婚約後揺れる心
私は、その相手と結婚を前提としたおつきあいを
はじめた。何回か会ってデートを重ねたが
すぐにとそんな関係には ならなかった。
時々、恥ずかしげに手をつないだだけだった。
誠実な人なんだ・・・。
その人は言った。
「結婚しよう」と・・・
公園のベンチでそっとつぶやいた。
私は遠くを見つめていた。
私の頭の中には、彼のことが脳裏をよぎった。
叶わない想いを抱いているくらいなら
もう忘れた方が良い・・・・
彼を忘れるために私は結婚するのだ。
そう思い
「はい」
と返事をした。
少し冷たい秋風を頬に感じながら、公園の
茶色く枯れかかった芝生や、舞っている枯葉を
見つめながら、私の心はそこには無かった。
まもなく私は婚約した。
婚約をしてからの日々も、彼のことを思い出していた。
結婚する前に会いたい。会って気持ちを確かめたかった。
そんなつもりが無いのなら、あっさりと諦められる
そう思った。
私は彼に電話をした。久しぶりだったので
彼は会ってくれると言う。
私は2時間かけて、彼に会いに言った。
「今日は帰らない・・。」そう彼に伝えた。
会って、ごはんを一緒に食べた。私は胸が詰まって
あまり食べられなかった。
夕食後、彼とホテルへ泊まった。これが最後だと決めて・・・。
でも、彼はひどく疲れていたのか、体を重ねても何も出来なかった。
最後なのに愛し合うことすら出来なかった。
「もう私じゃダメなんだ・・・」悲しかった。
伝えたいことも言えなかった。
本当の「さよなら」なんだと確信した瞬間だった。
それからしばらくして、彼から1通の手紙が来た。
初めて見た彼の字、彼の言葉。
手紙に書いてあったことは、彼の祖母が亡くなったことだった。
両親がいなくて祖母と暮らしていた彼にとって
相当、ショックだったのに違いない。
それなのに私は、慰める言葉は書けなかった。
彼とのことはもう終わったのだ。
もう忘れなきゃいけない人なのだ。
私は手紙に「私はもうすぐ結婚します」と書いた。
それははっきりとした別れの言葉だった。
辛い思いをしている彼に私はきっとひどい事を
したのかもしれない。今はそう思える。
でもその頃は、そんな自分しかいなかった。
夫との出会い
実家に戻った私は、まじめに働いた。
家と会社の往復だけの生活。それでも私はそんな
生活に満足していた。
私は、これで元の自分に戻れたのだと安堵感があった。
新しい仕事場は、すぐ馴染み、どこの職場でも同様
中年男性に人気があった。しかし私はそんな男性と
どうこうするつもりは全く無かった。
男っ気のない生活は、結構気持ちのいいもので
女の子と一緒においしいケーキを食べに言ったり
買い物をしたりと楽しかった。
そんな時、親戚からお見合い話が持ち上がった。
私は親戚の勧めもあり、お見合いする事になった。
場所は、某観光ホテルだった。私は母とその紹介者の人
相手は、相手の母と2人だった。
最初自己紹介から始まり、紹介者はお互いの良い所を
褒めあったりして、それはなごやかに進んでいった。
相手は始終汗をふきながら照れていた。
純粋な人なんだとその時は思った。
食事の席が終わり、2人はホテルの庭園で
話をすることになり、相手は早速次のデートの約束をしてきた。
気に入られたらしい。
そしてて、私は結婚を前提とした付き合いを始めた。
その相手は私の今の夫である。
純粋で誠実な印象のその人が、実際はまったく違うことを
その時の私は気づいてなかった。
それは、これから始まる結婚生活で明らかになる。
忍耐と葛藤の結婚生活は、こうして始まった・・・・。
22歳の別れ
元彼と出会ってから4年の年月が流れ、私は22歳になっていた。
彼の心がわからないまま、それでも私は彼を愛してした。
そんな自己中心的な恋は、私にとってはとても辛いものだった。
他の男たちに身を委ねながらも、私は時々彼に会った。
彼の気持ちがわからない私は、幾度か、その男たちの話をした。
会えば傷つけあうばかりの、そんな破滅的な関係になっていく。
そんな彼だったが、学校を卒業し社会人になったのを機に
ほとんど連絡が取れなくなった。
慣れない環境で、忙しく疲労困憊なのは分っていたが
私の中では、もうこれが潮時なのかなと思った。
そして私は会社に転勤の要望を出した。
これ以上ここで働くことは嫌だったし、実家から
通える店で働きたかった。そしてその願いは叶い、
私はこの街からようやく姿を消すことが出来る。
実家に帰る前に、彼に会うことにした。
私の中ではこれが最後だと心に決めて・・・・。
そして、抱かれたのを覚えている。
ただ、私の中でまだ未練があったのか連絡先を彼に渡し
その場を去った。さよならは言わなかった。
言えなかった。
4年間でのこの街での暮らしが終わった。
都会が教えてくれたものは、私を悪女に変える術・・・。
もう4年前の自分には戻れない、私は変わってしまった。
そして、そんな自分を変えるため、私はここを去るのだ。
荷物を整理した。
私は4年間、彼の思いを綴った詩のノートがある。
でもそれは捨てなかった。
「もし私の心の悲しみが
ずべて消し去れるものなら
あなたへの想いのすべてを切り取りたい。
そうすれば、私だけの私になれるのに。」
人は一生のうち、こころの底から愛せる人はただ一人だと言う。
私はつい最近まで、彼を一生にただ一人の人だと思っていた。
それは昔読んだ恋物語のように一途に、一生涯愛したかった。
そしてそのロマンスは、「EndlessLove」と名づけた私の恋物語
だった。けれどそれは何十年と言う長い年月をへて
最悪の結末を書くことになっていく。
今、私は愛は決して永遠ではないことを知り、それを書き残すことで、
自分へのカタルシスを求めているのかもしれない。
(カタルシスとは、自分の心の浄化作用)