コホート研究とは?…これからの健康管理の常識を作っていくもの | 子肌育Blog アトピーに負けない生活。

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コホート研究とは?


こんにちは。橋本です。


健康に関するニュースでは、コホート研究といわれる種類の研究、その結果を伝えるニュースが、たびたび伝えられることがあります。


たとえば、


野菜や果物を多く食べても、糖尿病になるリスクは変わらない 1)


2012年5月9日、日本の研究班が発表した報告より


先日のこんなニュースも、コホート研究でわかったことなんですね。


このニュースの内容。常識的な感覚からすると、「えっ、そうなの?」と感じるニュースかもしれません。


(注:ただし、この結論と反対の結果がみられる論文も、ほかに多くあります 2)


健康に役立つ世の中の情報には、じつはコホート研究による情報が多く含まれています。


にもかかわらず、コホート研究というのは、少し聞き慣れない言葉ですよね。


では、そもそもコホート研究というのは、どういうものなんでしょうか?


コホート研究


 


コホートとは?


まず、聞き慣れないのは、「コホート」という単語。


コホート(cohort)というのは、もともとは古代ローマ軍のひとまとめの歩兵隊をさす言葉で、「特定の集団」のことを意味します。


コホート研究では、特定の地域や条件で選ばれた集団のことをコホートとよんでいます。


 


コホート研究は、大きな集団に関するストーリー


そのコホート(集団)を、長期間をかけて追跡調査することで、生活習慣と病気の関連を解明していくのが、コホート研究です。


コホート研究とは

大規模な特定の集団を長期間追跡する研究。


特定の地域や集団に属する人々を対象に、長期間にわたって健康を調査する。


健康状態の変化から、生活習慣や環境など、様々な要因と病気の関連性を解明するのが目的。


コホート研究は、集団を調査することで、病気の原因、特徴を解明していく疫学の研究方法のひとつでもあります。


数ある疫学の手法の中でも、


現在から未来へ時間の流れ通りにデータを取っていくこと

・ 数万人規模の大規模な集団からデータを取ること

・ 何十年と長期間をかけて集団の変化を測定すること


この3つが、コホート研究ならではの大きな特徴です。


コホート研究:方法


実際に生活する人たちを、長い時間をかけて、ていねいに追い続けていく。


そうすることで、やがて病気の原因、予防法がわかってくる。


社会にとって、多くの人の健康にとって、本当に役立つ情報がわかってくるのが、コホート研究なんですね。


 


コホート研究をやってはじめてわかることが多い


今では当たり前となっている健康の常識。たとえば、


・ 高血圧が心臓の病気や、脳卒中の原因になること

・ 喫煙が肺がんのリスクを上げること

・ 血清コレステロール値と心筋梗塞との関連

・ 大腸がんと飲酒の関連


これらの常識も、じつはコホート研究をおこなうことで、はじめてあきらかにされたことです。


自動車の排気ガスよりも、喫煙の与える影響のほうが、あきらかに肺がんのリスクを上げる。


こんな当たり前なことがわかったのも、コホート研究の積み重ねがあったからこそ。


もともと、あてずっぽうでおこなわれていた健康法も、コホート研究によって正しいことがわかったり。


逆に間違いであることがわかってきたりするんですね。


 


膨大な手間、時間、費用がかかる


病気の原因、予防法を知ることができるようになるコホート研究ですが、そうカンタンに、気軽におこなえるものではありません。


多人数(数万~数十万人)を長期間(5~20年)にわたって追跡調査をしなければならないので、膨大な手間と費用がかかります。


数万~数十万人という膨大な人数が必要なのは、少人数からデータを取ってしまうと、個人差が大きく反映されて、結論が事実と異なってしまう。


いわゆる、バイアスがかかってしまうから。


調査に何十年という期間がかかってしまうのは、病気や健康状態に変化があらわれるのには、やはりそれだけの期間がかかってしまうからです。


定期的にデータをきちんと取り続けなければならないので、大勢の協力も必要です。


途中で多数の脱落者が出ないように、工夫したり努力したりもしなければいけないですし。


調査スタートから、同じ集団を30年、40年。


長いものでは50年以上、何世代にも渡って追跡調査ができているコホート研究もあります。


いかに長く計画されているか、いかに膨大な予算をつぎ込んでいるか。


そのことでも、コホート研究に託された期待の大きさは、わかるかと思います。


 


代表的なコホート研究の例


しかしそのかかる手間、時間、費用を考えても、コホート研究から得られる成果、多くの人の健康に対する貢献は、大きいものがあります。


そのため最近では、世界中で次々と大規模なコホート研究が行われるようになってきています。


実際におこなわれている代表的なコホート研究には、次のような例があります。


フラミンガム研究Framingham Heart Study):

1948年から50年以上、3世代に渡って続く、人口3万人のアメリカの小さな町、フラミンガム市ではじまったコホート研究


ハーバード大学 看護師健康調査Nurses' Health Studyとは):

1976年開始、12万人の女性看護師を対象にしたコホート研究


男性医療従事者 健康調査Health Professional Follow-up Study):

1986年開始、5万人の男性保健専門職を対象にしたコホート研究


EPICEuropean Prospective Investigation into Cancer and Nutrition):

ヨーロッパ8カ国40万人を対象にした栄養とがんに関するコホート研究


日本では、小規模ですが、


久山町研究(ひさやままち)久山町研究とは):

1961年から40年以上続けられている福岡県久山町(ひさやままち)のコホート研究


舟形スタディ(ふながた)

山形県舟形町(ふながたまち)の住民を対象にした糖尿病に関するコホート研究


などが、有名なコホート研究です。


このようなコホート研究で得られた成果、データは、すべて無償で世界に向けて公開されます。


 


コホート研究の成果を、どう取り入れるか?


生活習慣の影響を考えるときは、1つの病気ではなく、ほかの病気への影響も考えなければいけません。


たとえば、「乳製品が前立腺がんのリスクを上げる」というコホート研究が複数出ています。


ですがその一方で、乳製品が骨粗しょう症や大腸がんの予防に働くというコホート研究もあるんですね。


つまり、ひとつの病気のことだけを考えて、極端に食べたり、制限したりということをすると、ほかの身近におこりうる病気のリスクを上げてしまうことにもなりかねないわけです。


そのため、健康ならば、複数のコホート研究によって、「効果がほぼ確実」とされることだけを取り入れるのにとどめる。


たとえば、喫煙を止めたり、飲酒をほどほどに控える、とかですね。


食事についても、バランスが取れていれば、自分や家族の好みを優先してもいいんじゃないのかなあ、と思います。


驚くようなコホート研究の結果がニュースになったとしても、たったひとつのコホート研究の結論を理由に、生活習慣を変えてしまうのは、あまりオススメできません。


 


子どもの健康を守るためにも


とはいっても、これからも続くコホート研究の積み重ねが、数多くの人の健康、命を救うことには間違いなさそうです。


そういう意味でも、大規模な集団をていねいに追跡調査していくことで病気の原因、予防法がわかってくるコホート研究。


その成果が、今後ますます重要になってくると思われます。


だからこそ、どんどんと増えてくる健康に関する情報、ニュース。


たとえば、それらの情報元が、学会発表なのか、コホート研究による論文なのか?


そういうことをきちんと見抜く、確認するのも、大切な子どもの健康を守ることにつながるわけですね。


 


 


 


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参考文献:

1) Kurotani K, et al; the Japan Public Health Center-based Prospective Study GroupVegetable and fruit intake and risk of type 2 diabetes: Japan Public Health Center-based Prospective Study. British Journal of Nutrition: 1-9, 2012.


2) Cooper AJ, et al: A prospective study of the association between quantity and variety of fruit and vegetable intake and incident type 2 diabetes. Diabetes Care 35(6):1293-1300, 2012.