臭いを残し、新しいパリの朝が生まれてくる」

 

ニューヨークに行く時も、前夜の十時位に出て朝の市場を目指した。

市内に入る手前の橋を渡る時「その時の町もカッコいい これ位の役特は当然」

 

この風景は、俺の中の世界の景色の「ベストグループに入る」

日本戻って間も無く「ワシントンDCでお世話になった会社から、仕事の誘いが」

 

「サラリーマン職人」家族は生活の安定を考えて賛成。

 

俺のような風来坊生活に、不安を感じていたのだろう。

「迷った」「束縛と引換えの安定」「自分の今までに否定していないのか」

家族への安定は俺の我慢で相殺が出来る「自分を取り巻く人達への配慮」

当分の間は俺自身の心との葛藤となるが、家族を守る為「自分を殺してやってみよう」

但し「子供が社会に出た時に自分に戻る」そう自分に言い聞かせその会社に入る事にした。

 

全く人生間感の違う人達との仕事の関係は「我慢の連続」

「職人は口は悪いが腹はいい」この会社の人間達は口では上手い事を言うが、何を考えているのか解らない。

「怖い人間達だ」俺のような人間とは吸う空気が違う。

「信用出来ない」「我慢、我慢、早く子供が大きくならないかな、自分に戻りたい」

「あの世界を旅した事を無駄にしたくない」「俺はあきらめない」

「人生って、自分が楽しくなければ人生じゃない」そして俺はその日が来るまで自分を捨てた。

 

俺は元の姿に戻る時が来た。

 

「なんの未練もない」生活の為だけの時間潰しだった。

本当にろくでもない人間達がいた「人の足を引っ張る事が趣味みたいな奴ら」

少しでも仕事が上手く行きそうになると、便乗したふりをして潰しにかかる。

「つまらない顔をした人間達ども、さよならだ」

 

「自由な時間を取り戻す」何年かはサラリーマン時代の垢落としをする。

 

そして「自分がやりたかった事もう一度考える」「それが、海外なのか日本なのか」

 

「バカブンドな時間の始まりだ」チャオ 俺、アディオ 我慢した時間。