観た、『ウルヴァリン:SAMURAI』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『ウルヴァリン:SAMURAI』を観ました。

 

人目を忍びながら暮らしていたローガンの前に現れた女性ユキオ。

かつて戦時下の日本軍に捕らわれていたローガンは、命を救った矢志田が余命いくばくもない事を知り、ユキオと共に日本へ向かう。

ローガンは病床にある矢志田と再会するも、自分の治癒能力を取り去ってやると言われ困惑する。その際、矢志田の息子シンゲンとその娘マリコの口論を目撃する。間もなくして矢志田は息を引き取った。

大々的に執り行われる矢志田の葬儀に参列したローガンは、何者かに狙われるマリコを救い出そうと一戦を交えるが、それまでの治癒能力を失っている事に気付く。

その後、逃げた先の長崎で過ごす2人は、徐々に心が通い合うようになる。しかし、逃げた先にも敵の手は回り、マリコがさらわれてしまう。

黒幕がシンゲンだとにらんだローガンは、満身創痍の身体を引きずりつつ東京に向かい……といったお話。

 

ウルヴァリンが日本に行くと聞いた時点で、今作は怪作になると思い込んでしまうのは、我々日本人の良くない癖です(笑)。タイトルからしてヤベー先入観しかないし。

舞台を日本に移したところで、あれが違うこれが違うとグシャグシャ言う日本人の浅いツッコミなんか無視するにしても、明らかに日本に見えない部分が多々ありますね、残念ながら(笑)。

ロケとセットの明らかな差は、まるで『ブラック・レイン』のようで、本来は30年前の作品と比較するのも無粋な話なんですが、あの頃と何ら変わっていないんだから仕方ない。アートディレクターだかプロダクションデザイナーだかは、もちっと勉強しなよと。今時の日本で、ゴシック体フォントを社名ロゴにする看板なんてねぇんだよ(笑)。

これと逆に、矢志田邸や長崎でローガンとマリコが隠れていた家とか、現代ではなくなりつつある古風な日本家屋は、日本人ですら忘れている(もしくは知らない)風情を感じさせてくれるのがいいですね。

あとは、日本人同士でわざわざ英語を喋るのがチト不自然に思えたくらいかな?

 

超硬物質アダマンチウムの鋭い爪と素早い治癒能力を兼ね持つウルヴァリン=ローガンは、攻守ともに優れた能力を持つミュータント。

どーせ死なないじゃん?という安心感のせいで、どんだけやられたところで緊張感が薄いんですよね。ハラハラはするけど、ヒヤヒヤはしないというか。

けど今作においては、治癒能力が失われた(弱まった?)せいで傷の治りが遅い、つまり無茶をしすぎれば死んでしまうというピンチに陥ります。

それでもマリコを救うために、傷だらけでボロボロになってもなお戦いに挑む姿は、まさにヒーローとしてあるべき姿でカッコ良いんですよ。

無敵ミュータントではない、普通の人間に戻った(ような)ローガンが新鮮な作品です。

 

ちなみに、原題&邦題ともに“ウルヴァリン”の名を冠してはいるものの、“ウルヴァリン”の名はほとんど出てきません(“ローガン”と呼ばれる事の方が圧倒的に多い)。ちょっと矛盾。

 

走行中の電車の屋根でのバトルは、今では特に珍しくもないシチュエーションとなるまでにありふれていますが、本作のそれに関しては特筆モノです。

何しろ、乗っているのが新幹線だけあってスピード感が異常! 障害物をかわすのに必死で、敵をどうこうするなんて後回しにしたいくらい(笑)。

それまでにあった電車の屋根バトル史上(?)最速のシーンだと思うので、これは必見です。

 

もう一つの見どころとして、矢志田の葬儀の中で始まるバトルを挙げます。

おそらく、これまでの映画史上において葬儀のシーンはあっても、その真っ最中&その場でアクション=バトルを繰り広げる作品は非常に少ないと思われます。その場でケンカはしたいけど、その後に引っ張るような一触即発のシーンは多々ありますがね。

死んだ人間を弔うため厳かに執り行われている儀式をブチ壊すのは、いくら映画という絵空事の中でも不謹慎だろうという空気もあるのかもしれません。日本なら特にね。

そんな先入観があるものだから、このシーンでは派手な真似はしないだろうと思いきや、暗黙のタブーを破るかのようにバトルが始まるのには面食らいました。

 

それにしても、冒頭からウルヴァリンの治癒能力に唖然とさせられます。

戦時下の長崎にアメリカ軍の爆撃機が飛来し、兵士たちが「広島の時と同じだー!」と口々にするあたり、原爆だったのでしょう。

その破壊力、特に放射能を浴びているであろうに、それでも完全治癒してしまうんだから、最強の部類に入るミュータント確定やん…。


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映像特典によくある、“もう一つのエンディング”というのは蛇足でしかないと常々思っているんですが、本作のそれはやや混乱を招きます(笑)。

こっちを劇場公開版のエンディングにしていたら、どうなっていた事やら…。