観た、『仁義なき戦い』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『仁義なき戦い』を観ました。

 

昭和21年、原爆により廃墟となった広島。

山守組が起こした喧嘩に加わり、相手を殺してしまった復員兵の広能昌三[ヒロノ・ショウゾウ]は刑務所に送られる。刑務所内で義兄弟となった若杉の根回しにより広能は出所、保釈に協力してくれた山守組に身を寄せるようになる。

広能の働きもあり、徐々に勢力を拡大させる山守組。敵対する土居組の組長を殺すよう山守に哀願された広能はこれを決行し、再び刑務所に。

恩赦により出所が早まったものの、自分が不在だった間に変わり果てた山守組に広能は困惑する。金儲けのためには手段を選ばず、自分に盾突く者は身内であっても容赦なく殺す山守のやり方に不信を抱きながらも、仁義を通そうと悩む広能は……といったお話。

 

誰もがタイトルくらいは知っているであろう、ヤクザ映画の金字塔たる作品です。

現代でも語り継がれるくらいにヒットした作品だし、これに感化されてかヤクザ映画は多々作られてきましたが(特にVシネマ)、みんなそんなにヤクザの世界が好きなの?と。

男の多くはツッパリ中高生のような感覚を、少なからずも永遠に持ち続けているからなのかな?

現実では大嫌いだし関わりたくもないけど、自分には体感し得ない世界の話であれば興味が湧く……まぁ戦争映画と似たようなものなんでしょう。

個人的にヤクザ映画に魅力は1ミリも感じませんでしたが、本作を観て、僅かながらにその良さがうっすら理解できるようになった気がします。積極的に見ようとまでは思わないけど、『仁義なき戦い』シリーズは5作目まで観てもいい気になれますね。

 

ヤクザというモチーフはさておいて、荒々しい画やストーリーの展開には片時も目が離せません。もちろんビジュアルとしては古いんだけど、映像としてのダイナミズムに富んでいるおかげなんでしょう、眠くなる瞬間はありませんでした。

甘ったるかったり笑えるシーンなんか皆無で、媚びた感がないのがいい。

青大将として有名だったであろう当時の田中邦衛さんにすら冗談の一つも言わせないもんね(笑)。

屁理屈やメッセージなんか何もない、実録モノっぽい雰囲気が緊張感を生んでいます。

 

ついでに言うと、ヤクザ映画って方言が多くないですか?

本作では広島弁が使われていますが、これは時代劇にも共通する点として、言葉が聞き取れなかったり意味が分からなかったりすると置いてけぼり感を抱くんですよ。リアルを追求する弊害ですね。

個人的にヤクザ映画を敬遠しているのは、この要素もなきにしもあらず。

ところで、サシでの会話でよく出る“こんな”とは、“お前”みたいな意味で捉えていいのかな?

 

登場キャラが多めなのは仕方ないにして、この人はどっちの組の人なの?といった、敵or味方が明確でない点に戸惑いました。

まぁ、話を追っているうちに分かるようになりますが、間を開けずに再見すれば熟知できる程度のものなので、また見直してみようかな。

 

監督は深作欣二さん。

なるほど、日本映画史におけるバイオレンスの巨匠と呼ばれるのも納得できるほどに、かなりハードな描写が多いです。1973年という時代にはチト早いくらい。

得てして、映画の中で銃口を向けるのは脅しの手段ですが、本作の場合は銃を向けたら必ず&早めに撃つんですよね。よくあるじゃないですか、銃口を向けたままタラタラと御託を並べるようなじれったいシーン(笑)。ああいうやつが一切ないのがスピーディーで良いんですよ。

ただ、描写としてはいいんですが、この時代の特徴としてペンキ感丸出しの血糊にはやっぱり興醒めしてしまいます(笑)。

とは言え、あまりやりすぎれば国会での議題になり得ていたかもしれませんしね、後年の『バトルロワイヤル』のように。

 

いつ誰が誰に殺されてもおかしくないヒリヒリした空気の中に身を置いている役柄のせいか、登場キャラは常にシリアスムードで、出演者も自然とピリッとしてカッコ良く見えるのは当然の事。

主役を演じる菅原文太さんのみならず、松方弘樹さん、梅宮辰夫さん、金子信雄さん、田中邦衛さんといった面々が今でこそ超豪華に見えつつ、いかにも60~70年代の東映作品の常連キャストだなと(笑)。

晩年には人の好いジイちゃんのイメージを抱かせた方々の、シャープでキレのある若かりし頃の姿は驚きすら感じますね。特に松方さんはバラエティ番組で名前を知った方なので、そのギャップは衝撃的。

そんな、既にネームバリューもある方々が演じるキャラが次々に殺されますが、ご存知の通り、仁義なき戦いシリーズは全5作まで存在します。つまり、後に別の役でシレッと出演するんだろうなぁと思いきや、まぁ大正解のようです(笑)。

 

そういえば、以前『ウルヴァリン:SAMURAI』を観た際、たとえ映画の中であっても葬儀の最中に大暴れするするというタブーを破ったのが新鮮だという旨を綴りましたが、これは不勉強でしたね。

40年前の作品である本作ではとっくに、しかも、もっと派手にやっちゃってるじゃん(『極道の妻たち』でもこれに近しいシーンがあったみたい)!

不謹慎を通り越して、ある意味、人を殺す以上にゾッとするシーンに思えました。カタルシス全開すぎる…!

 

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スーパー余談ながら……本作を観るより先に、

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こっちのシナリオを読んだのが、俺ッチの初めての『仁義なき~』体験。

今に思えば、何だったんでしょコレ? 少なくとも同じ原作とは思えない…。