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国産チーズ生産拡大セミナーが、農水省の関東農政局(さいたま新都心)でありました!
乳製品やチーズの国内消費は増えていますが、酪農家の減少に歯止めがかからず(生乳生産量は減少)、
さらに、日欧EPA(経済連携協定)などの関税引き下げで、EUはじめ海外から何万トンものチーズが安く入ってきて、
輸入量は増え続け、事態はなかなか深刻なのです。
とにかく、農水省でも国産ナチュラルチーズの生産を増やしていこうと(令和7年度までに3万トン目標)いうセミナーが開かれたのでした。
農水省畜産部・牛乳乳製品課の相田課長のお話はHPでみていただくとして~
 
関東で活躍する3人のチーズ工房のチーズ職人のお話がすばらしかったー。

 
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まずは、栃木県那須塩原市にある「チーズ工房 那須の森」
落合一彦さんの「チーズ作りで大切にしていきたいこと」
 
農研機構という農業の研究機関で放牧や酪農を研究し、当時から北海道など酪農関係者と、
実験的にやっていたチーズ作りを、定年退職後に本格的にはじめたそうです。
開業したのが2008年、それから11年後に~~~
 
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なんと昨年、2019年10月にイタリアで開かれた世界チーズアワード(WCA)で、
「チーズ工房 那須の森」の森のチーズ(5ヶ月長熟セミハードタイプ)が、
世界42カ国のチーズ3800品目の中から、最高位のスーパーゴールドに入賞し、
さらにその中から世界で10位という賞をとったのです。
すごーーい!おめでとうございます。
 

 

 

那須という、北海道に続いて本州での生乳生産1位の酪農地帯で恵まれていること、

近くの前田牧場さんに、ブラウンスイスを飼育してもらい、良質な生乳(体細胞10万以下というすごい数値なのだそう)でチーズが作れる、かつ消費地も近い、

那須にはチーズ工房が複数あり、仲間とチーズ研究会をつくって勉強していることなど、

おだやかでやさしい語り口でお話されました。

ワールドチーズアワード(WCA)の前に、ジャパンチーズアワード(JCA)でも受賞していたなど、知る人ぞ知るチーズの先生ですが、

なにしろ60歳から始めたそうで、中高年の人も自信を持ってチャレンジしてくださいというメッセージもありました。

あと、工房に6人スタッフがいるうち5人が女性だそうです。

 

 

 
続いて「秩父やまなみチーズ工房」の高澤徹さんのお話~
「人生は一度きり!新たな挑戦、秩父にこだわったチーズ作り~
 
なんと那須の落合さんに続いて高澤さんも、53歳から早期退職してチーズ人生をはじめたそうです。
前職は、アパレル・流通の日刊紙の会社だったそう。
ただ、以前からチーズ好きで、趣味として市民講座でチーズづくりを習い、自宅でも作っていたそうです。
その後、十勝の共働学舎新得農場(日本全国に何百人のチーズ職人を排出する有名な工房)などで修行し、
2018年に妻の実家である秩父に開業!
まだわずか1年半ですが、テレビでそのライフスタイルが紹介され、行列ができる人気店に。
工房は、週末の金土日、3日間だけオープン。
 

 

 
お話の中で印象的だったのは、「秩父の地域の食の循環の一端をになう存在になりたい」ということ、

 

 

 
地域の食の循環のまず最初は、チーズの源!生乳です。
わずか8kmの距離にあるお隣、小鹿野町の酪農家・吉田牧場さんとの連携です。
吉田牧場さんもエコフィードや酪農教育ファームなど、酪農で地域社会貢献に取り組んでいますが、
秩父やまなみチーズ工房さんは🧀さらに、吉田牧場の『牛乳』の価値を見える化しているんだなと感じました。

 

 
じつは吉田牧場さんの紹介で、秩父やまなみチーズ工房には行ったことがあり、
その地域内連携の話は、こちらの記事で~
 ↓↓↓読んでね
チーズをつくるとホエーという高タンパクな液体(使いみちがないと産業廃棄物になる)が出るのですが、
これを有効活用して、ホエーうどん(酸味があっておいしかったー!)や、ホエー豚をつくる取り組みもはじまっています。

 

 

 

 
それとわたしが、じぃぃ~~んと来たのは、秩父でチーズ工房をはじめてわずか1年半、
地元を歩いていると、「チーズ屋さん、チーズ屋さん」と、町の人に呼ばれるという話です。
呼ばれるたびに、「悪いことできないなぁ〜」と思うそうで~(笑)
それだけ地域になじんでいること、みんなに知ってもらって、親しんでもらえる喜びがあるのでしょうね~。
東京育ちだった高澤さんが、秩父をふるさととして、その一部になりつつあるような気がしました。

 

 

 

 

そして若者代表~30代の長野、小布施牧場の木下荒野さんのお話

 
 
『楽農経営による美しい里山をふやします』
すばらしいテーマですね~。
そのテーマは、会社のキャッチコピーになっているようで、こんなミッションを掲げる放牧酪農家が出てくるとは、
これからの時代を表しているように感じました。
那須町の 森林ノ牧場(山川さん)にいろいろ指導してもらっているほか、
また神津牧場、滋賀の山田牧場からジャージーを導入したそうです。
 
いや~国産チーズ生産拡大セミナー、チーズの作り手の皆さんのお話、
感動と発見があり、勉強になりました。
 
ワインのテイスティングでは「テロワール」についてよく表現されますが、まさにチーズも同様です。
土壌や気候、環境や様々な条件を含んだ土地の個性、土地の力、風土ですが、
那須には那須の、
秩父には秩父の、
小布施には小布施の、土地の力があります。
酪農から生まれる生乳は、牛の飼われ方、健康状態、牛のエサも含みます。
真っ白な牛乳は、あちこちの牧場のものを一緒に混ぜるので個性は表れにくいわけですが、
(求められているのは、均質性、成分の点数評価だろう)
一方、チーズは個性をわかるやすく見せて伝える表現ツールでもあります。
国産チーズが、日本の酪農をもっと豊かに、楽しいものに、人々に伝わるものになったらすてきだな~。
 
酪農家はなぜ減り続けるのか。
もしかしたら、国産チーズの拡大が、いまの酪農乳業という世界に足りないものを補えるのかもしれないな~と思いました。
 
そして、人の生き方としても考えるところがありました。
那須の森@落合さんは60歳から、
秩父やまなみ@高澤さんは53歳から、
それから、わたしの知っている宮崎県小林市のダイワファーム(大窪和利)さんも50歳からでした。
 
人生100年時代。
若い時はしゃにむに働いてきたけれど、ふと振り返ったときこれからは、自分らしく地域に根ざして生きたい。
(逆に今の若い人は最初からそう思っているのかもしれません)
チーズ人生とは、「発酵」であり、「熟成」です。
なにかこれからの人生観や、時代のヒントがある気がしました。
 
 
チーズといえば
 
2/27(木)国産ナチュラルチーズシンポジウムが日本獣医生命科学大学であります。
 
あそびに来てね。
 
ベジアナ  発酵熟成アナ@あゆみ