勝ちたいっす!
「監督・・・いいですよ、そんな無理して
ばあちゃんに付き合わなくても・・・」
もう早く練習始めようよ。
ツノやんとか他のみんなもグランドで
待ちぼうけしちゃってるし。
「小太郎、お前にはハルさんの気持ちが
分からんのか?」
分からんよ。
「監督、すいませんけど。分かんないッス」
そこで監督はいきなり怒りだしたんだ。
「バッカヤロウ!!」
バッチーーーン!!
ドカッ!
ゴロゴロゴロ!!!
いきなりビンタ!
オイラ平手打ちを喰らってそのまま
土手の方まで転がっていった。
「か、監督!?」
ツノやんもびっくりしてオイラの方に
むかってきた。
「な、何でいきなり小太郎を!? 」
ツノやんはそう言いながらオイラに肩を
貸してくれた。
「角田、お前も分からんか」
・・・・
ここでツノやんが分からないって
言ったらやっぱり殴るのかな。
「分かるような気も・・・するッス」
ズルッ!
ツノやん、オイラと同じになりたくないから
うまく濁しやがった!
「そうか・・・」
監督はいつの間にか涙をハラハラ流してる。
横で何故かばあちゃんも。
「お前ら!」
監督はバットを地面に叩きつけて
グランドにいるみんなに向かって叫んだ。
「勝ちたくないのか!」
・・・ん。
「勝ちたいっす!!」
何かどこかで見たことあるシーン・・。
オイラは結局何で殴られたんだろう。
ここで勝てずして、世界に行けるか!
結局ばあちゃんはツノやんのボールに
かすることすらできずに勝負に負けた。
「・・・」
ばあちゃんかなりショックを受けてる
みたいだな。
「ばあちゃん、しょうがないよ。
ツノやん毎日練習してるんだからさ」
ばあちゃんは下をむいたまま
フルフル震えてる。ホントに悔しいんだ。
「そもそもここでツノやんに勝って
どうなるっていうの?」
するとばあちゃんは突然顔を上げて
オイラに言ったんだ。
「ここで勝てずして、世界に行けるか!」
またその話かよ!
「だから無理だっての!ばあちゃんが
世界に行けたら、みんな行けちゃうよ!」
ばあちゃんはオイラの話をスルーして
監督の方にむかっていった。
「隊長!」
監督だっての!
「な、何でしょう?」
監督が引いてる様子にも構わず
ばあちゃんは熱く語り出す。
「野球で世界に行きたいのです!」
あ~あ・・・もう知らない・・・。
「どこに行けばいいのですか!」
そこからかよ!
監督も困ってる・・・ようでもないぞ?
「ハルさん」
名前で呼ぶの!?
「野球で世界を目指すならやはり
大リーグです」
無理だっつの!
「ダイリーグ・・ですか」
ほんとに分かってるのかな?
「そこは私でも行ける場所ですか?」
・・・
「行きたいのですか?」
な、何だこの展開?
「行きたいんです!」
ばあちゃんは涙を流しながら監督に
抱きついた。なんじゃこりゃ!?
「分かりました!」
は!?
オイラもう訳が分からなくなってきたぞ。
ハルの奇妙な冒険
おお、ツノやんかなり頭にきてる感じだ。
これから一緒に練習するのに気まずいなぁ。
「角田!お前もうちょっと手加減してやれ!」
監督がツノやんにむかって叫ぶ。
「手加減いらないって言うから・・・」
まあ手加減されても打てないけどね。
「ン、ガッ、グッグ」
ばあちゃんは薬を飲み終わると再び
ボックスに立った。
「手加減はしないでいただきたい・・が!」
・・・が?
「あと10球投げていただきたい!」
何でそんな上から目線なの!?
ばあちゃんの方から条件を出せるような
空気じゃ全然ないのに。
「・・・」
ツノやん呆れてるわ。
「角田!いいから投げてやれ」
監督はやけにばあちゃんに協力的だなぁ。
「分かりました」
ツノやんは渋々ばあちゃんが出した
条件を受け入れた。
「いきますよ」
ツノやんが一球目を投げる。
スパン!
ボールがミットに収まる音が練習場に響く。
ブン!!
「遅っ!ばあちゃん完全に振り遅れだよ!」
ばあちゃんはブツブツ言いながら
メットを深くかぶり直して再び構えた。
「来い!」
ツノやんはため息をついてる。
ゴメンよ、こんなことに付きあわせちゃって。
「いきますよ」
再びツノやんは大きく振りかぶった。
ブン!
「早っ!ばあちゃん今度は早過ぎだよ!」
スパン!
もうお話にならないんじゃないかな・・・
オイラはこの勝負を早く終わりにしたかった。
だけど・・・
「よし、操作は大体覚えたぞえ」
ジョジョかよ!
ばあちゃんはどうやら勝つ気満々だ。
